武訓 / 上・第31段
外は勇あるやうに見えて、內心つたなき人あり。外面はつたなく、俄の事にあひて、臆したるやうに見ゆる人あり。心定まりて後に、勇いでくるものなり。是、氣よわく、心つよきなり。外愚に見えて、內明なる人あり。外明にして、內くらき人あり。人の生れつきには、色々くせあり。其の心をしらで、くせを以て、其の人を見あやまることなかれ。
新字:外は勇あるやうに見えて、内心つたなき人あり。外面はつたなく、俄の事にあひて、臆したるやうに見ゆる人あり。心定まりて後に、勇いでくるものなり。是、気よわく、心つよきなり。外愚に見えて、内明なる人あり。外明にして、内くらき人あり。人の生れつきには、色々くせあり。其の心をしらで、くせを以て、其の人を見あやまることなかれ。
書き下し
外は勇あるやうに見えて、內心つたなき人あり。外面はつたなく、俄の事にあひて、臆したるやうに見ゆる人あり。心定まりて後に、勇いでくるものなり。是、氣よわく、心つよきなり。外愚に見えて、內明なる人あり。外明にして、內くらき人あり。人の生れつきには、色々くせあり。其の心をしらで、くせを以て、其の人を見あやまることなかれ。
現代語訳
外見は勇があるように見えて、内心は弱い人がいます。外見は不器用で、急な出来事に出会って臆したように見えながら、心が定まった後で勇が出てくる人がいます。これは、気は弱いが、心は強いのです。外見は愚かに見えて、内心は明るい人がいます。外見は明らかで、内心は暗い人がいます。人の生まれつきにはいろいろな癖があります。その心を知らないで、癖によってその人を見誤ってはなりません。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『文武訓』武訓上一勇をこのむ者、其中を得れば正気とす、君子の勇なり、士気なり。中に過れば客気なうは気なるは士気にあらず。是小人の勇なり。正気はよく事を成就す。客気は必ず事を仕損ずるものなり。一外は勇あるやうに見えて、内心つたなき人あり。外面はつたなく、俄の事にあひて、臆したるやうに見ゆる人あり。心定りて後に勇いでくるものなり。是気よわく心つよきなり。外愚に見えて、内明なる人あり。外明にして内くらき人あり。人の生れつきには色々くせあり。其心を知らで、くせを以て其人を見あやまることなかれ。一呂氏春秋に曰く、亡国の主は、必ず自ら驕り、必ず自ら智とし、必ず物を軽んず。といへり。織田信長の亡び給ふも亦斯の如し。信長公は、武勇は古今にすぐれ、其功を立て敵を亡し給ふも、多くは不義にあらず。
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『初学訓』巻之三一利口にして才力するどに、世変になれて、小事にかしこき人に、大体にくらくて、よき智恵なく愚なる人あり。又、弁才なく才力つたなき人に、かへりて、其心明らかにして、大体にかしこき人あり。人に交り人を使ふ人は、人を用ふるに、外の貌のうるはしきと、言のかしこきに迷ふことなかれ、よく其心の内を察すべし。外明らかなれば内くらく、外くらければ内明らかなり。故に、外はたらきて内おろかなる人あり、外くらくして内明らかなる人あり。たとへば、水と火との如し。水は、外くらくして物を照す光なけれども、内見え透きて明らかなり。火は、外明らかにして、よく物を照せども、その内くらくして見え透かず。人の内外かはりあるも、これに同じ。必ず其貌によりて、人を見あやまるべからず。
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『文武訓』武訓下一勇者は外をあらくせず。荀子が、能く定つて後能く応ずといへるが如くなるべし。いふ意は、敵にむかひては、心をしづかに定めてうごかさずして、よく敵に勝つ。外に気をうごかして、かるがるしくさわがしきは、内に敵に応ずべき根なし。人に勝ちがたし。
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『武訓』上・第30段勇をこのむ者、其の中を得れば正氣とす。君子の勇なり。中に過れば客氣なり。うは氣なるは、士氣にあらず。是、小人の勇なり。正氣は、よく事を成就す。客氣は、必、事をしそんずるものなり。
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『武訓』上・第26段勇にあやまる人は、死すべからずして死す。是、仁にそむきて、生をかろんず、孝にあらず。勇なき人は、死すべくして死なず。是、義にそむきて、生をしみ、恥をしらず、忠にあらず。
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『武訓』下・第12段勇者は、外をあらくせず。荀子が、能く定まつて後能く應ずといへるが如くなるべし。いふ意は、敵にむかひては、心をしづかに定めて、うごかさずして、よく敵にかつ。外に氣をうごかして、かる〳〵しくさわがしきは、內に敵に應ずべき根なし。人にかちがたし。
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