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文武訓 / 文訓上

一わかき時は、書を讀むに三のよきことあり。氣つよくして、書を多く讀んでもつかれず、是一なり。いとま多く妨なくて、書を多く讀みやすし、是二なり。わかく氣さかんなれば、記臆つよくしておぼえやすし、是三なり。此三の事、書を讀むによし。又年たけて後書をよむに、あしきこと三あり、一には、すでに君につかうまつりて、つかさどることあり。人のまじはりしげくなり。家の事又おほくしては、書を讀むにいとまなし。二には、としやうやく長けぬれば、氣よわくなりて、つとめて書を多く讀むことかたし。三には、三十より後は、としどしにおぼえよわくなりもてゆけば、少年の時、一たび讀んでおぼゆるほどの事を、年たけぬれば、十たび讀んでもおぼえず。

新字:一わかき時は、書を読むに三のよきことあり。気つよくして、書を多く読んでもつかれず、是一なり。いとま多く妨なくて、書を多く読みやすし、是二なり。わかく気さかんなれば、記臆つよくしておぼえやすし、是三なり。此三の事、書を読むによし。又年たけて後書をよむに、あしきこと三あり、一には、すでに君につかうまつりて、つかさどることあり。人のまじはりしげくなり。家の事又おほくしては、書を読むにいとまなし。二には、としやうやく長けぬれば、気よわくなりて、つとめて書を多く読むことかたし。三には、三十より後は、としどしにおぼえよわくなりもてゆけば、少年の時、一たび読んでおぼゆるほどの事を、年たけぬれば、十たび読んでもおぼえず。

書き下し

一わかき時は、書を読むに三のよきことあり。気つよくして、書を多く読んでもつかれず、是一なり。いとま多く妨なくて、書を多く読みやすし、是二なり。わかく気さかんなれば、記臆つよくしておぼえやすし、是三なり。此三の事、書を読むによし。又年たけて後書をよむに、あしきこと三あり、一には、すでに君につかうまつりて、つかさどることあり。人のまじはりしげくなり。家の事又おほくしては、書を読むにいとまなし。二には、としやうやく長けぬれば、気よわくなりて、つとめて書を多く読むことかたし。三には、三十より後は、としどしにおぼえよわくなりもてゆけば、少年の時、一たび読んでおぼゆるほどの事を、年たけぬれば、十たび読んでもおぼえず。

現代語訳

一、若い時には、書を読むのによいことが三つあります。気力が強く、書を多く読んでも疲れない、これが一つ目です。暇が多く妨げもなく、書を多く読みやすい、これが二つ目です。若く気が盛んなので、記憶が強く覚えやすい、これが三つ目です。この三つは書を読むのによいことです。また年をとってから書を読むには、悪いことが三つあります。一つには、すでに主君に仕えて、受け持つ役目があります。人との付き合いが多くなります。家の事もまた多くなって、書を読む暇がありません。二つには、年がしだいに長けると、気が弱くなって、つとめて書を多く読むことが難しくなります。三つには、三十を過ぎると、年々覚える力が弱くなっていくので、少年の時に一度読んで覚えられたほどの事も、年をとると十度読んでも覚えられません。

解説

若い時の読書の利点を三つ、年をとってからの不利を三つ、対にして数え上げています。気力、時間、記憶力の三点で、今の研究から見ても実感に合う整理です。益軒自身は晩年まで著述を続けた人ですが、その土台は若い日の猛勉強にありました。三十を過ぎると記憶が衰えるという言い方は時代を感じさせますが、仕事や家庭が増える前の時間がどれほど貴重かという指摘は、学生や若手社会人にそのまま当てはまります。

この章句が説くこと

読書若さ学問時間記憶

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