武教小学 / 目錄
○夙起夜寐○燕居○言語應對○行住座臥○衣食居○財寶器物○飲食色欲○放鷹狩獵○與受○子孫敎戒
新字:○夙起夜寐○燕居○言語応対○行住座臥○衣食居○財宝器物○飲食色欲○放鷹狩猟○与受○子孫教戒
書き下し
○夙起夜寐 ○燕居 ○言語応対 ○行住座臥 ○衣食居 ○財宝器物 ○飲食色欲 ○放鷹狩猟 ○与受 ○子孫教戒
現代語訳
一、夙起夜寐(早く起き、夜は遅く寝る)。一、燕居(くつろいでいるとき)。一、言語応対(言葉と受け答え)。一、行住座臥(歩く、とどまる、座る、横になる)。一、衣食居(衣服・食事・住まい)。一、財宝器物(財貨・宝・道具)。一、飲食色欲(飲み食いと色欲)。一、放鷹狩猟(鷹狩りと狩り)。一、与受(与えることと受けること)。一、子孫教戒(子孫への教えと戒め)。以上の十章です。
解説
目録は、『武教小学』が扱う十の章を順に並べたものです。起きてから寝るまでの一日の流れに始まり、くつろぎの時間、言葉づかい、立ち居振る舞い、衣食住、物の持ち方、飲食と欲、遊びの狩猟、人との授受と進み、最後に子孫への教えで閉じます。内から外へ、自分の身から次の世代へという順序が読み取れます。ここに並ぶのは大きな志の話ではなく、毎日の暮らしの具体的な場面ばかりです。会社の人材育成でも、理念や戦略を語る前に、朝の始め方、言葉づかい、金銭や物の扱いといった基本動作を整える視点が役に立ちます。この十章を一覧しておくと、以後の各章がどの位置づけかが見通せます。
この章句が説くこと
目録十章日常の作法基本動作順序武教小学
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『武教小学』行住座臥行くには径に由らず、(子游曰く、澹台滅明は行くに径に由らず、と。朱子曰く、径とは路の小にして捷き者なり。動くこと必ず正を以てし、小を見て速やかならんと欲する意無し。楊氏曰く、後世径に由らざる者有れば、人必ず以て迂と為さん。孔子の徒に非ざれば、其れ孰か能く知りて之を取らん、と。)傍人を礙げず、非礼を為さず、過言を出ださず。門を出づるより、敵を見るが如くす。(道路は貴賤往来の径なり。辞譲の礼有れば、則ち喧嘩の事無し。若し誤りて下人の他を礙げ、馬に乗りて人を汚さば、速やかに我が誤錯の事を遜び、卑言して之を敬い之を礼すれば、則ち他何ぞ争論せん。怠れば則ち必ず礼を忘る。故に門を出づるより、敵を見るが如くす。孔子曰く、門を出でては大賓を見るが如し、と。是れ敬恭の切なるを表すなり。呉子曰く、備うる者は、門を出づるより、敵を見るが如し、と。是れ備えざる無きの謂いなり。)外に出でては即ち内を忘るべし。(已上は行法を言うなり。)往けば則ち前法の如し。(前章に出ず。)座しては則ち威儀を正し、用具を佩び、常に不虞の戒めを忘れず。(已上は座法を言うなり。)臥しては則ち尸せず、(論語に曰く、寝ぬるに尸せず、と。朱子曰く、尸とは偃臥して死人に似たるを謂う、と。)傍らに利器を離さず、夜戒を厳にす。(前章に出ず)皆人に先んじて其の労を為すべし。(已上は臥法を言うなり。)凡そ士為るの道は、行住及び座臥、暫くも心を放てば、則ち必ず変に臨みて常を失う。一生の恪勤、一事に於いて闕滅すべし。変の至るや、知るべからず。則ち豈に怠るべけんや。礼記に曰く、(冠義篇に出ず)凡そ人の人たる所以の者は、礼義なり。礼義の始めは、容体を正し、顔色を斉え、辞令を順にするに在り。容体正しく、顔色斉い、辞令順にして、後に礼義備わる、と。
