武家小学 / 馬術の修行
一先夙に起て手洗ひ。口漱。櫛けづり等。前章のどくして。座席に出。諸士に謁し賓客に應對し。猶閑あらば庭に於て馬をせめ又馬に乘て其修行有るべし。夫馬は士の足也。馬術を熟せざれば軍戰の用に達する事なし。故に古人是を重じたり。又相馬の法は軍戰實川の本意を失べからず。見分美しく目を喜しむるばかりは士の用法にあらず。心得有べし。
新字:一先夙に起て手洗ひ。口漱。櫛けづり等。前章のどくして。座席に出。諸士に謁し賓客に応対し。猶閑あらば庭に於て馬をせめ又馬に乗て其修行有るべし。夫馬は士の足也。馬術を熟せざれば軍戦の用に達する事なし。故に古人是を重じたり。又相馬の法は軍戦実川の本意を失べからず。見分美しく目を喜しむるばかりは士の用法にあらず。心得有べし。
書き下し
一先夙に起て手洗ひ。口漱。櫛けづり等。前章のどくして。座席に出。諸士に謁し賓客に應對し。猶閑あらば庭に於て馬をせめ又馬に乘て其修行有るべし。夫馬は士の足也。馬術を熟せざれば軍戰の用に達する事なし。故に古人是を重じたり。又相馬の法は軍戰實川の本意を失べからず。見分美しく目を喜しむるばかりは士の用法にあらず。心得有べし。
現代語訳
まず早く起きて、手を洗い、口をすすぎ、髪をとかすなどは、前の章のとおりにして、座席に出て、諸士に会い、客に応対し、なお暇があれば、庭で馬を責めたり、馬に乗ったりして、その修行をしなさい。そもそも馬は武士の足です。馬術に熟達していなければ、戦場での用に立つことはできません。ですから古人はこれを重んじました。また馬の良否を見分ける法は、戦場で実際に役立つという本来の目的を失ってはなりません。見た目が美しく目を楽しませるだけのものは、武士の用いる法ではありません。心得ておきなさい。
解説
この章句が説くこと
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葉隠・聞書第十一夏目舎人(なつめとねり)物語の事。出陣には米を袋に入れて持つべし。肌着はむじなの皮にすべし。虫出来(いでき)ぬものなり。長陣(ながじん)には虫出来て難儀(なんぎ)するものなり。槍合(やりあわ)せの時敵の強弱見様、うつむきて懸かるは黒く見え、強きなり。あふのきて懸かるは白く見え、弱きなり。
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『驢鞍橋』卷上一日去る侍に示して曰く、始めより忙敷中にて坐禅を仕習ふたるが好き也。殊に侍は鯨波の中に用ふる坐禅を仕習はで不叶、鉄鉋をばたばたと打立て、互に鑓先を揃へて、わつわつと云ふて乱れ逢ふ中にて、急度用ひて爰で使ふ事也。なにと静なる処を好む坐禅が、加様の処にて使はれんや。総して侍はなにと好き仏法なりと云ふとも、ときの声の内にて用に立たぬ事ならは、捨たがよき也。然る間常住二王心を守習ふ外なし。扨初心の者二王心の外にて、万事の上に使ふ事成るへからず。
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孫子・虚実篇孫子曰く、凡そ先に戦地に処して敵を待つ者は佚く、後に戦地に処して戦いに趨く者は労す。
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『春秋左氏伝』成公十六年 再び国君を辱めず郤至三たび楚子の卒に遇ふ。楚子を見れば必ず下り、冑を免ぎて趨ること風のごとし。楚子工尹襄をして之に問ふに弓を以ってせしめて曰く、「事の殷なるに方りて、韎韋の跗注有る者は、君子なり。不穀を識見して趨る、乃ち傷つくこと無からんや」と。郤至客に見え、冑を免ぎて命を承けて曰く、「君の外臣至、寡君の戎事に從ひ、君の靈を以って、間ま甲冑を蒙る。敢へて命を拜せず。敢へて寧からざるを告ぐ、君命の辱きに。事の為の故に、敢へて使者に肅す」と。三たび使者に肅して退く。晉の韓厥鄭伯に從ふ。其の御杜溷羅曰く、「速かに之に從へ。其の御屢しば顧みて、馬に在らず。及ぶ可きなり」と。韓厥曰く、「以って再び國君を辱しむ可からず」と。乃ち止む。郤至鄭伯に從ふ。其の右茀翰胡曰く、「諜して之を輅へん。余之に從ひて乘り、俘にして以って下らん」と。郤至曰く、「國君を傷つくれば刑有り」と。亦た止む。石首曰く、「衞の懿公唯だ其の旗を去らず、是を以って熒に敗る」と。乃ち旌を弢中に內る。唐苟石首に謂ひて曰く、「子は君の側に在り。敗者は壹に大なり。我子に如かず。子は君を以って免れよ。我請ふ止まらん」と。乃ち死す。
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『武家小学』・武芸の稽古と武器一暇の日とても食は速なるべし。辰の上刻を朝飯の時とす。食終て手洗ひ。口漱て後。劔術或は弓射の禮或は鳥銃又は槍術柔術等の武藝常ゝ稽古あるべし。皆是手足をならし躰をこなし。骨節をためきたひ進退を正しくするの法也。故に師の方へ行。又は師匠を招請して其稽古おこたる事なかれ。怠る時は手足不自由にして。骨節相應ぜず。身輕からず。體馴ずして士の業必欠べし。猶閑有時は書傳を披見て。武義を論じ兵法を講習し。且士の用べき武器の利害を試むべし。凡武器を全備といへども。收藏をきて常に試し見ざれば。譬ば其役に人を附置ても日用の器物にあらざるゆゑ必怠て朽腐すべし。或は外は好して內蠹損る事あり。故に古の武將勇士は何れも賓客有時は座佑に武器を粧飾て。武功の人々に其用を尋。其利を問て。利害を詳にして或は用或は捨て。其器の實用を盡せり。士の志如此なれば一筋に武の道に志立て。氣外へ移らず。心放逸にして邪侈の意發る所なし。孟子に人常の產無ときは常の心なしといへり。去ば士農工商の四民共に。家々の產業おこたらず勤べき事なり。况士として武家の業を懈怠すべからず。

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