文武訓 / 文訓下之末
一學問などの道理を人に說くに、其人の識見いまだ至らず、或は、學力よわき人に對して、高く深きこと說くべからず。博學なる人も或は聰明ならず。其學術惡しく、又蔽固にして、敎にかゝはれる人に、高深なることを說けば、わが說を心得ず信ぜずしてそしりあざける。凡かやうのこと其事を歴ざれば、其禍ある事を知らず。
新字:一学問などの道理を人に説くに、其人の識見いまだ至らず、或は、学力よわき人に対して、高く深きこと説くべからず。博学なる人も或は聰明ならず。其学術悪しく、又蔽固にして、教にかゝはれる人に、高深なることを説けば、わが説を心得ず信ぜずしてそしりあざける。凡かやうのこと其事を歴ざれば、其禍ある事を知らず。
書き下し
一学問などの道理を人に説くに、其人の識見いまだ至らず、或は、学力よわき人に対して、高く深きこと説くべからず。博学なる人も或は聰明ならず。其学術悪しく、又蔽固にして、教にかかはれる人に、高深なることを説けば、わが説を心得ず信ぜずしてそしりあざける。凡かやうのこと其事を歴ざれば、其禍ある事を知らず。
現代語訳
学問などの道理を人に説くとき、その人の見識がまだ至らなかったり、学力の弱い人に対しては、高く深いことを説いてはいけません。博学な人でも聡明でない場合があります。その学問の筋が悪く、また頑固で、ある教えにとらわれている人に高く深いことを説けば、こちらの説を理解も信用もせず、そしりあざけります。およそこうしたことは、実際に経験してみないと、その災いがあることを知りません。
解説
相手の理解の段階を見ずに深い話をすると、分かってもらえないばかりか反発やあざけりを招くと益軒は注意します。論語にも、中程度以下の人には高いことを語れないという趣旨の言葉があり、それを自分の経験で裏づけた一節です。博学でも頑固な人には通じないという観察も鋭いものです。職場で新人に説明するときや、考えの違う人と話すとき、相手に合わせて話の深さを選ぶことは、遠回りに見えていちばん確実な伝え方だといえます。
この章句が説くこと
教え方学問見識相手伝え方
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