武教講録 / 自序・不備を恐れず講義の要点を書き留める
余、家學を襲し、幼より山鹿先師の書を讀み、今日に至る、然ども、材力薄劣、思慮膚淺、能く其精義を發明すると能はず、頃ろ、親戚子弟の請に應じ、武敎全書を把て畧講一過す、其間自ら戒しめ又子弟に綣綣する所以の者と、兵勢事務的切緊要の論とは、他日放失あらんことを慮り、皆存錄して考索に備へ、且後來發明の基となさんと欲するなり、其一を擧て百を廢する如きは、是固より全を要するの書に非れば、敢て他人の笑罵を辭せざる所也、
新字:余、家学を襲し、幼より山鹿先師の書を読み、今日に至る、然ども、材力薄劣、思慮膚浅、能く其精義を発明すると能はず、頃ろ、親戚子弟の請に応じ、武教全書を把て略講一過す、其間自ら戒しめ又子弟に綣綣する所以の者と、兵勢事務的切緊要の論とは、他日放失あらんことを慮り、皆存録して考索に備へ、且後来発明の基となさんと欲するなり、其一を挙て百を廃する如きは、是固より全を要するの書に非れば、敢て他人の笑罵を辞せざる所也、
書き下し
余、家學を襲し、幼より山鹿先師の書を讀み、今日に至る、然ども、材力薄劣、思慮膚淺、能く其精義を發明すると能はず、頃ろ、親戚子弟の請に應じ、武敎全書を把て畧講一過す、其間自ら戒しめ又子弟に綣綣する所以の者と、兵勢事務的切緊要の論とは、他日放失あらんことを慮り、皆存錄して考索に備へ、且後來發明の基となさんと欲するなり、其一を擧て百を廢する如きは、是固より全を要するの書に非れば、敢て他人の笑罵を辭せざる所也、
現代語訳
私は家学を受け継ぎ、幼い頃から山鹿先師の書を読んで今日に至りました。しかし才能も力も乏しく、思慮も浅く、その精妙な教えを明らかにすることはできません。このごろ親戚や子弟の求めに応じて、武教全書を取り上げ、大略を一通り講じました。その間に自らを戒め、また子弟に懇切に説いたことと、兵の勢いや実務に関わる切実で重要な論とは、後日散逸することを案じ、すべて書き留めて考察に備え、のちの新たな発見の土台にしようと思います。一つを挙げて百を捨てるようなところは、もともと全体を備えるべき書ではないので、他人の嘲りや罵りもあえて辞さないところです。
解説
この章句が説くこと
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『武家家訓集』毛利元就三子教訓状「二十歳から四十余年のこと」一元就事二十五年、奧元にはなれ申、至當年于今迄四十餘ヶ年、其內大浪小浪洞に、他家之弓矢いかばかり轉變に候哉、然處元就一人すべりぬけ候て、如此之儀不思議不能申候身ながら、吾等事けな氣者、とうほ手ものにても、智惠才覺人に越候者にても、又正直正路者にて人にすぐれ、神佛の御まぼりあるべき者にても、何之條にてもなく候處に、かやうにすべりぬけ候事、何之段にて候共、更身ながら不及推量候〱、然間はやく〱心安、ちと今生のらくをも仕、心靜に後生のねがひをも仕度候へ共、其段も先ならず候て不及申候〱、
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『驢鞍橋』卷上夜話に曰く、今時の人すべを知らす、餓鬼畜生をさへ離れすして、二乗見解と云つて声聞縁覚をそしる人あり、あまり土な事なり。人は知らず、我は餓鬼畜生を離れす、誰ほしと云はば、おれほしと云はんずと也。因に人問ふ、日本諸宗の大師先徳に、古は大修行底の人有りや。師曰、知らぬ事なり、残されたる法語等を以て見れば、経文語録の格を以て書示されたると見えたり。実に修行强き人有りとも見えすと也。
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