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『武教小学』序大農・大工・大商は天下の三宝たり。士は農工商の業無くして、三民の長たる所以の者は、他無し。能く身を修め心を正して、国を治め天下を平らかにするなり。然れども世遠く人亡び、郷に善俗無く、世に誠教に乏し。故に或いは短衣蓬跣にして、怒臂按剣を以て俗と為し、或いは深衣服に非ずして、記誦詩章を以て教えと為す。其の過不及甚だ歎息すべきかな。有宋の晦菴小学を述作し、人生八歳より十四歳に迨ぶまで、教うるに灑掃応対進退の節、親を愛し長を敬い親友の倫を以てし、且つ嘉言善行を以て終篇と為す。其の功偉なるかな盛んなるかな。然れども俗殊に時変じ、倭俗の士、用うる所尤も泥着す。則ち闔国に居りて、異域の俗を慕い、或いは礼義を学びて異風を用い、或いは祭礼を為して異様を用う。皆是れ理を究めざるの誤りなり。学者は格物致知を為して、異国の俗に効うを為すに非ざるなり。況んや士為るの道、其の俗殆ど異俗を用うるに足らんや。之を幼穉の時に習い、其の習いと智と長じ、化と心と成らんと欲する事は、誠に先聖の実なり。山鹿先生武教の垂戒、其の教え甚だ明らかなり。先生の門に於いて、士の道を学ばんと欲する者は、必ず此の教えを以て戒めと為さん。其の志何ぞ放逸ならんや。生知の質、上品の士は、外様何ぞ習うに足らんや。然れども俗残い教え弛めば、則ち自ら異端に陥溺する者は、人心の危うきなり。士は君の禄を食み、民の長たり。而して其の形、其の行、其の知正しからざれば、則ち天の賊民なり。尤も汚辱すべきの至りなり。此の一篇輯録して梓録を為す者は、殆ど先生の志に非ず。門弟子等窃かに蒐集し、扁題して武教小学と号す。士の浮靡蒙童、敬みて此の教えを受くる者は、志士仁人の一助と為らんか。玩味して忽せにする勿かれ。明暦丙申八月、門弟子等謹んで序題す。
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『文武訓』文訓下之末一小学の書の文義に通ぜば、其力を以て、類を以ておして四書を見るべし。四書を見て其文義に通ぜば、六経に通ずべし。しからば、小学を以て身を修むるの大法とするのみならず、又経学の基とすべし。一初学の人、朝には経伝を見、朝飯後には経書をよみ、昼は史漢の書を見、或は、諸子諸集を見、文字を書きならひ、法帖をうつし、飯後には頭面腹をなで、園圃を歩行する事数百歩、道遥して精神を舒暢すべし。晩飯の後は弓を射、其余の武芸をも習ふべし。夜は又経伝をよみ、或は経史子集の要語を読み、唐詩を誦し和歌をよむべし。故事古語をよみ覚ゆべし。夜臥にのぞんでは、一日の中の言行を点検して、あやまりすくなくんば心安く寝ぬべし。毎日如斯すべし。
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『武教小学』言語應對言語応対は、志の適く所なり。戯言も思より出づとは、是れなり。凡そ士の言語正しからざれば、則ち其の行い必ず猶(ごと)きなり。柔弱の言、鄙劣の語、尤も慎むべし。(人必ず生産土地の音声有り。然れども好んで懦弱の言を発すれば、則ち行い必ず此に類す。又鄙劣凡下の語を為すは、上品の士に非ず、文を学ばざるの斃と謂う。)戦法軍旅武器馬具の用語、各々品有り。賓客葬祭の語、宗廟朝廷の言、各々則有り。言語軽がるしく出で、応対節に当たらざれば、則ち威儀正しからず、必ず禍を招くの媒なり。(小学に曰く、無用の弁、不慮の察は、棄てて治めず、と。)士の恒に語るべき者は、義不義の論、古戦場の事、古今勇義の行い、時代武義の盛衰、皆議論して今日の非を戒むべし。或いは他の非を嘲り、或いは時の政を謗り、或いは遊興の楽を語り、或いは男女の色を言えば、則ち心必ず流蕩し、行い必ず陥溺す。人心甚だ之を好む。故に非礼は言う勿かれ。
