武藝訓抄録 / 偽りの兵書を見破る眼
先兵法を以是をいはゞ、武田流の武書を以正成義貞の兵書を僞作し、略仁言を雜へて人心を攬、衆をして傾しむるものあり、必ず察すべし、是人を欺くの賊なり、故に人聖賢の學を的とし智を開き忠信を主として斯のごときの邪佞を辨ずべし、大神君も國政は三河の舊例に隨ふべし、軍法は武田の遺法を用べしと宣ひし事、普く天下の人口にあり、今世甲陽軍鑑之外に武書を言ものは皆妄談なるべし、其外の伎藝に攻戰の道に不叶して、人の耳目を喜しむるを以、武術とするもの有、必其眞僞に眼をつくべし、
新字:先兵法を以是をいはゞ、武田流の武書を以正成義貞の兵書を偽作し、略仁言を雑へて人心を攬、衆をして傾しむるものあり、必ず察すべし、是人を欺くの賊なり、故に人聖賢の学を的とし智を開き忠信を主として斯のごときの邪佞を弁ずべし、大神君も国政は三河の旧例に随ふべし、軍法は武田の遺法を用べしと宣ひし事、普く天下の人口にあり、今世甲陽軍鑑之外に武書を言ものは皆妄談なるべし、其外の伎芸に攻戦の道に不叶して、人の耳目を喜しむるを以、武術とするもの有、必其真偽に眼をつくべし、
書き下し
先兵法を以是をいはゞ、武田流の武書を以正成義貞の兵書を僞作し、略仁言を雜へて人心を攬、衆をして傾しむるものあり、必ず察すべし、是人を欺くの賊なり、故に人聖賢の學を的とし智を開き忠信を主として斯のごときの邪佞を辨ずべし、大神君も國政は三河の舊例に隨ふべし、軍法は武田の遺法を用べしと宣ひし事、普く天下の人口にあり、今世甲陽軍鑑之外に武書を言ものは皆妄談なるべし、其外の伎藝に攻戰の道に不叶して、人の耳目を喜しむるを以、武術とするもの有、必其眞僞に眼をつくべし、
現代語訳
まず兵法で言えば、武田流の兵書によって、正成・義貞(楠木正成・新田義貞)の兵書を偽って作り、ところどころ仁の言葉を混ぜて人心をつかみ、大勢を傾かせる者がいます。必ず見抜かなければなりません。これは人を欺く賊です。したがって、人は聖賢の学を目標とし、智を開き、忠信を主として、このような邪佞を見分けるべきです。大神君も、国政は三河の旧例に従うべきであり、軍法は武田の遺法を用いるべきだと仰せになったことが、広く世の人の口にのぼっています。今の世で、甲陽軍鑑のほかに武書を語る者は、みな妄談でしょう。そのほかの技藝でも、攻め戦う道にかなわず、人の耳目を楽しませるだけのものを武術とする者がいます。必ずその真偽に目をつけなさい。
解説
この章句が説くこと
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