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弁名 / 性情才

書曰。惟人萬物之靈。傳曰。人受天地之中以生。詩曰。天生烝民有物有則。民之秉彜。好是懿德。孔子釋之曰。有物必有則。民之秉彜也。故好是懿德。文言曰。利貞者性情也。大傳曰。成之者性。是皆古人言性者也。合而觀之。明若觀火。蓋靈頑之反。然亦非宋儒虛靈不昧之謂中偏之對。然亦非宋儒不偏不倚之謂。皆指人之性善移而言之也。

新字:書曰。惟人万物之霊。伝曰。人受天地之中以生。詩曰。天生烝民有物有則。民之秉彜。好是懿徳。孔子釈之曰。有物必有則。民之秉彜也。故好是懿徳。文言曰。利貞者性情也。大伝曰。成之者性。是皆古人言性者也。合而観之。明若観火。蓋霊頑之反。然亦非宋儒虚霊不昧之謂中偏之対。然亦非宋儒不偏不倚之謂。皆指人之性善移而言之也。

書き下し

書に曰く、「惟れ人は万物の霊なり」と。伝に曰く、「人は天地の中を受けて以て生ず」と。詩に曰く、「天、烝民を生ず。物有れば則有り。民の秉彝、是の懿徳を好む」と。孔子之を釈して曰く、「物有れば必ず則有り。民の秉彝なり。故に是の懿徳を好む」と。文言に曰く、「利貞とは性情なり」と。大伝に曰く、「之を成す者は性なり」と。是れ皆古人の性を言ふ者なり。合せて之を観れば、明らかなること火を観るが若し。蓋し霊は頑の反なり。然れども亦た宋儒の虚霊不昧の謂に非ず。中は偏の対なり。然れども亦た宋儒の不偏不倚の謂に非ず。皆人の性の善く移るを指して之を言ふなり。

現代語訳

『書経』に「人は万物の霊である」とあり、伝に「人は天地の中を受けて生まれる」とある。『詩経』に「天は多くの民を生んだ。物があれば法則がある。民が常に持つ本性は、この美しい徳を好む」とあり、孔子はこれを解釈して「物があれば必ず法則がある。それが民の常に持つ本性である。だからこの美しい徳を好むのだ」と言った。文言伝に「利貞とは性情である」とあり、繋辞伝に「これを成すものは性である」とある。これらはみな古人が性について言ったものである。合わせて見れば、火を見るように明らかである。「霊」とは「頑(かたくな)」の反対である。しかし宋儒のいう「虚霊不昧(心が空明で曇りがない)」の意味ではない。「中」とは「偏り」の対である。しかしこれも宋儒のいう「偏らず寄りかからない」の意味ではない。どちらも人の性がよく移ることを指して言ったのである。

解説

徂徠は書経・左伝・詩経・易の性に関する言葉を並べ、合わせて見れば意味は明らかだと言う。「万物の霊」の霊はかたくなの反対、「天地の中」の中は偏りの反対であり、どちらも人の性が「善く移る」こと、つまり周囲の影響を受けて変わりやすいことを指す。宋儒はこれを心の曇りのなさや不偏不倚という内面の理想と読んだが、徂徠はもっと素朴に、人は習うものに染まりやすい存在だと捉える。だからこそ、何に触れ、何を習うかという環境と教えの設計が決定的に大切になるのである。

この章句が説くこと

性善移霊中宋儒環境

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