晏子春秋 / 雑下・梁丘據自患不及晏子晏子勉據以常為常行/晏子老辭邑景公不許致車一乘而後止
梁丘據謂晏子曰:「吾至死不及夫子矣!」晏子曰:「嬰聞之,為者常成、行者常至。嬰非有異於人也,常為而不置,常行而不休者,故難及也?」晏子相景公,老辭邑。公曰:「自吾先君定公至今用世多矣,齊大夫未有老辭邑者。今夫子獨辭之,是毀國之故,棄寡人也,不可。」晏子對曰:「嬰聞古之事君者,稱身而食,德厚而受祿,德薄則辭祿。德厚受祿,所以明上也;德薄辭祿,可以潔下也。嬰老,德薄無能而厚受祿,是掩上之明,汙下之行,不可。」公不許曰:「昔吾先君桓公,有管仲恤勞齊國,身老,賞之以三歸,澤及子孫。今夫子亦相寡人,欲為夫子三歸,澤至子孫,豈不可哉?」對曰:「昔者管子事桓公,桓公義高諸侯,德備百姓。今嬰事君也,國僅齊于諸侯,怨積乎百姓,嬰之罪多矣,而君欲賞之,豈以其不肖父為不肖子厚受賞,以傷國民義哉!且夫德薄而祿厚,智惛而家富,是彰汙而逆教也,不可。」公不許。晏子出,異日朝,得間而入邑,致車一乘而後止。
新字:梁丘拠謂晏子曰:「吾至死不及夫子矣!」晏子曰:「嬰聞之,為者常成、行者常至。嬰非有異於人也,常為而不置,常行而不休者,故難及也?」晏子相景公,老辞邑。公曰:「自吾先君定公至今用世多矣,斉大夫未有老辞邑者。今夫子独辞之,是毀国之故,棄寡人也,不可。」晏子対曰:「嬰聞古之事君者,称身而食,徳厚而受禄,徳薄則辞禄。徳厚受禄,所以明上也;徳薄辞禄,可以潔下也。嬰老,徳薄無能而厚受禄,是掩上之明,汚下之行,不可。」公不許曰:「昔吾先君桓公,有管仲恤労斉国,身老,賞之以三帰,沢及子孫。今夫子亦相寡人,欲為夫子三帰,沢至子孫,豈不可哉?」対曰:「昔者管子事桓公,桓公義高諸侯,徳備百姓。今嬰事君也,国僅斉于諸侯,怨積乎百姓,嬰之罪多矣,而君欲賞之,豈以其不肖父為不肖子厚受賞,以傷国民義哉!且夫徳薄而禄厚,智惛而家富,是彰汚而逆教也,不可。」公不許。晏子出,異日朝,得間而入邑,致車一乗而後止。
書き下し
梁丘据晏子に謂いて曰く、「吾死に至るまで夫子に及ばず」と。晏子曰く、「嬰之を聞く、為す者は常に成り、行う者は常に至ると。嬰は人に異なる有るに非ず。常に為して置かず、常に行いて休まざる者なり、故に及び難きか」と。晏子景公に相たりて、老いて邑を辞す。公曰く、「吾が先君定公より今に至るまで世を用いること多し。斉の大夫、未だ老いて邑を辞する者有らず。今夫子独り之を辞するは、是れ国の故を毀ち、寡人を棄つるなり。不可なり」と。晏子対えて曰く、「嬰聞く、古の君に事うる者は、身に称いて食し、徳厚ければ禄を受け、徳薄ければ則ち禄を辞すと。徳厚くして禄を受くるは、上を明らかにする所以なり。徳薄くして禄を辞するは、下を潔くす可き所以なり。嬰老い、徳薄く能無くして厚く禄を受くるは、是れ上の明を掩い、下の行いを汙すなり。不可なり」と。公許さずして曰く、「昔吾が先君桓公、管仲の斉国を恤労する有り、身老いて、之を賞するに三帰を以てし、沢子孫に及ぶ。今夫子も亦寡人に相たり。夫子の為に三帰を為し、沢子孫に至らしめんと欲す。豈に不可ならんや」と。対えて曰く、「昔者管子桓公に事え、桓公の義は諸侯に高く、徳は百姓に備わる。今嬰君に事うるや、国は僅かに諸侯に斉しく、怨みは百姓に積む。嬰の罪多し。而るに君之を賞せんと欲す。豈に其の不肖の父を以て不肖の子の厚く賞を受け、以て国民の義を傷つくるを為さんや。且つ夫れ徳薄くして禄厚く、智惛くして家富むは、是れ汙を彰し教えに逆らうなり。不可なり」と。公許さず。晏子出ず。異日朝し、間を得て邑に入り、車一乗を致して後止む。
現代語訳
