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文武訓 / 文訓上

こゝを以て、いとけなくわかき年、早く書をよむべし。もろもろの藝は、年たけてもならひやすし。只、書を讀むことは、年たけては、おぼえよわく、氣力すくなく、ひますくなし。このゆゑに、いとけなき時より、まづ、藝などのことわざはおろそかにしても、もはらつとめて書を讀みならふべし。是、一生の身のたからとなるなり。書を讀まざれば、道にくらきのみならず、萬の事にくらし。書を讀まざる人は、わがくらき事を知らず。はかなしといふべし。弓馬の藝をならひても、文字なければ、藝の理にくらくして其藝いやし。次に六藝をならふべし。ものゝふは、つるぎ、はこ、拳法などの術ならひ知るべし。文學は本なり、文武の藝は末なり。本なければ人の道立たず、末なければ人のわざ行はれず。

新字:こゝを以て、いとけなくわかき年、早く書をよむべし。もろもろの芸は、年たけてもならひやすし。只、書を読むことは、年たけては、おぼえよわく、気力すくなく、ひますくなし。このゆゑに、いとけなき時より、まづ、芸などのことわざはおろそかにしても、もはらつとめて書を読みならふべし。是、一生の身のたからとなるなり。書を読まざれば、道にくらきのみならず、万の事にくらし。書を読まざる人は、わがくらき事を知らず。はかなしといふべし。弓馬の芸をならひても、文字なければ、芸の理にくらくして其芸いやし。次に六芸をならふべし。ものゝふは、つるぎ、はこ、拳法などの術ならひ知るべし。文学は本なり、文武の芸は末なり。本なければ人の道立たず、末なければ人のわざ行はれず。

書き下し

ここを以て、いとけなくわかき年、早く書をよむべし。もろもろの芸は、年たけてもならひやすし。只、書を読むことは、年たけては、おぼえよわく、気力すくなく、ひますくなし。このゆゑに、いとけなき時より、まづ、芸などのことわざはおろそかにしても、もはらつとめて書を読みならふべし。是、一生の身のたからとなるなり。書を読まざれば、道にくらきのみならず、万の事にくらし。書を読まざる人は、わがくらき事を知らず。はかなしといふべし。弓馬の芸をならひても、文字なければ、芸の理にくらくして其芸いやし。次に六芸をならふべし。もののふは、つるぎ、はこ、拳法などの術ならひ知るべし。文学は本なり、文武の芸は末なり。本なければ人の道立たず、末なければ人のわざ行はれず。

現代語訳

こういうわけで、幼く若い年のうちに、早く書を読むべきです。さまざまな芸は、年をとってからでも習いやすいものです。ただ書を読むことだけは、年をとると、覚える力が弱く、気力も少なく、暇も少なくなります。ですから、幼い時から、まず芸事のようなわざはおろそかにしても、もっぱらつとめて書を読み習うべきです。これが一生の身の宝となるのです。書を読まなければ、道にくらいばかりでなく、あらゆる事にくらくなります。書を読まない人は、自分がくらいことを知りません。はかないと言うべきです。弓馬の芸を習っても、文字がなければ、芸の理にくらく、その芸は卑しいものになります。次に六芸を習うべきです。武士は、剣、ほこ、拳法などの術を習い知るべきです。文学は本であり、文武の芸は末です。本がなければ人の道が立たず、末がなければ人のわざは行われません。

解説

前段を受けて、幼いうちは芸事より読書を優先せよと結論づけます。芸は大人になってからでも身につくが、読書の力は若いうちにしか育ちにくいという見立てです。「書を読まない人は自分がくらいことを知らない」という一句は鋭く、知らないことを知らないのが最も危ういと言っています。子育てで習い事を詰め込みすぎて読書の時間がなくなっている家庭には耳の痛い話で、何を先にするかという優先順位の考え方として読めます。

この章句が説くこと

読書子育て本末教育芸

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