武治提要 / 修身・第2段
人身の用、言行心の三に過ることなし。武將の脩身其つゝしむ處、怠惰柔弱あらざるにあり。其綱此三のものにして、其間心行を以て本とし、行を主とす。
新字:人身の用、言行心の三に過ることなし。武将の脩身其つゝしむ処、怠惰柔弱あらざるにあり。其綱此三のものにして、其間心行を以て本とし、行を主とす。
書き下し
人身の用、言行心の三に過ることなし。武將の脩身其つゝしむ處、怠惰柔弱あらざるにあり。其綱此三のものにして、其間心行を以て本とし、行を主とす。
現代語訳
人の身の働きは、言・行・心の三つを出ません。武将の修身で慎むべきところは、怠惰と軟弱がないことです。その綱は、この三つにあって、そのなかでは心と行いを本とし、行いを主とします。
解説
この段は短く、人の身の働きを言・行・心の三つに整理し、武将が慎むべきは怠惰と軟弱だと述べています。三つのうち心と行いを本とし、さらに行いを主とするという順序づけに特徴があります。言葉が立派でも、心が定まらず行動が伴わなければ意味がない、という読み方ができます。後の段で言辞と心術が詳しく論じられるので、ここは全体の見取り図にあたります。現代の仕事に引き寄せると、理念や方針を語ることより、日々の行動で示すことの比重が大きいという意味になります。自分の言葉と行動のずれを点検する手がかりにもなります。
この章句が説くこと
言行心修身怠惰行い綱領武治提要
関連する章句
-
『武治提要』修身・第1段武將武治を天下に敷の先務、脩身にあり。脩は治也、條理あつて綱目明に、不正の言行あらざる、是を修身と云也。武將の天下にあること、太陽の天にかゝるが如し。深閨の密事、別殿の戲遊のごときも、泄て傳はらずと云ことなし。若下正懦弱の言行あるときは、天下の士ひそかにこれをあなどる。あなどるときは、武威これより傾廢す。故に武將の天下にあること、重を負て春氷を渡がごとし。脩身の用重かな、深かな。
-
『武治提要』修身・第3段言辭は內德を外に發するの道にして、其用重し。而して武將の言行は、只やむことなき自然の則を用ゆるにあり。口舌辭氣をたくみにして、文華婉曲を志ものは、辨士の業なり。勤て心を禮讓の容態に用ゆるものは、官者の事なり。武將の言辭は、易簡にして、條理の明なるにあるのみ。禮讓威儀の容態は、やむことを得ざるの則を用ゆるのみ。若文飾に志あるものは、內に柔弱の病あるがゆへなり。五倫の交接事物の應用は、行の大なるものにして、其敎齊家に屬せり。
-
『武治提要』講武・第1段淸平の日、武を講習して不怠は、武將の專務なり。其大綱三つ、一に云く武の形を講ず、二に云く武の事業を講ず、三に云く軍旅の事情を講ず。この三講に二つの目あり、云く人を以し、物を以てするなり。其事正しく、其形定り、其人物熟するに至て、講武の一成也。一成して又講し、講して又一成す。丈夫死して而后にやむは、講武の一事なり。
-
『武治提要』修身・第4段心術に二義あり、正心、養氣なり。正心は躰なり、養氣は用なり。用を盡して躰を立、躰立て用成は、萬物の情なり。故に正心の道、專ら養氣にあり。凡氣血の精英を魂(氣)魄(血)と號し、魂魄相合して不測の妙用をなすを性と號し、暫く其方象をさして心と號し、常に內に動くものを意と云、外に發してあとあるを情と云、內に詳なるを思慮と云、趣き向ふものを志と云、躰に盈るを氣と云。此故に心を云ときは、性情ともに擧り來る。所謂正心とは其心の應用を省察して、準繩にかなわしむるの敎なり。內に思慮する處、外に發する處の好惡の意情、縱橫皆のりかねに合てたがはざる、これ乃ち正心なり。一身の主たるもの、既に規矩に適して發するときは、修身に於て何ぞ難きことあらんや。躰に盈て、目の物を見、口の味を知ごときは、是れ氣なり。養とは涵養して、武義のある處に養い導となり。凡內の動靜變化は皆外の利害に依て無窮の應用をなす、故に耳目鼻口四支のふるゝ處、氣これに從て、其好惡利害を性心に通ず。性心此氣の好惡に感通して其應用をなす。外習の內德を變ずること愼ざるべけんや。故に或は兵書を常に眼に見、或は躰を常に武術に涵すときは、氣萬物の上に伸て屈せず、これよりして心の正を得るに至るなり。此故に脩身の道、正心、養氣を重とす。
-
『初学訓』巻之二一人の身のわざは、言行の二にあり。是をつつしみて、過すくなくするは、身を修むる道なり。およそ人は、言は常に余あり、行は常に足らず、言を信にし、行を篤くつつしむべし。言は、過ぎやすく誤りやすし。つつしみて、みだりに言ふべからず。行は、常に怠りやすく、不足多し、怠りなくするどにつとめ、余りある程あつく行ふべし。一心を天官といふ。身の主にて、思を以て官とす。耳、目、口、鼻、形を五官といふ。耳に聴き、目に見、口に物いひ、物をくひ、鼻に香をかぎ、形はうごく。是、五のつかさどりなり。官とはつかさどるなり、役を勤むるをいふ。心は五官の君なり、五官は心の使ふものなり。心によく思案して、五官のひがごとを禁じ、五官の役を勤めしむるは、たとへば、主人の臣下を使ふに、各其官をいひつけて、勤めしむるが如し。
-
『武治提要』武勇・第2段武勇は士道百行の括要にして、立志は百行の淵源なり。勇薄ときは其志立難く、其志不立ときは勇亦ならず。志立て其勇なり、其勇成て其志亦立、勇と志と相表裏す。
人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見る