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武教講録 / 惣目錄・武教全書の篇次に見る組織づくりの順序

皆此八冊に括て、一篇の目錄又八冊を括する也、篇次の大意を云はど、序段は謀略、智略、計策の三つにて、全部の歸宿する所を約說して篇首に置く者なり、孫子始計篇と全く相表裡して古今數ある大文字也、余を以て是を窺へば一篇の大學に比するに更に著實該備を覺ふ、主本是全書の首篇也、專ら治平の道を論ず、全書を讀ん者此篇を讀で、兵は人主の大道にして一士一卒の私言に非ることを悟り、慨然として國天下を以て自ら任すべし、是根本也、其次は撰將也、天下の大人主一人の能自ら治む所に非ず、故に必ず賢財を選て諸事を分治す、是撰將也、已に將あり、其次は平士を選用すへし、是用士也、(用士の義余別に說あり、本篇にて云べし、今姑く舊說に從ふ、)將あり士あり、是に於て其職制を詳論す、是武者分也、制法は是金鼓旌旗の制法を論ず、撰功は是戰士の功過を議す、並に皆平素に設くべきことなれば內習の前に置く、而して更に內習あり、其次は軍禮法令是れ平素に設くべきことなれば內習の後に置く也、以上九篇皆人事の最急なる者、而して主本は全部の骨子最も九篇の骨子なり、撰將用士武者分是に隸す、後五篇中內習を主とす、而內習又明かに主本に原づく、九篇已に人事を言ふ、其次乃ち天官地形を論じ、兵の助けを知らしめ、斥候侍用武功用間、其事は乃ち一士一卒の任にして、其用は乃ち主の方寸に存す、且主の士卒を敎育する其術多端と云ども、小學の外、此三篇及び上の撰功法令等を以てする固なり、故に余向に等級を作り、一騎前の學を揭示するに此數篇を以てす、是亦由らしむるの法にして知らしむるの道に非ず、(論語泰伯篇、民可使由之、不可使知之、)豪傑の士眞に善く此書を讀む時は、自ら全書篇次の旨と余等級の次序と並び行れて戻らざるを知らん、

新字:皆此八冊に括て、一篇の目録又八冊を括する也、篇次の大意を云はど、序段は謀略、智略、計策の三つにて、全部の帰宿する所を約説して篇首に置く者なり、孫子始計篇と全く相表裡して古今数ある大文字也、余を以て是を窺へば一篇の大学に比するに更に著実該備を覚ふ、主本是全書の首篇也、専ら治平の道を論ず、全書を読ん者此篇を読で、兵は人主の大道にして一士一卒の私言に非ることを悟り、慨然として国天下を以て自ら任すべし、是根本也、其次は撰将也、天下の大人主一人の能自ら治む所に非ず、故に必ず賢財を選て諸事を分治す、是撰将也、已に将あり、其次は平士を選用すへし、是用士也、(用士の義余別に説あり、本篇にて云べし、今姑く旧説に従ふ、)将あり士あり、是に於て其職制を詳論す、是武者分也、制法は是金鼓旌旗の制法を論ず、撰功は是戦士の功過を議す、並に皆平素に設くべきことなれば内習の前に置く、而して更に内習あり、其次は軍礼法令是れ平素に設くべきことなれば内習の後に置く也、以上九篇皆人事の最急なる者、而して主本は全部の骨子最も九篇の骨子なり、撰将用士武者分是に隸す、後五篇中内習を主とす、而内習又明かに主本に原づく、九篇已に人事を言ふ、其次乃ち天官地形を論じ、兵の助けを知らしめ、斥候侍用武功用間、其事は乃ち一士一卒の任にして、其用は乃ち主の方寸に存す、且主の士卒を教育する其術多端と云ども、小学の外、此三篇及び上の撰功法令等を以てする固なり、故に余向に等級を作り、一騎前の学を掲示するに此数篇を以てす、是亦由らしむるの法にして知らしむるの道に非ず、(論語泰伯篇、民可使由之、不可使知之、)豪傑の士真に善く此書を読む時は、自ら全書篇次の旨と余等級の次序と並び行れて戻らざるを知らん、

