導師導古典を学びたいすべての人に 法人向けワークシート法人向けワークシート

武教講録 / 自序・不備を恐れず講義の要点を書き留める

余、家學を襲し、幼より山鹿先師の書を讀み、今日に至る、然ども、材力薄劣、思慮膚淺、能く其精義を發明すると能はず、頃ろ、親戚子弟の請に應じ、武敎全書を把て畧講一過す、其間自ら戒しめ又子弟に綣綣する所以の者と、兵勢事務的切緊要の論とは、他日放失あらんことを慮り、皆存錄して考索に備へ、且後來發明の基となさんと欲するなり、其一を擧て百を廢する如きは、是固より全を要するの書に非れば、敢て他人の笑罵を辭せざる所也、

新字:余、家学を襲し、幼より山鹿先師の書を読み、今日に至る、然ども、材力薄劣、思慮膚浅、能く其精義を発明すると能はず、頃ろ、親戚子弟の請に応じ、武教全書を把て略講一過す、其間自ら戒しめ又子弟に綣綣する所以の者と、兵勢事務的切緊要の論とは、他日放失あらんことを慮り、皆存録して考索に備へ、且後来発明の基となさんと欲するなり、其一を挙て百を廃する如きは、是固より全を要するの書に非れば、敢て他人の笑罵を辞せざる所也、

書き下し

余、家學を襲し、幼より山鹿先師の書を讀み、今日に至る、然ども、材力薄劣、思慮膚淺、能く其精義を發明すると能はず、頃ろ、親戚子弟の請に應じ、武敎全書を把て畧講一過す、其間自ら戒しめ又子弟に綣綣する所以の者と、兵勢事務的切緊要の論とは、他日放失あらんことを慮り、皆存錄して考索に備へ、且後來發明の基となさんと欲するなり、其一を擧て百を廢する如きは、是固より全を要するの書に非れば、敢て他人の笑罵を辭せざる所也、

現代語訳

私は家学を受け継ぎ、幼い頃から山鹿先師の書を読んで今日に至りました。しかし才能も力も乏しく、思慮も浅く、その精妙な教えを明らかにすることはできません。このごろ親戚や子弟の求めに応じて、武教全書を取り上げ、大略を一通り講じました。その間に自らを戒め、また子弟に懇切に説いたことと、兵の勢いや実務に関わる切実で重要な論とは、後日散逸することを案じ、すべて書き留めて考察に備え、のちの新たな発見の土台にしようと思います。一つを挙げて百を捨てるようなところは、もともと全体を備えるべき書ではないので、他人の嘲りや罵りもあえて辞さないところです。

解説

自序は、吉田松陰が山鹿素行の書を講じた内容を書き残す動機を述べた一節です。自分の才が乏しいと認めながらも、講義の中で自分や弟子を戒めた点と、実務に切実な論を、忘れぬうちに記録するとしています。不完全でも笑われる覚悟で残す姿勢が読み取れます。現代の管理職も、現場で得た学びや部下への指導の要点を日々書き留めておけば、後の自分やチームの判断の土台になります。完璧を待たず、まず記録を始める勇気が組織の知を育てます。

この章句が説くこと

武教講録吉田松陰山鹿素行記録謙虚学びの蓄積

関連する章句

『人生の方程式』の表紙

人生を、一行の式にしてみた。

志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。

本の中身を見る
本2冊(人生の方程式・人生の教科書)+師導1か月=700円本を見る