武家家訓集 / 武田信繁家訓九十九箇条第79〜81条
一鵜鷹逍遙之事、不可餘酖、妨諸隙不奉公之基也、語云、終日走紅塵、不識自家珍、 一諸事見物之時、忘自他不可油斷事、語曰、識取鉤頭意、莫忍定盤星、 一對下人寒熱風雨之時、可憐愍事、語曰、使民以時、
新字:一鵜鷹逍遥之事、不可余酖、妨諸隙不奉公之基也、語云、終日走紅塵、不識自家珍、 一諸事見物之時、忘自他不可油断事、語曰、識取鉤頭意、莫忍定盤星、 一対下人寒熱風雨之時、可憐愍事、語曰、使民以時、
書き下し
一、鵜鷹逍遙の事、余りに酖るべからず、諸隙を妨げ、奉公せざるの基なり。語に云く、「終日紅塵に走り、自家の珍を識らず」と。 一、諸事見物の時、自他を忘れ油断すべからざる事。語に曰く、「鉤頭の意を識取せよ、定盤星を認むること莫かれ」と。 一、下人に対し、寒熱風雨の時、憐愍すべき事。語に曰く、「民を使うに時を以てす」と。
現代語訳
第一に、鵜飼いや鷹狩りの遊びに、あまり耽ってはなりません。さまざまな隙を妨げ、奉公しなくなる元となります。「一日中、世俗の塵の中を走り回りながら、自分の中の宝に気づかない」と云います。第二に、何事も見物するときは、自分と他人を忘れて油断してはなりません。「竿の先の鉤の意を汲み取れ、はかりの目盛りの星だけを見るな」と云います。第三に、下の者に対しては、寒さ暑さ、風雨のときに、思いやりをかけるべきです。論語に「民を使うには時を選ぶ」とあります。
解説
最初の条は、鵜飼いや鷹狩りの遊びに耽ると、奉公の隙を奪うという戒めです。趣味そのものでなく、本務を妨げる度合いが問題とされています。二番目は、見物のときにも気を抜くなという条で、物事の表面でなく本質を汲み取れという禅語が添えられます。三番目は、寒暑風雨のときに下の者へ憐愍をかけよという条で、論語の「民を使うに時を以てす」が根拠です。現代では、副業や趣味と本業の配分、研修や視察での学びの質、そして過酷な環境で働く人への配慮が、組織運営の具体的な課題として重なります。
この章句が説くこと
本業への集中遊びの節度観察眼部下への配慮論語武家家訓集
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