武治提要 / 風化・第2段
武將寬仁大度の器あらざるときは、風化をなすべからず。或は功の速ならんことを欲し、或は數ゞ利害に動ときは、大成を得べからず。寬仁なるときは荏苒の功を喜て、捷徑を必とせず。故に自ら疆て怠馳せず。大度なるときは、小利を取小害をさくるに心なし。爰を以て竟に風化をなすべし。所謂小利小害とは一身の勞佚にして事物の大小を云にあらず。たとへ其事物小なりとも、天下國家の安危に屬するものは、大利大害なり。これを詳にすること、武智の明察にあり。武治の風化と云は、治敎久して后、後進は先進の爲に化し、兒孫は父祖の風に浴し、嚴令を待こと無して、天下の士悉く正義を貴て、邪義をにくみ、勇剛を欲して、儒弱をいとる、事物の淸素をよしとして、花奢を嫌ふに至る、これなり。
新字:武将寛仁大度の器あらざるときは、風化をなすべからず。或は功の速ならんことを欲し、或は数ゞ利害に動ときは、大成を得べからず。寛仁なるときは荏苒の功を喜て、捷径を必とせず。故に自ら疆て怠馳せず。大度なるときは、小利を取小害をさくるに心なし。爰を以て竟に風化をなすべし。所謂小利小害とは一身の労佚にして事物の大小を云にあらず。たとへ其事物小なりとも、天下国家の安危に属するものは、大利大害なり。これを詳にすること、武智の明察にあり。武治の風化と云は、治教久して后、後進は先進の為に化し、児孫は父祖の風に浴し、厳令を待こと無して、天下の士悉く正義を貴て、邪義をにくみ、勇剛を欲して、儒弱をいとる、事物の清素をよしとして、花奢を嫌ふに至る、これなり。
書き下し
武將寬仁大度の器あらざるときは、風化をなすべからず。或は功の速ならんことを欲し、或は數ゞ利害に動ときは、大成を得べからず。寬仁なるときは荏苒の功を喜て、捷徑を必とせず。故に自ら疆て怠馳せず。大度なるときは、小利を取小害をさくるに心なし。爰を以て竟に風化をなすべし。所謂小利小害とは一身の勞佚にして事物の大小を云にあらず。たとへ其事物小なりとも、天下國家の安危に屬するものは、大利大害なり。これを詳にすること、武智の明察にあり。武治の風化と云は、治敎久して后、後進は先進の爲に化し、兒孫は父祖の風に浴し、嚴令を待こと無して、天下の士悉く正義を貴て、邪義をにくみ、勇剛を欲して、儒弱をいとる、事物の淸素をよしとして、花奢を嫌ふに至る、これなり。
現代語訳
武将に寛仁大度の器量がなければ、風化を成すことはできません。功を急ごうとしたり、しばしば利害に心が動いたりしては、大成を得られません。寛仁であれば、時間をかけた成果を喜び、近道を必ずよしとはしません。だから自ら強いて励み、怠ることがありません。大度であれば、小利を取り小害を避ける心がありません。それによって、ついに風化を成すことができるのです。ここでいう小利・小害とは、一身の苦労や安楽のことであって、事物の大小を言うのではありません。たとえその事柄が小さくても、天下国家の安危に関わるものは、大利・大害です。これを詳しく見分けることは、武智の明察にあります。武治の風化とは、治め教えて久しくなった後、後進は先進に教化され、子孫は父祖の風に浴し、厳しい令を待たずに、天下の士がみな正義を貴んで邪義を憎み、勇剛を求めて懦弱を嫌い、事物の清素を良しとして華美を嫌うに至ること、これを言うのです。
解説
この章句が説くこと
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