武治提要 / 武智・第2段
武智を修するの要、勝負の情を知にあり。勝とは能事物を制するなり、負とは事物の爲に制せらるゝなり。凡吾に對するもの天地人物にして、其間唯人を制するを重とす。人に內外の躰あり、外を制することは易して、內を制することは難し。內外ともに能制して、吾に對揚せしめざるこれ勝利の實也。武門の武門たる所以他なし、只この勝負あるを以て也。其智積累すること久しきときは、內に感通の主たるものを生ず。貯ること多く、積こと久しきときは、其主たるものます〱圓滿にして、武道武事の大小精粗感通知識せずと云ことなし。用て盡ることなく、取て窮りなし。其至れるに及ては、天地とともに長く、鬼神と變化を同くす。これ武智の全成なり。
新字:武智を修するの要、勝負の情を知にあり。勝とは能事物を制するなり、負とは事物の為に制せらるゝなり。凡吾に対するもの天地人物にして、其間唯人を制するを重とす。人に内外の体あり、外を制することは易して、内を制することは難し。内外ともに能制して、吾に対揚せしめざるこれ勝利の実也。武門の武門たる所以他なし、只この勝負あるを以て也。其智積累すること久しきときは、内に感通の主たるものを生ず。貯ること多く、積こと久しきときは、其主たるものます〱円満にして、武道武事の大小精粗感通知識せずと云ことなし。用て尽ることなく、取て窮りなし。其至れるに及ては、天地とともに長く、鬼神と変化を同くす。これ武智の全成なり。
書き下し
武智を修するの要、勝負の情を知にあり。勝とは能事物を制するなり、負とは事物の爲に制せらるゝなり。凡吾に對するもの天地人物にして、其間唯人を制するを重とす。人に內外の躰あり、外を制することは易して、內を制することは難し。內外ともに能制して、吾に對揚せしめざるこれ勝利の實也。武門の武門たる所以他なし、只この勝負あるを以て也。其智積累すること久しきときは、內に感通の主たるものを生ず。貯ること多く、積こと久しきときは、其主たるものます〱圓滿にして、武道武事の大小精粗感通知識せずと云ことなし。用て盡ることなく、取て窮りなし。其至れるに及ては、天地とともに長く、鬼神と變化を同くす。これ武智の全成なり。
現代語訳
武智を修める要は、勝負の情を知ることにある。勝とはよく事物を制すること、負とは事物のために制せられることである。およそ自分に対するものは天地人物であるが、その間でただ人を制することを重しとする。人には内と外の体があり、外を制することは易しく、内を制することは難しい。内外ともによく制して、自分に逆らわせない、これが勝利の実である。武門が武門たる所以は他でもなく、ただこの勝負があるからである。その智を積み重ねることが久しければ、内に感通の主となるものが生まれる。貯えること多く積むこと久しければ、その主はますます円満になり、武道・武事の大小精粗について感通し知識しないものはない。用いて尽きることなく、取って窮まることがない。その至るに及んでは、天地とともに長く、鬼神と変化を同じくする。これが武智の全成である。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『武治提要』武智・第1段武道武事を明辨して、誤惑することなき、これを武智と云。たとへ古今の史籍に通じ、倭漢の文學を盡すとも、武道にくらきときは、武將の智と稱するにたらず。凡智は情意の用にして、才は智の用なり。古を學て多く知は智也。內に積てこれを外に推及し、今日の武道に能用て其變化に應ずるは、才なり。
-
『武治提要』武事・第1段武事は武道の事物、武家の職業なり。其差等種類甚多し。武門の應接悉く武事に非ずと云ことなし。武事を知に至て、其智致り、其義なる。武學の智を養こと、其かゝる處尤重し。凡武事の品類甚多しといへども、其綱領は又多端に亘るべからず。或は有道に就てたゞすべきものあり、或は先進の言を待べからざるものあり。只能やむことなきの道を以てやむことなきの則を致るにあり。
-
『武治提要』知人・第13段武將戰國にあつては用間を大義とす。其內反間を知こと、明智にあらずんば叶べからず。治世の人情は伏すること密ならず、故に知こと猶易し、たとへ見料を一たびあやまつとも、あらたむべし。反間は伏する處幽微婉曲にして、一たびもあやまつときは、あらたむること不叶、死生存亡の要楔なり。これを明辨すること、感通默識にあり。
-
『武治提要』武智・第4段武德は武智の躰にして、智は德の用なり。躰用互に根ざして、間隔することあらず。德は智に因て發し、智は德に因て其根蒂を堅くす。
-
『武治提要』知人・第1段武德を天下に敷の道、人を知を第一とす。天下萬機の事物、これを治むること實に難して、其本唯三五人を知て擧用ゆるにあるのみ。然らば乃天下の治甚難して、又甚易にあらずや。武將の心を用ゆること此一件を深重也とす。
-
『武治提要』知人・第2段武將は只人を知を以て才智の樞要とす。たとへ博覽宏才にして古今の事迹を記するとも、今日人を知こと的切ならずんば、有智の將となすにたらず。凡萬物高にあつて、ひきゝをのぞむときは、見ること易し。只人のみこれに反す。故に君よりして臣は明に見へがたく、君の是非は見ること易し。其故何ぞや。君の應接する處廣して、臣の應接する處狹し。君は一人にして、下は億兆なり。億兆の耳目を以て一人を仰見る、猶巖々たる南山のごとし。君は一人の耳目を以て億兆の人を見る、其得失かくのごとし。故に將の下を見ること、容易にして得べからず。
人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見る