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武人訓抄録 / 禮は難しとせず易し

一禮は天理の節文人事の儀則也、故にいはく人禮あればやすし、禮なければあやうし、內に克己の儀あり、外に擧動の則あり、內に克己の儀なければ心の靈を損ひ、外に擧動の則なければ身の業を失ふ、是を以て君主に事れば不忠、父母に使れば不孝、兄弟に配すれば不睦、妻子に合ふに不別、朋友に交るに不信、抑人の禽獸に異なる所以は禮あればなり、禮なくんば何をもつてか禽獸とわかたんや、夫禮は自他行ひ難しとすれど、事毎に其理に隨ふゆへに還て易し、譬へば平地を行がごとし、小子是を難しとして怠る事なかれ、

新字:一礼は天理の節文人事の儀則也、故にいはく人礼あればやすし、礼なければあやうし、内に克己の儀あり、外に挙動の則あり、内に克己の儀なければ心の霊を損ひ、外に挙動の則なければ身の業を失ふ、是を以て君主に事れば不忠、父母に使れば不孝、兄弟に配すれば不睦、妻子に合ふに不別、朋友に交るに不信、抑人の禽獣に異なる所以は礼あればなり、礼なくんば何をもつてか禽獣とわかたんや、夫礼は自他行ひ難しとすれど、事毎に其理に随ふゆへに還て易し、譬へば平地を行がごとし、小子是を難しとして怠る事なかれ、

書き下し

一禮は天理の節文人事の儀則也、故にいはく人禮あればやすし、禮なければあやうし、內に克己の儀あり、外に擧動の則あり、內に克己の儀なければ心の靈を損ひ、外に擧動の則なければ身の業を失ふ、是を以て君主に事れば不忠、父母に使れば不孝、兄弟に配すれば不睦、妻子に合ふに不別、朋友に交るに不信、抑人の禽獸に異なる所以は禮あればなり、禮なくんば何をもつてか禽獸とわかたんや、夫禮は自他行ひ難しとすれど、事毎に其理に隨ふゆへに還て易し、譬へば平地を行がごとし、小子是を難しとして怠る事なかれ、

現代語訳

礼は天理の節目と文、人事の儀則です。ですから、人は礼があれば安らかで、礼がなければ危ういと言います。内には己に克つ作法があり、外には振る舞いの規則があります。内に己に克つ作法がなければ心の霊を損ない、外に振る舞いの規則がなければ身の業を失います。このため、君主に仕えれば不忠となり、父母に仕えられれば不孝となり、兄弟と並べば不睦となり、妻子に合えば別がなくなり、朋友と交われば不信となります。そもそも人が禽獣と異なる理由は礼があるからです。礼がなければ、何をもって禽獣と分けられるでしょうか。礼は自分にも他人にも行いがたいと思われがちですが、事ごとにその理に従うため、かえって易しいのです。たとえば平らな地を行くようなものです。わが門の小子は、これを難しいとして怠ってはなりません。

解説

礼を天理の節目、人事の儀則として、内には克己の作法、外には振る舞いの規則があると説く章です。礼を欠けば、君臣・親子・兄弟・夫婦・朋友のあらゆる関係が崩れ、人が禽獣と分かれる根拠さえ失うとまで言います。一方で、理に従うゆえにかえって易しいという逆説も添えています。現代の職場でも、挨拶や言葉遣い、約束の守り方といった小さな型が、信頼の土台です。管理職は、型を堅苦しいものとせず、判断を軽くする平らな道として、まず自ら守ることから始めたいものです。

この章句が説くこと

礼克己儀則人倫五倫振る舞い

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