晏子春秋 / 外篇下・晏子死,景公哭之,稱:莫復陳告吾過/晏子沒,左右諛,弦章諫,景公賜之魚
章歸魚乘塞途,撫其御之手曰:「曩之唱善者,皆欲若魚者也。昔者,晏子辭賞以正君,故過失不掩,今諸臣諂諛以干利,故出質而唱善,如出一口。今所輔於君,未見於眾,而受若魚,是反晏子之義,而順諂諛之欲也。」固辭魚不受。君子曰:「弦章之廉,乃晏子之遺行也。」
新字:章帰魚乗塞途,撫其御之手曰:「曩之唱善者,皆欲若魚者也。昔者,晏子辞賞以正君,故過失不掩,今諸臣諂諛以干利,故出質而唱善,如出一口。今所輔於君,未見於衆,而受若魚,是反晏子之義,而順諂諛之欲也。」固辞魚不受。君子曰:「弦章之廉,乃晏子之遺行也。」
書き下し
章帰るに魚の乗塗に塞がり、其の御の手を撫でて曰く、「曩の善を唱えし者は、皆魚の若きを欲する者なり。昔者、晏子は賞を辞して以て君を正す、故に過失掩われず。今諸臣は諂諛して以て利を干む、故に質を出でて善を唱うること、一口より出づるが如し。今君を輔くる所、未だ衆に見われざるに、若き魚を受くるは、是れ晏子の義に反して、諂諛の欲に順うなり」と。固く魚を辞して受けず。君子曰く、「弦章の廉は、乃ち晏子の遺行なり」と。
現代語訳
弦章が帰ろうとすると、賜った魚の車が道をふさいでいました。弦章は御者の手をなでて言いました。「さきほど善しと唱えた者たちは、みなこのような魚が欲しい者たちだ。昔、晏子は賞を辞退して君を正した。だから君の過ちは覆い隠されなかった。今、諸臣はへつらって利を求めている。だから矢が的を外れても善しと唱え、一つの口から出たようになるのだ。今、私が君を補佐した事は、まだ人々に現れてもいないのに、このような魚を受け取れば、これは晏子の義に反して、へつらう者の欲に従うことになる」。そして強く魚を辞退し、受け取りませんでした。君子は言いました。「弦章の潔さは、晏子の遺した行いである」。
解説
この章句が説くこと
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『晏子春秋』雑下・景公祿晏子平陰與槁邑晏子願行三言以辭景公晏子に禄するに平陰と槁邑とを以てし、市に反る者十一社なり。晏子辞して曰く、「吾が君宮室を治むるを好み、民の力弊れたり。又盤遊玩好を好みて以て女子を飭り、民の財竭きたり。又師を興すを好み、民の死近し。其の力を弊らし、其の財を竭くし、其の死を近づく。下の其の上を疾むこと甚だし。此れ嬰の敢えて受けざる所以なり」と。公曰く、「是れ則ち可なり。然りと雖も、君子独り富と貴とを欲せざらんや」と。晏子曰く、「嬰聞く、人臣為る者は、君を先にして身を後にし、国を安んじて家を度り、君を宗として身を処くと。曷為れぞ独り富と貴とを欲せざらん」と。公曰く、「然らば則ち曷を以て夫子に禄せん」と。晏子対えて曰く、「君、漁塩を商し、関市は譏して征せず、耕す者は十に一を取り、刑罰を弛め、死に若たる者は刑し、刑に若たる者は罰し、罰に若たる者は免ぜよ。此の三言の若きは、嬰の禄にして、君の利なり」と。公曰く、「此の三言は、寡人事とする無し。請う、以て夫子に従わん」と。公既に若の三言を行い、人をして大国に問わしむ。大国の君曰く、「斉安し」と。人をして小国に問わしむ。小国の君曰く、「斉我に加えず」と。
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『慎思録』巻之五中華の俗、振古君を諫めて命を致す者、相踵ぎて絶えず。刀鋸前に在り、鼎鑊後に在りと雖も、敢へて其の死を畏れざる者は、何ぞや。其の俗義を尚び、且つ文学有りて、諫諍の方を知ればなり。本邦の俗、古来戦死を軽んずる者多し。鋒鏑羅列し、元を喪ふこと須臾に在りと雖も、敢へて其の身を惜しまざる者は、何ぞや。其の俗勇を好みて、名節を尚べばなり。倭漢気概を尚びて、其の死を惜しまざることは同じくして、死する所の地の異なる者は、他無し。俗尚の義を好みて学有ると、勇を好みて気を尚ぶとの同じからざるに因るなり。
