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文武訓 / 文訓下

一凡吾邦の人、詩文を作るに、只奇異なる文字を多くつらね、故事を處々に引出したるのみにて、まことの志をあらはし、情をふくめることなく、義理なし、質實ならずして奇異をこのむは、文章の本意を失へり。詩は志を言ふを本とす。文は理を論ずると事をしるすを本とす。たくみをこのみかざりを專にし、無用の言葉をつらぬるは益なし。詩文を作る本意にあらず。

新字:一凡吾邦の人、詩文を作るに、只奇異なる文字を多くつらね、故事を処々に引出したるのみにて、まことの志をあらはし、情をふくめることなく、義理なし、質実ならずして奇異をこのむは、文章の本意を失へり。詩は志を言ふを本とす。文は理を論ずると事をしるすを本とす。たくみをこのみかざりを専にし、無用の言葉をつらぬるは益なし。詩文を作る本意にあらず。

書き下し

一凡吾邦の人、詩文を作るに、只奇異なる文字を多くつらね、故事を処々に引出したるのみにて、まことの志をあらはし、情をふくめることなく、義理なし、質実ならずして奇異をこのむは、文章の本意を失へり。詩は志を言ふを本とす。文は理を論ずると事をしるすを本とす。たくみをこのみかざりを専にし、無用の言葉をつらぬるは益なし。詩文を作る本意にあらず。

現代語訳

およそわが国の人は、詩文を作るのに、ただ珍しい文字を多く連ね、故事をあちこちに引き出すばかりで、まことの志をあらわし、情を含めることがなく、義理もありません。質実でなく奇異を好むのは、文章の本意を失っています。詩は志を言うことを本とします。文は理を論じることと事を記すことを本とします。巧みさを好み飾りを専らにし、無用の言葉を連ねるのは益がありません。詩文を作る本意ではありません。

解説

珍しい文字や故事を並べて飾るばかりで、志も情も義理もない詩文を批判し、詩は志を言い、文は理を論じ事を記すのが本来だと説きます。「詩は志を言う」は『書経』舜典の「詩言志」以来の中国の伝統的な詩論です。益軒は質実を尊び、奇異や虚飾を一貫して嫌いました。今の文章でも、難しい言葉や引用で飾るより、何を伝えたいかをはっきりさせることが先です。目的を見失った飾りは、読む人の時間を奪うだけになります。

この章句が説くこと

詩文章志質実表現

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