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文武訓 / 文訓下之末

されど今、いにしへの和歌を見ん人、此理をもてえらばば敎となるべし。和歌をよくえらび用ひば、其益などかなかるべき。近き世の和歌は、只言葉をたくみにしてかざれるをこのみて、其志をいふことはすくなし。詩も和歌も、志をいふをむねとすべし。言葉は只ふるきを用ひ、いやしからざるを以てよしとすべし。言葉をたくみにせんとすれば、和歌の本意をうしなふ。わが身、和歌をつくることかなはずとも、古人の歌をえらび用ひば、かへつて我がよむにはまさりなん。

新字:されど今、いにしへの和歌を見ん人、此理をもてえらばば教となるべし。和歌をよくえらび用ひば、其益などかなかるべき。近き世の和歌は、只言葉をたくみにしてかざれるをこのみて、其志をいふことはすくなし。詩も和歌も、志をいふをむねとすべし。言葉は只ふるきを用ひ、いやしからざるを以てよしとすべし。言葉をたくみにせんとすれば、和歌の本意をうしなふ。わが身、和歌をつくることかなはずとも、古人の歌をえらび用ひば、かへつて我がよむにはまさりなん。

書き下し

されど今、いにしへの和歌を見ん人、此理をもてえらばば教となるべし。和歌をよくえらび用ひば、其益などかなかるべき。近き世の和歌は、只言葉をたくみにしてかざれるをこのみて、其志をいふことはすくなし。詩も和歌も、志をいふをむねとすべし。言葉は只ふるきを用ひ、いやしからざるを以てよしとすべし。言葉をたくみにせんとすれば、和歌の本意をうしなふ。わが身、和歌をつくることかなはずとも、古人の歌をえらび用ひば、かへつて我がよむにはまさりなん。

現代語訳

しかし今、昔の和歌を見ようとする人が、この道理で選ぶなら教えとなるでしょう。和歌をよく選んで用いれば、その益がないはずがありません。近ごろの和歌は、ただ言葉を巧みにして飾ったものを好み、その志を言うことは少ないのです。詩も和歌も、志を言うことを第一にすべきです。言葉はただ古いものを用い、下品でないことをよしとすべきです。言葉を巧みにしようとすると、和歌の本来の意味を失います。自分で和歌を作ることができなくても、古人の歌を選んで用いれば、かえって自分で詠むよりまさるでしょう。

解説

「詩は志を言う」は『書経』以来の古い考えで、益軒はこれを和歌にもあてはめます。言葉の技巧ばかり競う当時の歌の風を批判し、飾らずに自分の思いを述べることこそ歌の本意だと言います。そして自分で上手に詠めないなら、古人の名歌を選んで口ずさむほうがよいと勧めます。今の文章やプレゼンでも、凝った言い回しより伝えたい中身がはっきりしていることが大切です。借りものの名言も、自分の気持ちに合うものを選べば立派な表現になります。

この章句が説くこと

和歌志言葉技巧古歌

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