万民徳用 / 職人日用・問
職人問ふて云はく、後世菩提、大切の事なりといへども、家業を營むに隙なし、日夜渡世をかせく計なり。何としてか佛果に至るへきや。
新字:職人問ふて云はく、後世菩提、大切の事なりといへども、家業を営むに隙なし、日夜渡世をかせく計なり。何としてか仏果に至るへきや。
書き下し
職人問ふて云はく、後世菩提、大切の事なりといへども、家業を営むに隙なし、日夜渡世をかせく計なり。何としてか仏果に至るへきや。
現代語訳
職人が問うて言った。後世の悟りは大切なことだとは思いますが、家業を営むのに暇がなく、日夜、生計のために働くばかりです。どうすれば成仏できるのでしょうか。
解説
『職人日用』の冒頭の問いです。農人の問いと同様に、家業に追われて暇がないという悩みですが、ここでは職人という立場の「日夜、渡世をかせぐ」という言葉に重みがあります。江戸前期には都市の発展とともに職人層が厚くなり、手仕事で生計を立てる人々が増えていました。技術を磨き続けても、それが救いに結びつくのかという疑いは、現代の専門職が仕事の意味を問う姿に重なります。正三の答えは、その仕事そのものに仏性を見る、というものです。
この章句が説くこと
職人家業渡世後世菩提成仏問い
関連する章句
-
万民徳用・農人日用・問農人問ふて云はく、後生一大事疎ならすといへども、農業時を遂て隙なし、あさましき渡世の業をなし、今生むなしくして、未来の苦を受くべき事、無念の至なり。何として仏果に至るへきや。
-
万民徳用・商人日用・問商人問ふて云はく、たま〱人界に生を受るといへども、つたなき売買の業をなし、得利を思ふ念休む時なく、菩提にすゝむ事叶はす、無念の至なり。方便を垂れ給へ。
-
万民徳用・職人日用・答答て云はく、何の事業も、皆仏行なり。人々の所作の上においては成仏したまふへし。仏行の外なる作業有るべからず。一切の所作、皆以て世界のためとなる事を以てしるへし。仏体をうけ、仏性そなはりたる人間、意得あしくして、好て悪道に入ることなかれ。本覚真如の一仏、百億分身して世界を利益したまふなり。鍛冶、番匠をはじめ、諸職人なくしては、世界の用所調ふべからず。武士なくして、世治るへからず。農人なくして、世界の食物あるべからず。商人なくして、世界の自由なるべからず。此の外所有事業出来て、世のためとなる。天地をさたじたる人もあり、文字を造出したる人も有り、五臓を分けて医道を施す人もあり、其の品々限なく出て、世のためとなるといへども、唯是れ一仏の徳用なり。如此ありかたき仏性を人々具足すといへ共、この理をしらずして、我と此の身を賤しくなし、悪心悪業を専として、好て悪道に入るを迷の凡夫とはいふなり。三世の諸仏出世ありて、衆生則ち仏なる事を直にしめしたまへり。眼に色を見、耳に声を聞き、鼻に香をかぎ、口に物を云つて、思ふ事の自由をなす、手の自由、足の自由、唯是れ一仏の自由なり。去る間、後世を願ふといふは、我身を信ずるを本意とす。誠に成仏を願ふ人ならば、唯自身を信ずべし。自身を信ずるといふは、自身則ち仏なれは、仏の心を信すへし。仏に欲心なし、仏の心に嗔恚なし、仏の心に愚痴なし、仏の心に生死なし、仏の心に是非なし、仏の心に煩悩なし、仏の心に悪事なし、如此の理を信せずして、私に貪欲を作出し嗔恚を発し、愚痴に住在して、日々夜々、我執我慢、邪見妄想を主として、彼に従て苦痛悩乱の心休む時なく、本有の自性を失て、一生空しく大地獄を造堅めて、未来永劫すみかとせん事、かなしまざるべけんや。是れを恐れ是れをなげきて、一大事のこゝろざしをはげまし、万念を放下して、所作所為の上に就て、切に急に真実勇猛の念仏を以て、自己の真仏を信仰せは、気の熟するに従て、自然に誠の心至極して、終に信得し究る時、覚ゑす無我無人無住所の境に入て、自己の真仏顕然たるべし。一筋に信仰せよ信仰せよ。
-
万民徳用・武士日用・問その一武士問ふて云はく、仏法世法、車の両輪のごとしといへり。然りと雖も、仏法なくとも、世間に事闕くべからず、何ぞ車の両輪に譬へたるや。
-
万民徳用・農人日用・答前半答て云はく、農業則ち仏行なり。意得悪しき時は、賤しき業也。信心堅固なる時は、菩薩の行なり。隙を得て後生願はんと思ふは誤なり。かならず成仏をとげんと思ふ人は、身心を責めて、楽欲する心ありて後生願ふ人は、万劫を経るとも成仏すべからず。極寒極熱の辛苦の業をなし、鋤鍬鎌を用ゐ得て、煩悩の叢茂き此の身心を敵となし、すきかへしかり取り、心を着けてひた責めに責めて耕作すべし。身に隙を得る時は、煩悩の叢增長す。辛苦の業をなして、身心を責むる時は、此の心に煩なし。如此四時ともに仏行をなす、農人何とて別の仏行を好むべきや。縦ひ道塲に入て、恭敬礼拝専する人なりとも、我執の念すたらずは、何たる殊勝をなすとも、皆以て輪廻の業なり。去れは成仏堕獄は、心に有りて業になし。簡要は、唯正直の旨を守て、因果の理をしるへし。農業を勤むる者には、覚えす功徳ろなはれり。三宝を供養し、神明を祭て、国土万民世を持つ事、唯是れ耕夫の徳なり。畜類等に至る迄、此の徳受けざるはなし。是れ則ち我徳にむくはざらんや。かほど大功徳をなす農人、一心のむけやうあしくして、還て三悪道の業となす事、口をしきにあらすや。偏に道理を知て、一心を定むへし。夫れ農人と生を受くる事は、天より授け給へる世界養育の役人なり。
-
万民徳用・武士日用・問その二問ふて云はく、仏道修行の趣、理をしり義行ひて、正直の旨を得る事、尤も至極なり。此の上には正直の道を修すべき心遣を微細に示し給へ。
人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見る