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『長短経』量才忠正にして強く諫めて姦詐有ること無く、私を去り公を立てて言に法度有り。是くの如き者は、挙げて以て列士と為す。故に列士の事は常に義に在るなり。故に道徳仁義定まりて天下正し。
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『晏子春秋』問上・景公問伐魯晏子對以不若修政以待其亂景公兵を挙げて魯を伐たんと欲し、以て晏子に問う。晏子対えて曰く、「不可なり。魯公は義を好みて民之を戴く。義を好む者は安く、戴かるる者は和す、伯禽の治存す、故に攻むべからず。義を攻むる者は祥ならず、安きを危うくする者は必ず困しむ。且つ嬰之を聞く、人を伐つ者は、徳以て其の国を安んずるに足り、政以て其の民を和するに足り、国安く民和して、然る後に以て兵を挙げて暴を征すべし、と。今君は酒を好みて辟、徳以て国を安んずる無し。藉斂を厚くして使令を急にし、政以て民を和する無し。徳以て之を安んずる無ければ則ち危うく、政以て之を和する無ければ則ち乱る。危乱の理を免れざるに、而も安和の国を伐たんと欲するは、不可なり。政を修めて其の君の乱るるを待つに若かず、民其の君に離れ、上其の下を怨みて、然る後に之を伐たば、則ち義厚くして利多し。義厚ければ則ち敵寡く、利多ければ則ち民歓ぶ」と。公曰く、「善し」と。遂に魯を伐つことを果たさず。
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『墨子』公孟子墨子の門に游ぶ者有り、子墨子に謂いて曰く、「先生、鬼を以て神眀にして知り、能く人に禍いを為すと為すか」と。子墨子の門に游ぶ者有り、身體强良、思慮狥通なり。隨いて學ばしめんと欲す。子墨子曰く、「姑く學べ。吾れ将に子を仕えしめん」と。善言に勸められて學ぶ。其の年にして、仕えんことを子墨子に責む。子曰く、「子を仕えしめず。子も亦た夫の魯の語を聞かんか。昆弟五人なる者有り。其の父死して、其の長子、酒を嗜みて葬らず。其の四弟曰く、『子、我と葬らば、當に子の為に酒を沽うべし』と。善言に勸められて葬る。已に葬りて、酒を其の四弟に責む。四弟曰く、『吾れ未だ子に酒を予えず。子は子の父を葬り、我れは吾が父を葬る。豈に獨り吾が父ならんや。子、葬らずんば、則ち人、将に子を笑わんとす。故に子に葬るを勸めしなり』と。今、子は義を為し、我も亦た義を為す。豈に獨り我が義ならんや。子、學ばずんば、則ち人、将に子を笑わんとす。故に子に學を勸めしなり」と。
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『山鹿語類』士道・正直師曰。大丈夫の世に立、正直ならずんば不可有也。其義有処は、守て更に不変の謂也。其親疎貴賤に不因、其可改所を改め、可糾事をたゞして、不諛人不従世の謂也。世間に身を立つることは、世にまかせ人に不従しては、理のまゝに立こと有がたしと云へる輩、俸禄を得ながら、君の非を不糾、父兄の悪を不諫して、時とともに追従し、大禄大官に預て、当世にへつらひ、時節を以て君を諫むべきと云の内に、光陰ついに空しくして、一生一事をなすことなし。尤可耻、尤可笑。豈大丈夫の心存せるならんや。唯禄により官にさへられて、本心こゝに放失し、世の弄臣となれるなるべし。孟子曰。豪傑之士。雖無文王起と也。人のたすけをまち、人のうくるを喜て、諫を入非をたゞす事は、正直の士に非ずといへども、猶これをなすべし。彼大丈夫に至ては、一毫の助をまつ処有らざるべし。松到天而不屈。蘭無人而亦香。是則大丈夫正直の立処と云べし。直方大は易の重んずる言なれば、君父につかへて世に立つことは、つとによはに唯正大直方を本とし、世俗の名誉にかゝはらず、仁義に非らずしては君の前に不陳、大節に臨て凛然として四海にまたがる、是正直の心を存する所以也。
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