文武訓 / 文訓上之末
一およそ、世俗の書狀などに書く文字に、ひがごと多し、察すべし。又そら字多し。是亦、其あやまりを知るべし。但し、あやまり來りて、改めがたきこともあり。それを强ひて改めてことやうなるは、時宜にそむきてあしし。
新字:一およそ、世俗の書状などに書く文字に、ひがごと多し、察すべし。又そら字多し。是亦、其あやまりを知るべし。但し、あやまり来りて、改めがたきこともあり。それを強ひて改めてことやうなるは、時宜にそむきてあしし。
書き下し
一およそ、世俗の書状などに書く文字に、ひがごと多し、察すべし。又そら字多し。是亦、其あやまりを知るべし。但し、あやまり来りて、改めがたきこともあり。それを強ひて改めてことやうなるは、時宜にそむきてあしし。
現代語訳
およそ世俗の書状などに書く文字には、誤りが多いので、よく察しなさい。また当て字も多いものです。これもまた、その誤りを知っておきなさい。ただし、誤ったまま使われてきて、改めにくいものもあります。それを無理に改めて風変わりになるのは、時宜に背いてよくありません。
解説
世俗の手紙には誤字や当て字が多いので知っておくべきだが、慣用として定着したものを無理に正して奇妙になるのは時宜に背く、と説いています。正しさと通用性の兼ね合いを考える、益軒らしい穏当な判断です。益軒は古礼を今にそのまま行おうとする儒者を別の条で批判しており、時と所に応じる「時宜」を重んじました。今でも、厳密には誤用とされる言い回しを会話でいちいち正すと角が立ちます。知ったうえで場に合わせる柔軟さが求められます。
この章句が説くこと
文字時宜慣用柔軟手紙
関連する章句
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『都鄙問答』卷之三・性理問答ノ段一も捨てず一に泥まず、能く用ふるは名医なるべし。一方に泥み滞りて、時の変を知らざるは、名医とはいふべからず。天下国家を治むる道もかくの如し。古より有り来たる法を一として捨てず、一に泥まざるは、名医の諸薬を捨てずして、病を治するに同じ。天下国家を治むるに、儒道は善しといふとも、心闇くして泥むことあらば、必ず害あらん。是れ庸医の、人参を以て人を殺すが如し。金屑、眼に入る時は、忽ち翳となる。又仏法信仰するは、心を悟るためなり。仏法を以て得る心と、儒道を以て得たる心と、心に二品の替りあらんや。何の道にて心を得るとも、其の心を以て仁政を行ひ、天下国家を治め給ふに、何を以て害あらん。自ら悪を為し、刑罰にて死する者は、君の私を以て殺し給ふに非ず、何ぞ刑罰に心あらんや。書に曰く、自ら作せる災は活くべからず。聖人の政は天のごとし、無為にして治まる。刑鞭蒲朽ちて蛍空しく去り、諫鼓苔深くして鳥驚かずといへり。
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『囲炉夜話』第二百九則・做作の氣有れば本色の人に非ず執滯の心無くして、才かに是れ通方の士なり。做作の氣有れば、便ち本色の人に非ず。
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孫子・九地篇兵の情は速きを主とす。人の及ばざるに乗じ、不虞の道に由り、その戒めざる所を攻むるなり。
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論語・為政篇子曰く、「君子は器ならず。」
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『酔古堂剣掃』集法・宋人の道學に執する莫かれ世には理の必し難き所の事多し、宋人の道學に執する莫かれ。世には情の通じ難き所の事多し、晉人の風流を說く莫かれ。
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『慎思録』巻之六時に随ひて宜しきを制すれば、則ち拘泥の患ひ無し。今人も亦頗る此の道に志す者有り。然り而して見識蔽固にして、執滞して通ぜず。今世に生まれて古礼に泥み、時に随ひて宜しきを制すること能はず、動もすれば風俗時宜と相乖戻す。人或は以て猖狂と為す。儒者の道、豈に此くの如くなるべけんや。蓋し君子の世に処するや、須らく同じくして異なるべし。其の学を為すや須らく純正にして通達なるべし。
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