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『武教小学』子孫敎戒(二)是れ古の法なり。)然れども或いは記誦に陥り、或いは詞章を玩べば、則ち倭俗を忘れて漢様を欲す。(婚冠喪祭衣服言語、必ず漢俗に模せんと欲するは、是れ泥着の致す所なり。)明道曰く、凡百の玩好は皆志を奪う。書札に至るまで、好に向かいて着すれば、亦自ら志を喪う、云云、と。人に気稟の異有り。故に其の軽重清濁を考え、習い馴れしむ。言語已に通ずれば、則ち師を選び友を考え、人品の下に到らしむること勿れ。(康節邵先生、子孫を戒めて曰く、上品の人は、教えずして善し。中品の人は、教えて後に善し。下品の人は、教えても亦善からず。教えずして善きは、聖に非ずして何ぞ。教えて後に善きは、賢に非ずして何ぞ。教えても亦善からざるは、愚に非ずして何ぞ、と。)師弟の相接するは、尤も敬恭す可し。兵書武冊は、汚席に置く可からず。盥漱して之を披く。師を貴ぶこと父兄の如くす。(父兄は、天然の序なり。師は我を導き、道義に到らしめ、五倫の明らかなるを知らしむ。其の恩情至って厚し。豈に忽にするが如くならん平。我士と為りて、武書武事を軽んずる者は、志士に非ざるなり。)凡そ女子の教戒は、甚だ以て慎む可し。其の法多く儒弱を以て教えと為す。大いに誤りなり。士の妻室たる者は、士常に朝に在りて、内を知らず。故に夫に代わりて家業を戒む。豈に儒弱を以てせん平。夫れ男は内を知らず、女は外を言わず。宮室の為に内外を弁ず。(内則に曰く、礼は夫婦に始まる。宮室の為に内外を弁ず、云云。)男女の為に椸枷を同じくせず、敢えて夫の楎椸に懸けず。舅姑の道を能くす。(皆内則の言也。
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『武教小学』夙起夜寐凡そ士為るの法は、先ず夙に起きて、盥漱櫛し、衣服を正し、用具を佩ぶ。(盥は手を洗うなり。漱は口を漱ぐなり。櫛は梳るなり。用具とは腰刀・扇・火打袋の類なり。)能く平旦の気を養い、(孟子に出ず。)而して君父の恩情を体認し、今日の家業を思量す。身体髪膚、之を父母に受く、敢えて毀傷せざるは孝の始めなり、身を立て道を行い、名を後世に揚げ、以て父母を顕すは孝の終わりなり、と観るべし。而る後、家事を示し、賓客に謁し、君に事う。則ち速やかに出仕す。父母に事うれば、則ち行きて其の安否を察す。出でて事うれば、則ち謀は其の位を出でず。長者に侍すれば、則ち敬すること父兄の如し。能く謙退して争わず。(右は君に事え父母に事え長幼を序するの説なり。皆倫を明らかにするの事なり。)文を以て友を会し、友を以て仁を輔く。(曾子の言なり。朱子曰く、学を講じて以て友に会すれば、則ち道益々明らかなり、と。云云。)益友有れば則ち事を問い、(孔子曰く、益する者三友、損する者三友。友直、友諒、友多聞は、益なり。友便辟、友善柔、友便佞は、損なり、と。)能く信にして偽らず、常に士の正義を思いて、懈るべからず。是れ交わりを全うするの道なり。(以上は朋友の交わりを明らかにするを言うなり。曲礼に曰く、君子は人の歓を尽くさず、人の忠を竭くさず、以て交わりを全うするなり、と。)凡そ仕官の途は、朝は人に先んじて出で、夕は人に後れて退く。帰宅の後、先ず父母に謁し、気を下し色を怡ばしむ。(内則に曰く、気を下し色を怡ばしめ、衣の燠寒、疾痛苛痒を問いて、敬いて抑え搔く、云々、と。)席に着きて留守の用所を問い、(家事を問うなり。)急緩を計りて其の事を行う。閑なれば則ち今日の行事を顧み、暇なれば則ち書伝を披きて、士の正道を考え、義不義の行を知る。日既に没すれば則ち夜戒を為す。(火難を禦ぎ不虞に備うるの戒めなり。更に間断すべからざるなり。)寝所に入り、気を休め体を寛くして、士卒の体を安んぜしむ。(凡そ家司下人は、主に先んじて起き、主に後れて寝ぬ。其の休息は暫時なり。故に夜寐ぬるに安んぜしむるなり。)
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