武訓 / 下・第24段
戰陣に川を渡すに、河邊にのぞんで、のり入る所と、向ひのあがり所を、よく見定むべし。むかひあがり塲あしければ、あがりにくゝ、敵にうたれ、身方に越さる。川ほりなどありて、馬にて飛びこすべきとおもふ所は、かねて馬をのるに、馬の足をはやめ、其の勢を以て、飛びこすべし。かち立にて、はしり越ゆるも同意なり。
新字:戦陣に川を渡すに、河辺にのぞんで、のり入る所と、向ひのあがり所を、よく見定むべし。むかひあがり塲あしければ、あがりにくゝ、敵にうたれ、身方に越さる。川ほりなどありて、馬にて飛びこすべきとおもふ所は、かねて馬をのるに、馬の足をはやめ、其の勢を以て、飛びこすべし。かち立にて、はしり越ゆるも同意なり。
書き下し
戰陣に川を渡すに、河邊にのぞんで、のり入る所と、向ひのあがり所を、よく見定むべし。むかひあがり塲あしければ、あがりにくゝ、敵にうたれ、身方に越さる。川ほりなどありて、馬にて飛びこすべきとおもふ所は、かねて馬をのるに、馬の足をはやめ、其の勢を以て、飛びこすべし。かち立にて、はしり越ゆるも同意なり。
現代語訳
戦陣で川を渡すときは、河辺に臨んで、乗り入れる所と向こう岸の上がり所をよく見定めなければならない。向こうの上がり場が悪ければ、上がりにくく、敵に討たれ、味方に追い越される。川堀などがあって馬で飛び越えようと思う所は、あらかじめ馬に乗って、馬の足を速め、その勢いで飛び越えるべきである。徒歩で走り越えるのも同じ心である。
解説
川を渡る際の実際的な心得を述べた段です。入る所だけでなく向こう岸の上がり所を見定めよ、上がり場が悪ければ敵に討たれ味方にも越される、と出口の確認が重ねて強調されています。堀を飛び越すなら、あらかじめ馬を走らせて勢いを付けるべきだとも述べ、徒歩でも同じ心だとします。益軒が戦の理念だけでなく、具体的な動き方まで書き残していることが分かります。新規の取り組みを始めるとき、入り口の勢いにばかり目が行きがちですが、着地点や撤退の道筋を先に見ておく視点は、計画づくりの基本として今も通用します。
この章句が説くこと
渡河出口見定め勢い準備武訓
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