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武家家訓集 / 武田信繁家訓九十九箇条第61〜63条

一貴賤共不可慢老者事、古語云、敬老如父母、 一出働時、食物服夜中、自陣屋唯今合敵樣出立、打歸迄少不可油斷事、云、無爲爲城、油斷爲敵、 一不可近付無行義人之事、史記云、不知其人視其友、又云、人唯馴賢、莫獨賤、花中之鶯舌者不華香、

新字:一貴賤共不可慢老者事、古語云、敬老如父母、 一出働時、食物服夜中、自陣屋唯今合敵様出立、打帰迄少不可油断事、云、無為為城、油断為敵、 一不可近付無行義人之事、史記云、不知其人視其友、又云、人唯馴賢、莫独賤、花中之鶯舌者不華香、

書き下し

一、貴賤共に老者を慢るべからざる事。古語に云く、「老を敬うこと父母の如し」と。 一、出働の時、食物服夜中、陣屋より唯今敵に合う様に出立し、打ち帰るまで少しも油断すべからざる事。云く、「無為を城と為し、油断を敵と為す」と。 一、行義無き人を近付くべからざるの事。史記に云く、「其の人を知らざれば其の友を視よ」。又云く、「人は唯賢に馴れ、独り賤しむこと莫かれ」。花中の鶯舌は華香ならざる者なり。

現代語訳

第一に、身分の上下を問わず、年老いた者を軽んじてはなりません。古語に「老人を敬うことは父母に対するようにせよ」とあります。第二に、出陣して働くときは、食事も衣服も夜の間から、陣屋をいま敵に出会うつもりで出発し、帰り着くまで少しも油断してはなりません。「何もしないことを城とし、油断を敵とする」と云います。第三に、行儀の悪い人を近づけてはなりません。史記に「その人を知らなければ、その友を見よ」とあり、また「人はただ賢い者に親しみ、独りで見下してはならない」とあります。花の中の鶯の声は、花の香りとは別のものだ、という句が添えられています(意味は取りにくい箇所です)。

解説

最初は、年長者を身分に関係なく敬えという条です。長く生きた者の経験を軽んじるな、という趣旨は、世代交代期の組織にも通じます。二つ目は、出陣から帰陣まで常に敵に会うつもりで構えよと説き、「油断を敵と為す」と言い切ります。三つ目は、行儀の悪い人を近づけない、友を見れば人がわかるという史記の句を引く条です。末尾の鶯の句は意味が取りにくく、ここでは訳を保留しています。現代の仕事でも、ベテランへの敬意、安全な状況でこその緊張、付き合う相手の選び方が、組織の質を決めます。

この章句が説くこと

敬老油断交友史記世代交代武家家訓集

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