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文武訓 / 文訓下

歐陽子は、至哉天下樂。終日在几案。といへり。智をまして且樂あるは、大なる益にあらずや。無學なる人は、學問の樂かくの如く、いたりて大なる事を知らず、惜むべし。たとへば我國にうまれて、富士のたけ、吉野の花見ざらん人だに、いとうらみ多かるべし。かゝる人には見せまくほしくぞおほゆる。いはんや、人となりて人の道を知らず、古今の事萬物の理にくらき人は、さいはひなくうらみあるべし。知らせまくほしきこと、なんぞ富士吉野にくらぶべきや。只、さいはひありてよく學ばん人は、此うらみなかるべし。

新字:欧陽子は、至哉天下楽。終日在几案。といへり。智をまして且楽あるは、大なる益にあらずや。無学なる人は、学問の楽かくの如く、いたりて大なる事を知らず、惜むべし。たとへば我国にうまれて、富士のたけ、吉野の花見ざらん人だに、いとうらみ多かるべし。かゝる人には見せまくほしくぞおほゆる。いはんや、人となりて人の道を知らず、古今の事万物の理にくらき人は、さいはひなくうらみあるべし。知らせまくほしきこと、なんぞ富士吉野にくらぶべきや。只、さいはひありてよく学ばん人は、此うらみなかるべし。

書き下し

欧陽子は、至れるかな天下の楽。終日几案に在り。といへり。智をまして且楽あるは、大なる益にあらずや。無学なる人は、学問の楽かくの如く、いたりて大なる事を知らず、惜むべし。たとへば我国にうまれて、富士のたけ、吉野の花見ざらん人だに、いとうらみ多かるべし。かかる人には見せまくほしくぞおほゆる。いはんや、人となりて人の道を知らず、古今の事万物の理にくらき人は、さいはひなくうらみあるべし。知らせまくほしきこと、なんぞ富士吉野にくらぶべきや。只、さいはひありてよく学ばん人は、此うらみなかるべし。

現代語訳

欧陽脩は「至れるかな天下の楽しみ、終日机に向かうことにある」と言いました。知恵を増し、しかも楽しみがあるのは、大きな益ではないでしょうか。学問のない人は、学問の楽しみがこのようにきわめて大きいことを知らず、惜しいことです。たとえば、わが国に生まれて、富士の山や吉野の花を見ない人でさえ、たいへん残念に思うでしょう。そういう人には見せてやりたいと思われます。まして人と生まれて人の道を知らず、古今のことや万物の理にくらい人は、幸いがなく残念なことでしょう。知らせてやりたいことは、どうして富士や吉野に比べられましょうか。ただ、幸いにしてよく学ぶ人には、この残念さはないでしょう。

解説

宋の欧陽脩の「至れるかな天下の楽しみ、終日几案に在り」を引き、机に向かって学ぶことこそ天下の至楽だと述べます。そして富士山や吉野の桜を見ない人を惜しむように、学問の楽しみを知らない人こそ惜しまれると説きます。見せてやりたい、知らせてやりたいという言い方に、教えることを喜びとした益軒の温かさがにじみます。今でも、学ぶ楽しさを知らずに学びを苦役と感じている人は多いものです。その楽しさを伝えることが教育の核心でしょう。

この章句が説くこと

学問楽しみ読書知欧陽脩

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