梁丘据が晏子に言いました。「私は死ぬまであなたに及ばないでしょう」。晏子は言いました。「私はこう聞いています。為す者は常に成し遂げ、行う者は常に目的地に着く、と。私は人と違うところがあるわけではありません。いつも為して手を止めず、いつも行って休まないだけです。だから及びにくいのでしょうか」。晏子は景公の宰相をつとめ、老いて領地を返したいと願い出ました。公は言いました。「わが先君の定公から今まで、世に用いた臣は多いが、斉の大夫で、老いて領地を辞した者はまだいない。今あなた一人が辞するのは、国の先例を壊し、私を見捨てることだ。いけない」。晏子は答えました。「私はこう聞いています。昔の君に仕える者は、身にふさわしいだけを食み、徳が厚ければ禄を受け、徳が薄ければ禄を辞した、と。徳が厚くて禄を受けるのは、君の明らかさを示すことになり、徳が薄くて禄を辞するのは、下の者を清く保てることになります。私は老い、徳は薄く才もないのに厚く禄を受ければ、君の明を覆い、下の者の行いを汚すことになります。いけません」。公は許さず言いました。「昔、わが先君の桓公は、斉の国のために働いた管仲が老いたとき、三帰で賞し、恵みは子孫に及んだ。いまあなたも私の宰相だ。あなたのために三帰を設け、恵みを子孫に及ぼしたい。どうしていけないのか」。晏子は答えました。「昔、管仲が桓公に仕えたとき、桓公の義は諸侯の中で高く、徳は民に行き渡っていました。いま私が君に仕えて、国はようやく諸侯と肩を並べる程度で、怨みは民に積もっています。私の罪は多いのです。それなのに君は私を賞しようとなさる。不肖の父のために不肖の子が厚い賞を受け、国民の義を傷つけてよいものでしょうか。そもそも徳が薄いのに禄が厚く、知恵が暗いのに家が富むのは、汚れをあらわにし、教えに背くことです。いけません」。公は許しませんでした。晏子は退出し、後日の朝廷で、すきを見て領地に入り、車一乗だけを受け取って、そこで止めました。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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呂氏春秋・達鬱③管仲、桓公を觴し、日暮れたり。桓公之を樂しみて燭を徴む。管仲曰く、「臣、其の晝を卜するも、未だ其の夜を卜せず。君以て出づ可し。」公說ばず、曰く、「仲父年老いたり。寡人、仲父と樂しみを為すこと將た之を幾たびかせん。請う之を夜にせん。」管仲曰く、「君過てり。夫れ味に厚き者は、徳に薄く、樂しみに沈む者は、憂に反る。壯にして怠れば則ち時を失い、老いて解れば則ち名無し。臣乃ち今將に君が為に之を勉めんとす。若何ぞ其れ酒に沈むや。」管仲は能く行いを立つと謂う可し。凡そ行の墮るるや樂しみに於いてす。今樂しみて益々飭す。行の壞るるや貴に於いてす。今主留まらんと欲するも許さず。志を伸べ理を行い、貴樂に變を為さず、以て其の主に事う。此れ桓公の霸たりし所以なり。
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『晏子春秋』問上・景公問欲如桓公用管仲以成霸業晏子對以不能景公晏子に問いて曰く、「昔吾が先君桓公に、管仲夷吾の斉国を保乂する有り、能く武功を遂げて文徳を立て、兄弟を糾合し、冀州を撫存し、呉越令を受け、荊楚惛憂し、賓服せざる莫し。周室に勤め、天子徳を加う。先君の功を昭らかにするは、管子の力なり。今寡人も亦斉国の政を夫子に存せんと欲す、夫子以て寡人を佐佑し、先君の功烈を彰らかにして、管子の業を継げ」と。晏子対えて曰く、「昔吾が先君桓公は能く賢を任用し、国に什伍有り、治は細民に遍く、貴は賤を淩がず、富は貧に傲らず、功は罷を遺れず、佞は愚に吐かず、事を挙ぐること私せず、獄を聴くこと阿らず、内妾に羨食無く、外臣に羨禄無く、鰥寡に饑色無し、飲食の辟を以て民の財を害せず。宮室の侈を以て人の力を労せず。節して民より取り、而して普く之を施す。府に蔵無く、倉に粟無し。上に驕行無く、下に諂徳無し。是を以て管子能く斉国を以て難を免れ、而して吾が先君を以て天子に参す。今君先君の功烈を彰らかにし、而して管子の業を継がんと欲せば、則ち多辟を以て百姓を傷つくる無く、嗜欲を以て諸侯を怨ましむる無かれ、孰か敢えて善を承け力を尽くして、以て君の意に順わざらん。
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言志四録・言志耋録 第百六十五条 親しむべくして狎るべからず火は親しむべくして狎るべからず。水は愛すべくして溺るべからず。妻妾を待つには、宜しく是くの如き看を著くべし。
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