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武訓 / 下・第21段

一時の口論によりて、闘爭に及ぶは、必、あらそひよりおこる。あらそひは、人の過言無禮をとがめて、堪忍せざるなり。忍べば、あらそひなく、敵なし。又、はぢなし。人に對するには、言にも、身のふるまひにも、禮をあつくして、無禮なかるべし。神功皇后の、新羅をせめに行き給ひし時の軍令、日本紀に出でたり。もろこしの良將の軍令にもまさりて、貴ぶべし。

新字:一時の口論によりて、闘争に及ぶは、必、あらそひよりおこる。あらそひは、人の過言無礼をとがめて、堪忍せざるなり。忍べば、あらそひなく、敵なし。又、はぢなし。人に対するには、言にも、身のふるまひにも、礼をあつくして、無礼なかるべし。神功皇后の、新羅をせめに行き給ひし時の軍令、日本紀に出でたり。もろこしの良将の軍令にもまさりて、貴ぶべし。

書き下し

一時の口論によりて、闘爭に及ぶは、必、あらそひよりおこる。あらそひは、人の過言無禮をとがめて、堪忍せざるなり。忍べば、あらそひなく、敵なし。又、はぢなし。人に對するには、言にも、身のふるまひにも、禮をあつくして、無禮なかるべし。神功皇后の、新羅をせめに行き給ひし時の軍令、日本紀に出でたり。もろこしの良將の軍令にもまさりて、貴ぶべし。

現代語訳

一時の口論から闘争に及ぶのは、必ず争いから起こる。争いは、人の言い過ぎや無礼をとがめて堪忍しないことから生じる。耐え忍べば争いはなく、敵もない。また恥もない。人に対するには、言葉にも身のふるまいにも礼を厚くして、無礼がないようにすべきである。神功皇后が新羅を攻めに行かれたときの軍令が、日本紀に出ている。中国の良将の軍令にもまさって、貴ぶべきものである。

解説

口論から闘争が起こる流れを、堪忍と礼で断ち切るという段です。益軒は、争いは相手の言い過ぎや無礼をとがめて堪えないところから始まり、耐え忍べば争いも敵も恥もないと述べます。そのうえで、言葉とふるまいの両方に礼を厚くするよう勧めています。末尾の神功皇后の軍令は、本文では日本紀に出ているとされるだけで、内容はここでは示されません。社内の対立や顧客対応でも、小さな言葉のとげが大きな衝突に育つことは少なくありません。礼を厚くするとは、相手に合わせて自分を抑えるのではなく、場を荒らさない構えを先に整えることだと読めます。

この章句が説くこと

堪忍礼争い無礼軍令武訓

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