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大和俗訓 / 巻之二・為学下

一およそ人の不孝不忠、もろもろの惡を行ひ、慾を恣にし、身をほろぼし家をほろぼすに至るは、何にかよれるや。知なければなり。又善を行ひて、家をおこし、身をたもち、ほまれを得るは、何の故ぞや。知あればなり。知あればよく善惡を知る。善のなすべき事を知りて行ひ、惡のなすまじき事を知りて行はず。此故に知は身の内の大なる寶なり。學者道に志さば、知を求むるを第一とすべし。知をひらく事は、學問の功にあらずんば成りがたし。

新字:一およそ人の不孝不忠、もろもろの悪を行ひ、慾を恣にし、身をほろぼし家をほろぼすに至るは、何にかよれるや。知なければなり。又善を行ひて、家をおこし、身をたもち、ほまれを得るは、何の故ぞや。知あればなり。知あればよく善悪を知る。善のなすべき事を知りて行ひ、悪のなすまじき事を知りて行はず。此故に知は身の内の大なる宝なり。学者道に志さば、知を求むるを第一とすべし。知をひらく事は、学問の功にあらずんば成りがたし。

書き下し

一およそ人の不孝不忠、もろもろの悪を行ひ、慾を恣にし、身をほろぼし家をほろぼすに至るは、何にかよれるや。知なければなり。又善を行ひて、家をおこし、身をたもち、ほまれを得るは、何の故ぞや。知あればなり。知あればよく善悪を知る。善のなすべき事を知りて行ひ、悪のなすまじき事を知りて行はず。此故に知は身の内の大なる宝なり。学者道に志さば、知を求むるを第一とすべし。知をひらく事は、学問の功にあらずんば成りがたし。

現代語訳

およそ人が不孝・不忠をはじめさまざまな悪を行い、欲をほしいままにして、身を滅ぼし家を滅ぼすに至るのは、何によるのでしょうか。知恵がないからです。また善を行って家を興し、身を保ち、誉れを得るのは、なぜでしょうか。知恵があるからです。知恵があれば善悪をよく知ります。なすべき善を知って行い、なすまじき悪を知って行いません。ですから知恵は身の内の大きな宝です。学ぶ者が道に志すなら、知を求めることを第一とすべきです。知恵を開くことは、学問の力によらなければ成り難いのです。

解説

身を滅ぼすのも家を興すのも、分かれ目は知恵の有無だと益軒は言い切ります。ここでいう知は、物知りのことではなく、なすべき善となすまじき悪を見分ける判断力です。そしてその知恵は学問によって開かれると結びます。借金や不祥事で人生を崩す話は今も絶えませんが、多くは善悪の見極めの甘さから始まります。学ぶことは自分と家族を守るための備えでもあるのだと、この条は教えてくれます。

この章句が説くこと

知学問善悪家宝

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