武治提要 / 大治・第2段
大治の本、必勝の武備にあり。必勝の武備、百歲の久を經るといへども、其新なること嚴然として今砥を出たる靈劔のごとし。紫電雲を裂、淸霜肌にしむ、侵すべからず、中るべからざるを、天下の士皆甘心す。故に往古の讎敵たるものといへども、手を拱て心服す。風化の極、大治を以て功の終とす。其義深哉、熟哉。
新字:大治の本、必勝の武備にあり。必勝の武備、百歳の久を経るといへども、其新なること厳然として今砥を出たる霊剣のごとし。紫電雲を裂、清霜肌にしむ、侵すべからず、中るべからざるを、天下の士皆甘心す。故に往古の讎敵たるものといへども、手を拱て心服す。風化の極、大治を以て功の終とす。其義深哉、熟哉。
書き下し
大治の本、必勝の武備にあり。必勝の武備、百歲の久を經るといへども、其新なること嚴然として今砥を出たる靈劔のごとし。紫電雲を裂、淸霜肌にしむ、侵すべからず、中るべからざるを、天下の士皆甘心す。故に往古の讎敵たるものといへども、手を拱て心服す。風化の極、大治を以て功の終とす。其義深哉、熟哉。
現代語訳
大治の本は、必勝の武備にあります。必勝の武備は、百年の久しきを経ても、その新しいことは厳然として、いま砥石から出たばかりの霊剣のようです。紫の稲妻が雲を裂き、清らかな霜が肌にしみるように、侵すことができず、当たることができないその様を、天下の士はみな心から喜び服します。だから、昔の仇敵であった者でさえ、手を拱いて心から従います。風化の極みは、大治をもって功の終わりとします。その意義は深く、熟しているものです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『武治提要』大治・第1段天下國家、三綱五倫の泯絕する者は、亂世といへども、吾 中華殆稀なり。春秋左氏のごとき、いまだ聖世を去こと遠からずして、かくのごとく悖亂暴逆の甚きことは、本朝古よりいまだこれをきかず。武國の貴こと、爰に於て以て見つべし。故に三綱立、五倫明なるを大治と稱するは、蓋し外國の稱なり。武國の治たとへ不德の將上にありといへども、如此ものは企て望つべし。大凡武は刃に血ぬらずして、敵を制するを極功とす。爭て勝ものは、其下れるもの也。故に戰はやむことを得ずして戰ふ。やむことを得ずして戰がゆへに、必勝の武備あり。今旣に天下敵なし、必勝の武備ありといへども、これを懷にして、常に用ゆることあらす。これ所謂武門の大治なり。若必勝の武備無して、天下無敵は、無敵の實にあらず、僥倖のみ。
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『武治提要』風化・第1段天下國家、其風武德に化するにあらざるときは、武治の極功に至り難し。一旦一夕にしてこれをなすべからず。德を積こと久して、竟に化すべし。凡天下の士、始には令に從て勉强すといへども、熟すること久して常のならはしとなるときは、これを以て安しとなす。令命を待ことあらずして以てこれをなすに至る。風化の實甚以て重し。武將治平の標的此間にあり。
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『武治提要』武智・第2段武智を修するの要、勝負の情を知にあり。勝とは能事物を制するなり、負とは事物の爲に制せらるゝなり。凡吾に對するもの天地人物にして、其間唯人を制するを重とす。人に內外の躰あり、外を制することは易して、內を制することは難し。內外ともに能制して、吾に對揚せしめざるこれ勝利の實也。武門の武門たる所以他なし、只この勝負あるを以て也。其智積累すること久しきときは、內に感通の主たるものを生ず。貯ること多く、積こと久しきときは、其主たるものます〱圓滿にして、武道武事の大小精粗感通知識せずと云ことなし。用て盡ることなく、取て窮りなし。其至れるに及ては、天地とともに長く、鬼神と變化を同くす。これ武智の全成なり。
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