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武治提要 / 武義・第1段

義は事物に處して其宜に適の名なり。よろしきとはよろこばしきを中略せるの倭訓なり。內外彼此其處を得て悅樂する、これをよろしきと云なり。己一人を利してひとりこれをよろこぶといへども、人はよろこばず。一般は可なるがごとしといへども、一般には省て疚しきことあるごときは、其終り以てよろこばしきに至るべからず。故に事物を裁斷決定して、內外彼此よろこびて其終を致すこれなり。決斷して其宜にかなふこと、三民といへども、其分に應じてこれをなす。士道の義は武德武智を以て決斷す、故に武義と云なり。文德を以て決斷するときは、其威寡し。其威寡ときは、よろこぶこと多して、恐るゝこと寡し。武德を以て決斷するときは、威あつて侵すべからず、よろこびて恐る。これ武門の義なり。

新字:義は事物に処して其宜に適の名なり。よろしきとはよろこばしきを中略せるの倭訓なり。内外彼此其処を得て悦楽する、これをよろしきと云なり。己一人を利してひとりこれをよろこぶといへども、人はよろこばず。一般は可なるがごとしといへども、一般には省て疚しきことあるごときは、其終り以てよろこばしきに至るべからず。故に事物を裁断決定して、内外彼此よろこびて其終を致すこれなり。決断して其宜にかなふこと、三民といへども、其分に応じてこれをなす。士道の義は武徳武智を以て決断す、故に武義と云なり。文徳を以て決断するときは、其威寡し。其威寡ときは、よろこぶこと多して、恐るゝこと寡し。武徳を以て決断するときは、威あつて侵すべからず、よろこびて恐る。これ武門の義なり。

書き下し

義は事物に處して其宜に適の名なり。よろしきとはよろこばしきを中略せるの倭訓なり。內外彼此其處を得て悅樂する、これをよろしきと云なり。己一人を利してひとりこれをよろこぶといへども、人はよろこばず。一般は可なるがごとしといへども、一般には省て疚しきことあるごときは、其終り以てよろこばしきに至るべからず。故に事物を裁斷決定して、內外彼此よろこびて其終を致すこれなり。決斷して其宜にかなふこと、三民といへども、其分に應じてこれをなす。士道の義は武德武智を以て決斷す、故に武義と云なり。文德を以て決斷するときは、其威寡し。其威寡ときは、よろこぶこと多して、恐るゝこと寡し。武德を以て決斷するときは、威あつて侵すべからず、よろこびて恐る。これ武門の義なり。

現代語訳

義とは、事物に処してその宜しきにかなう名である。「よろしき」とは「よろこばしき」を略した和訓である。内外・彼此がそれぞれ所を得て悦び楽しむ、これを「よろしき」という。自分ひとりを利して自分だけが喜んでも、人は喜ばない。大方は良いように見えても、一部には省みてやましいところがあるようなら、その終わりはよろこばしいところには至れない。ゆえに事物を裁断し決定して、内外・彼此が喜んでその終わりを全うさせる、これが義である。決断してその宜しきにかなうことは、三民であっても、その分に応じてこれをなす。士道の義は武徳・武智をもって決断する。ゆえに武義という。文徳で決断すれば、その威は少ない。威が少なければ、喜ぶことは多く、恐れることは少ない。武徳で決断すれば、威があって侵すべからず、喜んでかつ恐れる。これが武門の義である。

解説

義を「事物に処してその宜しきにかなうこと」とし、「よろしき」は「よろこばしき」の略だとして、内外・彼此が所を得て喜ぶ状態を義と言います。自分だけが得をしても人は喜ばず、一部にやましさが残れば終わりは喜ばしくならない、と裁断の基準を示します。文徳で決めれば威が少なく、武徳で決めれば喜びつつ恐れるとも言います。判断が全体の納得に届いているかを問う基準は、利害が割れる決断を迫られる管理職に役立ちます。特定の人だけが得をする判断になっていないか、決める前の点検項目になります。

この章句が説くこと

義よろしき裁断武義士道武治提要

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