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武治提要 / 知人・第10段

細を見るに眼鏡あり、遠を見るに遠眼鏡あり。監察は武將のめがねなり、眼鏡あしければ、正しきもの却て邪曲の形をなし、明なるもの却てくらし、又眼鏡よしといへども、人目くらきときは遠微をあやまつ、監察の將に於ること恰もこれに似たり。故に監察の士は正直にして貞信なるを用ゆるにあり。不僞不飾、己意を以て可否の評意をつけず、耳目にふるゝ處の事物を有のまゝに記して上ること、監察の主用なり。

新字:細を見るに眼鏡あり、遠を見るに遠眼鏡あり。監察は武将のめがねなり、眼鏡あしければ、正しきもの却て邪曲の形をなし、明なるもの却てくらし、又眼鏡よしといへども、人目くらきときは遠微をあやまつ、監察の将に於ること恰もこれに似たり。故に監察の士は正直にして貞信なるを用ゆるにあり。不偽不飾、己意を以て可否の評意をつけず、耳目にふるゝ処の事物を有のまゝに記して上ること、監察の主用なり。

書き下し

細を見るに眼鏡あり、遠を見るに遠眼鏡あり。監察は武將のめがねなり、眼鏡あしければ、正しきもの却て邪曲の形をなし、明なるもの却てくらし、又眼鏡よしといへども、人目くらきときは遠微をあやまつ、監察の將に於ること恰もこれに似たり。故に監察の士は正直にして貞信なるを用ゆるにあり。不僞不飾、己意を以て可否の評意をつけず、耳目にふるゝ處の事物を有のまゝに記して上ること、監察の主用なり。

現代語訳

細かいものを見るには眼鏡があり、遠くを見るには遠眼鏡がある。監察は武将のめがねである。眼鏡が悪ければ、正しいものがかえって曲がった形に見え、明らかなものがかえって暗く見える。また、眼鏡が良くても、人の目が暗いときは遠い物や微かな物を見誤る。監察と将との関係は、ちょうどこれに似ている。だから監察の士は、正直で貞信な者を用いることが大切である。偽らず飾らず、自分の意見で可否の評をつけず、耳目に触れた事物をありのままに記して上げることが、監察の主な務めである。

解説

眼鏡と遠眼鏡のたとえで、監察は将の目を助ける道具だと説く段です。道具が悪ければ見え方が歪み、使う側の目が暗ければ良い道具でも役に立たない、と二つの面を並べているのが特徴です。そのうえで、監察に求めるのは才気より正直さと誠実さであり、自分の判断を混ぜずに見たまま記すことだと言います。いまの組織でも、現場の状況を報告する人の姿勢が正確さを左右します。報告者が上司の好みに合わせて話を整えたり、自分の評価を混ぜたりすれば、経営判断は歪みます。事実と意見を分けて伝える習慣は、報告を受ける側にも求められます。

この章句が説くこと

監察正直事実報告めがね情報

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