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武訓 / 上・第14段

兵術は、將と士と、貴賤の位によりて、大小の用ことなり。其の位に切なることを、先、まなぶべし。主將たる人はいふに及はず、士卒の長となる者も、兵術をしらざれば、節制に應じがたし。大夫以上の人は、兵術をしるべし。兵術は、武藝の本なり。兵術をしらずして、弓馬劍戟の藝をのみ學ぶを、武學と心得るは、本をすてゝ、末をとるなり。主將たる人、兵術をしらずして、只、武藝のみを學ぶは、武學にはあらず。藝術のみを好みて、本をしらざるは、物をもてあそべば、志を喪ふの類なり。武藝は、一人に敵する術なり。兵法は、萬人に敵する術なり。

新字:兵術は、将と士と、貴賤の位によりて、大小の用ことなり。其の位に切なることを、先、まなぶべし。主将たる人はいふに及はず、士卒の長となる者も、兵術をしらざれば、節制に応じがたし。大夫以上の人は、兵術をしるべし。兵術は、武芸の本なり。兵術をしらずして、弓馬剣戟の芸をのみ学ぶを、武学と心得るは、本をすてゝ、末をとるなり。主将たる人、兵術をしらずして、只、武芸のみを学ぶは、武学にはあらず。芸術のみを好みて、本をしらざるは、物をもてあそべば、志を喪ふの類なり。武芸は、一人に敵する術なり。兵法は、万人に敵する術なり。

書き下し

兵術は、將と士と、貴賤の位によりて、大小の用ことなり。其の位に切なることを、先、まなぶべし。主將たる人はいふに及はず、士卒の長となる者も、兵術をしらざれば、節制に應じがたし。大夫以上の人は、兵術をしるべし。兵術は、武藝の本なり。兵術をしらずして、弓馬劍戟の藝をのみ學ぶを、武學と心得るは、本をすてゝ、末をとるなり。主將たる人、兵術をしらずして、只、武藝のみを學ぶは、武學にはあらず。藝術のみを好みて、本をしらざるは、物をもてあそべば、志を喪ふの類なり。武藝は、一人に敵する術なり。兵法は、萬人に敵する術なり。

現代語訳

兵術は、将と士とで、貴賤の位によって、その大小の用が異なります。その位に切実なことを、まず学ぶべきです。主将たる人はいうまでもなく、士卒の長となる者も、兵術を知らなければ、節制に応じることができません。大夫以上の人は、兵術を知るべきです。兵術は武芸の本です。兵術を知らずに、弓馬剣戟の芸だけを学んで、それを武学と心得るのは、本を捨てて末を取ることです。主将たる人が兵術を知らず、ただ武芸だけを学ぶのは、武学ではありません。技芸ばかりを好んで本を知らないのは、物をもてあそべば志を失う、という類のことです。武芸は一人の敵に当たる術です。兵法は万人の敵に当たる術です。

解説

立場に応じて学ぶ内容を変えよという話の続きで、上に立つ者は兵術を学ぶべきだと述べます。武芸は一人の敵に当たる術、兵法は万人の敵に当たる術、という対比が核心です。個人の腕前と、多数を動かす力は別のものだという整理です。物をもてあそべば志を失うという言葉も、技芸にのめり込むと本来の目的を見失うことへの戒めです。現代の管理職に当てはめれば、プレイヤーとして優秀だった人が、役職に就いてもなお自分の腕前で勝負しようとする罠を指します。チームの力で成果を出す方法を学ぶことが、位にふさわしい学びだと分かります。

この章句が説くこと

兵術武芸立場に応じた学び組織を動かす志武訓

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