武治提要 / 民政・第3段
民政亦怠惰を戒るを要とす。民間遊手多きものは國の費なり。童子小婦に至るまで、相應の職を命すべし。本朝浮屠を信ずること、世々損益す、尤も遊民の首頭にして、事物の益たること少し、彼本一衣一鉢の淸貧を素意とす、若富ときは稍害あり。竊に案ずるに、浮屠の天下にある、亦武治の一用たり、これ兵法に所謂無用の用なり。
新字:民政亦怠惰を戒るを要とす。民間遊手多きものは国の費なり。童子小婦に至るまで、相応の職を命すべし。本朝浮屠を信ずること、世々損益す、尤も遊民の首頭にして、事物の益たること少し、彼本一衣一鉢の清貧を素意とす、若富ときは稍害あり。窃に案ずるに、浮屠の天下にある、亦武治の一用たり、これ兵法に所謂無用の用なり。
書き下し
民政亦怠惰を戒るを要とす。民間遊手多きものは國の費なり。童子小婦に至るまで、相應の職を命すべし。本朝浮屠を信ずること、世々損益す、尤も遊民の首頭にして、事物の益たること少し、彼本一衣一鉢の淸貧を素意とす、若富ときは稍害あり。竊に案ずるに、浮屠の天下にある、亦武治の一用たり、これ兵法に所謂無用の用なり。
現代語訳
民政では、怠けを戒めることも要点です。民間に遊んでいる者が多いのは、国の損失になります。子どもや女性に至るまで、それぞれに合った仕事を命じるべきです。本朝で仏教を信じることは、時代ごとに盛衰がありましたが、遊民の筆頭であり、事物の上での益は少ないものです。もともと彼らは一枚の衣と一つの鉢で清く貧しく暮らすのが本来の願いで、もし富むようになればやや害があります。ひそかに考えますに、仏教が天下にあることも武治の一つの用であり、兵法でいう「無用の用」です。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『武治提要』民政・第2段本朝の民政、歷代因循して大に審なり。步、畝、町、里、貢、賦、徭役の品少しき損益あるのみ。凡民政は貨財の用を司る。故に淸廉正直の士を撰て、其職となすこと大本なり。而して如此の人多く得難し。其間、正直の士十に一二を擧て、監察の任を置、詳に糺明するときは、其他の中人亦これに化すべし。
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『武治提要』民政・第1段民政は仁政の二に過ることなし。仁以て恩澤を下し、政以て規制を立。爰に至て其政正し。外國往古の民政、本朝の今日に取用ゆべきもの少し。これ四民の名分正しからず、且艸昧墾田の用多く、或は暴君の苛政を戒ること多し、故に其敎多くは仁に過たり。民を治の道仁に過るときは、其弊彼必ず奢侈をなし、法を蔑如す。故に武門民政の大意は、能詳に事物の節制を立て、姑息の恩を下さず、豐年には菜色なく、凶年には餓莩なき、これ仁愛の至れるものなり。四海の民をして、戶々豐に富て、悉く貧苦なからしめんことを說ものは、俗儒の空論にして、民政の實務となすべからず。
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『武治提要』民政・第4段或は山林、河海、都城、塞關、街衢、防堤、鄕里、市鄽、神祉、佛院等の制令のごとき、或は鳥獸、魚鼈、穀鹽、菜菓、材木、薪蒭のごときに至て、皆民政のよる處なり。各其節制あつて、或は民の欲を正して、天物を暴せしめず、或は征賦を出さしめて、其國恩を償はしむるが如き、皆やむことを得ざるの道にして、其詳なること布て方策にあり。
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『武治提要』民政・第8段民間邪法を信じて、黨を結、或は盜賊を業として、人を殺し、或は不孝不弟にして、其父母及兄を蔑如し、或は天下通行の大法を乖戾するものゝごとき、各其罪に應ずるの刑無んばあるべからず。或は小民の女子父母いまだゆるさゞるに嫁し、或は貧民の婦價を得て富家の少年に通ずるごとき、これ皆鄭衛の遺風にして、聖賢の情を以て糺すときは、のがるべからざるの刑人なり。然れども時勢に依て必とすべからざるの罪あり。蓋し如此の品類、用捨の密意なくんばあるべからず。
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『武治提要』民政・第5段饑饉、大疫、洪水のごとき、民政の大變なり。豫め其設あらずんば、大に武德を損するの害に至るべし。武將平日儉德なくんば、爰に至て其禍をまぬかるべからず。
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『武治提要』民政・第7段三民に孝弟篤實の者あるときは、これを稱して表すること、俗を美にするの道にして、武治の善政なり、民間の風俗は只淳朴にして、邪義邪法なく、事物野鄙なるを以て美也とす。伍法を明にして、其俗を正すこと、蓋し仁政の大なるもの也。
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