武治提要 / 修身・第3段
言辭は內德を外に發するの道にして、其用重し。而して武將の言行は、只やむことなき自然の則を用ゆるにあり。口舌辭氣をたくみにして、文華婉曲を志ものは、辨士の業なり。勤て心を禮讓の容態に用ゆるものは、官者の事なり。武將の言辭は、易簡にして、條理の明なるにあるのみ。禮讓威儀の容態は、やむことを得ざるの則を用ゆるのみ。若文飾に志あるものは、內に柔弱の病あるがゆへなり。五倫の交接事物の應用は、行の大なるものにして、其敎齊家に屬せり。
新字:言辞は内徳を外に発するの道にして、其用重し。而して武将の言行は、只やむことなき自然の則を用ゆるにあり。口舌辞気をたくみにして、文華婉曲を志ものは、弁士の業なり。勤て心を礼譲の容態に用ゆるものは、官者の事なり。武将の言辞は、易簡にして、条理の明なるにあるのみ。礼譲威儀の容態は、やむことを得ざるの則を用ゆるのみ。若文飾に志あるものは、内に柔弱の病あるがゆへなり。五倫の交接事物の応用は、行の大なるものにして、其教斉家に属せり。
書き下し
言辭は內德を外に發するの道にして、其用重し。而して武將の言行は、只やむことなき自然の則を用ゆるにあり。口舌辭氣をたくみにして、文華婉曲を志ものは、辨士の業なり。勤て心を禮讓の容態に用ゆるものは、官者の事なり。武將の言辭は、易簡にして、條理の明なるにあるのみ。禮讓威儀の容態は、やむことを得ざるの則を用ゆるのみ。若文飾に志あるものは、內に柔弱の病あるがゆへなり。五倫の交接事物の應用は、行の大なるものにして、其敎齊家に屬せり。
現代語訳
言葉は、内なる徳を外へ発する道であり、その働きは重いものです。そして武将の言行は、ただやむを得ない自然の則を用いることにあります。口先や言いまわしを巧みにして、文飾や婉曲さを志す者は、弁舌の士の仕事です。つとめて心を礼や謙譲の振る舞いに用いる者は、官に仕える者の務めです。武将の言葉は、簡潔で、筋道が明らかであるだけです。礼譲や威儀の振る舞いは、やむを得ない則を用いるにとどまります。もし飾ることに志があるならば、内に軟弱の病があるからです。五倫の交わりや事物への応じ方は、行いの大きなものであり、その教えは斉家に属します。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『武治提要』風化・第3段凡文質彬々たるは、君子の德容にして、外國の聖世といへども、天下皆彬々たることを得べからず。若彬々たることを欲して、これを令せば、天下皆花麗を俗となすに至るべし。凡質朴にして、稍禮容に疎なるは、武國武門の俗なり。これを措て或は禮容の盛んならんことを欲じ、或は事物に文章の美あらんことを期するものは、武德廢弛の機なり。つゝしまずんばあるべからず。
-
『武治提要』修身・第1段武將武治を天下に敷の先務、脩身にあり。脩は治也、條理あつて綱目明に、不正の言行あらざる、是を修身と云也。武將の天下にあること、太陽の天にかゝるが如し。深閨の密事、別殿の戲遊のごときも、泄て傳はらずと云ことなし。若下正懦弱の言行あるときは、天下の士ひそかにこれをあなどる。あなどるときは、武威これより傾廢す。故に武將の天下にあること、重を負て春氷を渡がごとし。脩身の用重かな、深かな。
-
『武治提要』修身・第2段人身の用、言行心の三に過ることなし。武將の脩身其つゝしむ處、怠惰柔弱あらざるにあり。其綱此三のものにして、其間心行を以て本とし、行を主とす。
-
『武治提要』齊家・第3段宮室、衣服、食物、及日用の器物、皆これ齊家の用なり。武門の事物皆易簡清素を要とす。禮なりと云て、文章を事とするものは、武門の要旨を失するの端なり。瓊矛の神武其威衰て、王朝德の廢せるものは、蓋し外國の禮をうつし玉へるに權輿せる歟。武門に於て深く不可不愼。況や後宮に寵姬多く、或は歌臺に宴遊の淫行を盛にするをや。武門に如此の佚樂あるものは、其禍、衆蝗の春田に滿るに超たり。英操の發せんとするもの、これが爲にくじく。最懼るべきの甚しきなり。
-
『武治提要』武德・第3段凡武德の用は、武將勉强して法令を嚴にするにあらざれども、自ら嚴重にして、これを乖戾するものなく、恩賞を常に下すにあらざれども、群士進で其朝につかえんとを求め、怒らずといへども、人々をそれをのゝくと斧鉞のごとき、これ武德の外に行はるゝの象なり。人の畏服すると如此ならんは、いかなる道、いかなる法によるべきぞとならば、其太本武將の身上に武を厚く體認し玉ふにあり。武を好と色を好がごとく、常に用ゆると飮食のごとく、尊信すると鬼神のごとく、重んずると泰山のごとくすると、これ武を以て吾を脩るの先務にして、武德を四海に敷べきの根源なり。凡外に及ものは必內に根ざすと、萬物の情也。故に內にある處の根基小微なるときは、外に發する處亦從て遠大ならず。
-
『武治提要』武事・第1段武事は武道の事物、武家の職業なり。其差等種類甚多し。武門の應接悉く武事に非ずと云ことなし。武事を知に至て、其智致り、其義なる。武學の智を養こと、其かゝる處尤重し。凡武事の品類甚多しといへども、其綱領は又多端に亘るべからず。或は有道に就てたゞすべきものあり、或は先進の言を待べからざるものあり。只能やむことなきの道を以てやむことなきの則を致るにあり。
人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見る