書き下し

皆此八冊に括て、一篇の目錄又八冊を括する也、篇次の大意を云はど、序段は謀略、智略、計策の三つにて、全部の歸宿する所を約說して篇首に置く者なり、孫子始計篇と全く相表裡して古今數ある大文字也、余を以て是を窺へば一篇の大學に比するに更に著實該備を覺ふ、主本是全書の首篇也、專ら治平の道を論ず、全書を讀ん者此篇を讀で、兵は人主の大道にして一士一卒の私言に非ることを悟り、慨然として國天下を以て自ら任すべし、是根本也、其次は撰將也、天下の大人主一人の能自ら治む所に非ず、故に必ず賢財を選て諸事を分治す、是撰將也、已に將あり、其次は平士を選用すへし、是用士也、(用士の義余別に說あり、本篇にて云べし、今姑く舊說に從ふ、)將あり士あり、是に於て其職制を詳論す、是武者分也、制法は是金鼓旌旗の制法を論ず、撰功は是戰士の功過を議す、並に皆平素に設くべきことなれば內習の前に置く、而して更に內習あり、其次は軍禮法令是れ平素に設くべきことなれば內習の後に置く也、以上九篇皆人事の最急なる者、而して主本は全部の骨子最も九篇の骨子なり、撰將用士武者分是に隸す、後五篇中內習を主とす、而內習又明かに主本に原づく、九篇已に人事を言ふ、其次乃ち天官地形を論じ、兵の助けを知らしめ、斥候侍用武功用間、其事は乃ち一士一卒の任にして、其用は乃ち主の方寸に存す、且主の士卒を敎育する其術多端と云ども、小學の外、此三篇及び上の撰功法令等を以てする固なり、故に余向に等級を作り、一騎前の學を揭示するに此數篇を以てす、是亦由らしむるの法にして知らしむるの道に非ず、(論語泰伯篇、民可使由之、不可使知之、)豪傑の士眞に善く此書を讀む時は、自ら全書篇次の旨と余等級の次序と並び行れて戻らざるを知らん、

現代語訳

みなこの八冊に括られ、一篇の目録がまたこの八冊を括っているのです。篇次の大意を言えば、序段は謀略・智略・計策の三つで、全部の帰着するところを約して説き、篇首に置いたものです。『孫子』始計篇と全く表裏して、古今にまれな大文字です。私が見るところ、『大学』の一篇に比べて、さらに実際的で備わっていると感じます。主本はこの全書の首篇です。もっぱら治平の道を論じます。全書を読む者は、この篇を読んで、兵は人主の大道であって、一士一卒の私言ではないことを悟り、意気盛んに国天下を自らの任とすべきです。これが根本です。その次は撰将です。天下の大事は、人主一人でよく自ら治められるところではありません。ゆえに必ず賢才を選んで諸事を分担して治めさせます。これが撰将です。すでに将があれば、その次は平士を選んで用いるべきです。これが用士です。(用士の義は、私に別の説があり、本篇で述べるべきである。今はひとまず旧説に従う。)将があり士があれば、そこでその職制を詳しく論じます。これが武者分です。制法は、金鼓旌旗の制法を論じます。撰功は、戦士の功過を議します。いずれも平素に設けておくべきことなので、内習の前に置きます。そしてさらに内習があり、その次は軍礼・法令で、これは平素に設けておくべきことなので、内習の後に置きます。以上九篇は、みな人事の最も急なものであり、主本は全部の骨子であって、最も九篇の骨子です。撰将・用士・武者分はこれに属します。後の五篇のうちでは内習が主です。そして内習もまた、明らかに主本に基づきます。九篇ですでに人事を言い、その次にすなわち天官・地形を論じ、兵の助けを知らせ、斥候・侍用・武功・用間は、その事は一士一卒の任であり、その用は主の方寸に存します。また、主が士卒を教育するのに、その術は多端といっても、『小学』のほか、この三篇および上の撰功・法令などをもってするのは当然です。ゆえに私が先に等級を作り、一騎前の学を掲示するのに、この数篇をもってしたのです。これもまた「由らしむる」の法であって、「知らしむる」の道ではありません。(『論語』泰伯篇に、「民は由らしむべし、知らしむべからず」とある。)豪傑の士が本当にこの書をよく読む時は、おのずから全書の篇次の旨と、私の等級の次序が並び行われてもとらないことを知るでしょう。

解説

全書の篇の並びを、根本の治平の道、将の選任、士の登用、職制、制度、内部の訓練、礼法と法令の順に説明しています。人事が最優先であり、そのうえで環境の理解と現場の任務に進むという構造です。現代の組織づくりでも、まず理念と責任を明確にし、次に適任の責任者を選び、役割を決め、制度や評価を整え、平素の訓練を重ねる順序は参考になります。また、人を使うには由らしむる方法と知らしむる方法があり、考えを説明する努力が欠かせないという現代的な課題も浮かびます。

この章句が説くこと

武教講録吉田松陰惣目録篇次組織設計人事

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