武藝訓抄録 / 将の智・信・勇と武藝の虚実
武藝の虚實を辨る事は、是又和漢の軍理を以推べし、軍理に不叶武術は皆席の上にて拵たるもの也、されば將たる人此虚實を分別なきは智明なしと謂べし、將は唯智を以先とす、又虚と知ながら耳目の慾に迷ひ其虚を喜ぶ時は、其家皆虚を傳へて武を取失ふべし、是信勇なきなり、將智なき時は三軍惑ふ、信なき時は三軍疑ひて心を決せず、勇なければ三軍怖れず、皆是軍の行れざる處なり、さて將の任たる人、常に仁德をおさめて、兵法武藝の虚實精粗を斟酌、諸士に是を敎へらるべし、諸士は自の心に愧て、名聞を致すべからず、
新字:武芸の虚実を弁る事は、是又和漢の軍理を以推べし、軍理に不叶武術は皆席の上にて拵たるもの也、されば将たる人此虚実を分別なきは智明なしと謂べし、将は唯智を以先とす、又虚と知ながら耳目の慾に迷ひ其虚を喜ぶ時は、其家皆虚を伝へて武を取失ふべし、是信勇なきなり、将智なき時は三軍惑ふ、信なき時は三軍疑ひて心を決せず、勇なければ三軍怖れず、皆是軍の行れざる処なり、さて将の任たる人、常に仁徳をおさめて、兵法武芸の虚実精粗を斟酌、諸士に是を教へらるべし、諸士は自の心に愧て、名聞を致すべからず、
書き下し
武藝の虚實を辨る事は、是又和漢の軍理を以推べし、軍理に不叶武術は皆席の上にて拵たるもの也、されば將たる人此虚實を分別なきは智明なしと謂べし、將は唯智を以先とす、又虚と知ながら耳目の慾に迷ひ其虚を喜ぶ時は、其家皆虚を傳へて武を取失ふべし、是信勇なきなり、將智なき時は三軍惑ふ、信なき時は三軍疑ひて心を決せず、勇なければ三軍怖れず、皆是軍の行れざる處なり、さて將の任たる人、常に仁德をおさめて、兵法武藝の虚實精粗を斟酌、諸士に是を敎へらるべし、諸士は自の心に愧て、名聞を致すべからず、
現代語訳
武藝の虚実を見分けることは、これもまた和漢の軍理によって推し量るべきです。軍理にかなわない武術は、みな席の上で作り上げたものです。したがって、将たる人がこの虚実の分別を持たないのは、智が明らかでないというべきです。将はただ智を先とします。また、虚と知りながら耳目の欲に迷い、その虚を喜ぶときは、その家はみな虚を伝えて、武を取り失うでしょう。これは信と勇がないということです。将に智がないとき、三軍は惑います。信がないとき、三軍は疑って心を決められません。勇がなければ、三軍は恐れません。いずれも、軍が行われないところです。さて、将の任にある人は、常に仁徳を修め、兵法武藝の虚実や精粗をよく考えて、諸士にこれを教えなさい。諸士は自分の心に恥じて、名聞を求めてはなりません。
解説
この章句が説くこと
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『武訓』下・第3段武に本末あり。知仁勇の德は本なり。武德なければ、武の道立たず。弓馬刀鎗の類のわざは藝なり。末なり。武藝なければ、敵と戰ひがたし。夫、知仁勇の三德は、大將、士卒、皆、たつとぶべし。知なくしては、兵を用ひがたし。仁なければ、士卒そむきてしたがはず。忠孝を行はず、義理にそむき、敵をたひらげて、民をやすんずるとなし。利欲によつて亂をおこし、かへつて、害となる。勇なければ、仁義忠孝のはげみなく、敵をうちたひらぐるにちからなし。故に、知仁の道も、勇なければ、行はれず。凡、此の三の者は、武の德なれば、一もかけぬれば、武の道立たず。又、弓馬刀鎗の藝をしらざれば、德ありても、戰にのぞみて、敵にかつことかたし。故に、兵を用ふるには、大將も、士卒も、武藝をしらずんばあるべからず。但大將は、藝に專なるべからず。本を本とし、末を末とすべし。
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『文武訓』武訓上一将をえらぶには、智を先とし勇を後とす。智なければ、勇ありても謀なく、思案なくして兵の道にくらし。勇あるをたのんで過多し。かくのごとくなる将はやぶれやすし。良将にあらず。良将は智ふかく、又勇もありて、敵をはかり身方をかへりみ、事に臨んでおそれ、謀を好んで事をなす。故に敗れがたし。
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