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武家小学 / 礼を欠く施し

一與へ施すとても。道と義とを以てせざれば義士は來て服す事なし。傳曰義士を使ふに財を以てすべからずとて。唯財を與ても禮なき時は彼も受ざるもの也。故に爾來の食は乞食の者も受ずと言て。人を至て賤しめ侮り。爾來れなどいふて食物をなげあとふる時は。譬ば今餓死せんとする人も無禮を憤て受ざる者といへり。况や義士に於をや。愼べき事也。

新字:一与へ施すとても。道と義とを以てせざれば義士は来て服す事なし。伝曰義士を使ふに財を以てすべからずとて。唯財を与ても礼なき時は彼も受ざるもの也。故に爾来の食は乞食の者も受ずと言て。人を至て賤しめ侮り。爾来れなどいふて食物をなげあとふる時は。譬ば今餓死せんとする人も無礼を憤て受ざる者といへり。況や義士に於をや。慎べき事也。

書き下し

一與へ施すとても。道と義とを以てせざれば義士は來て服す事なし。傳曰義士を使ふに財を以てすべからずとて。唯財を與ても禮なき時は彼も受ざるもの也。故に爾來の食は乞食の者も受ずと言て。人を至て賤しめ侮り。爾來れなどいふて食物をなげあとふる時は。譬ば今餓死せんとする人も無禮を憤て受ざる者といへり。况や義士に於をや。愼べき事也。

現代語訳

一、与え施すにしても、道と義とをもってしなければ、義士は来て従うことがありません。伝に「義士を使うのに財をもってしてはならない」とあるように、ただ財を与えても礼がないときは、相手も受けないものです。ですから、「お前に来る食」は、乞食の者でも受けないと言って、人を至って卑しめ侮り、「お前、来い」などと言って食べ物を投げ与えるときは、たとえ今にも餓死しようとする人でも、無礼に憤って受けない者だといいます。まして義士においてはなおさらです。慎むべきことです。

解説

施しも、道と義によらず、財だけを与えて礼がなければ、義士は従わないと説きます。「お前、来い」と呼びつけたり、食べ物を投げ与えたりすれば、餓死寸前の者さえ無礼に憤って受けないというのです。報酬や支援は金額だけでなく、与え方に敬意が伴うかどうかが問われるという考えです。現代の管理職も、部下への評価や指示、支援を、上から目線で行えば反発を招き、有能な人材ほど離れていきます。相手の尊厳を傷つけない与え方が、信頼と働く意欲を支えます。

この章句が説くこと

施し礼義士尊厳無礼与え方

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