晏子春秋 / 諫上・景公飲酒酣願諸大夫無為禮晏子諫
景公飲酒酣,曰:「今日願與諸大夫為樂飲,請無為禮。」晏子蹴然改容曰:「君之言過矣,群臣固欲君之無禮也。力多足以勝其長,勇多足以弑其君,而禮不使也。禽獸以力為政,強者犯弱,故日易主。今君去禮,則是禽獸也。群臣以力為政,強者犯弱,而日易主,君將安立矣?凡人之所以貴於禽獸者,以有禮也。故詩曰:『人而無禮,胡不遄死。』禮不可無也。」公湎而不聽。少間,公出,晏子不起;公入,不起,交舉則先飲。公怒,色變,抑手疾視曰:「向者夫子之教寡人無禮之不可也。寡人出入不起,交舉則先飲,禮也?」晏子避席再拜稽首而請曰:「嬰敢與君言而忘之乎?臣以致無禮之實也。君若欲無禮,此是已。」公曰:「若是,孤之罪也。夫子就席,寡人聞命矣。」觴三行,遂罷酒,蓋是後也,飭法修禮以治國政,而百姓肅也。
新字:景公飲酒酣,曰:「今日願与諸大夫為楽飲,請無為礼。」晏子蹴然改容曰:「君之言過矣,群臣固欲君之無礼也。力多足以勝其長,勇多足以弑其君,而礼不使也。禽獣以力為政,強者犯弱,故日易主。今君去礼,則是禽獣也。群臣以力為政,強者犯弱,而日易主,君将安立矣?凡人之所以貴於禽獣者,以有礼也。故詩曰:『人而無礼,胡不遄死。』礼不可無也。」公湎而不聴。少間,公出,晏子不起;公入,不起,交舉則先飲。公怒,色変,抑手疾視曰:「向者夫子之教寡人無礼之不可也。寡人出入不起,交舉則先飲,礼也?」晏子避席再拝稽首而請曰:「嬰敢与君言而忘之乎?臣以致無礼之実也。君若欲無礼,此是已。」公曰:「若是,孤之罪也。夫子就席,寡人聞命矣。」觴三行,遂罷酒,蓋是後也,飭法修礼以治国政,而百姓粛也。
書き下し
景公酒を飲みて酣なり、曰く、「今日は願わくは諸大夫と楽しみ飲まん、請う礼を為す無かれ」と。晏子蹴然として容を改めて曰く、「君の言過てり、群臣は固より君の礼無きを欲するなり。力多ければ以て其の長に勝つに足り、勇多ければ以て其の君を弑するに足りて、礼之をして使めざるなり。禽獣は力を以て政を為し、強き者は弱きを犯し、故に日に主を易う。今君礼を去らば、則ち是れ禽獣なり。群臣力を以て政を為し、強き者は弱きを犯して、日に主を易えば、君将に安くにか立たん。凡そ人の禽獣より貴き所以の者は、礼有るを以てなり。故に詩に曰く、『人にして礼無くんば、胡ぞ遄やかに死せざる』と。礼は無かる可からざるなり」と。公は湎れて聴かず。少間ありて、公出ずるに、晏子起たず、公入るに、起たず、交ごも挙ぐるに則ち先ず飲む。公怒り、色変じ、手を抑えて疾く視て曰く、「向者に夫子の寡人に教うるに礼無きの不可なるを以てす。寡人の出入に起たず、交ごも挙ぐるに先ず飲むは、礼なるか」と。晏子席を避け再拝稽首して請いて曰く、「嬰敢えて君と言いて之を忘れんや。臣は以て礼無きの実を致すなり。君若し礼無きを欲せば、此れ是れのみ」と。公曰く、「是くの若くんば、孤の罪なり。夫子席に就け、寡人命を聞けり」と。觴三たび行りて、遂に酒を罷む。蓋し是の後、法を飭え礼を修めて以て国政を治め、百姓肅まれり。
現代語訳
景公は酒がまわって上機嫌になり、言いました。「今日は大夫たちと楽しく飲みたい。礼は抜きにしてくれ。」晏子ははっとして姿勢を改め、言いました。「君のお言葉は間違いです。家臣たちは、もとより君が礼を捨てることを望んでいるのです。力が強ければ年長者に勝てますし、勇が強ければ君主を殺せますが、礼がそうさせないのです。禽獣は力で政を行い、強い者が弱い者を犯すので、毎日主が入れ替わります。今、君が礼を捨てれば、禽獣と同じです。家臣たちが力で政を行い、強い者が弱い者を犯して毎日主が入れ替わるなら、君はどこに立つのですか。人が禽獣より貴いのは、礼があるからです。だから詩に、『人でありながら礼がないなら、なぜ早く死なないのか』とあります。礼は無くてはならないものです。」公は酒におぼれて聞き入れませんでした。しばらくして、公が席を出ても晏子は立たず、公が入っても立たず、杯を挙げるときには先に飲みました。公は怒って顔色を変え、手を押さえて睨み、言いました。「先ほど先生は、礼がなくてはならないと私に教えた。私の出入りに立たず、杯を挙げるのに先に飲むのは、礼にかなうのか。」晏子は席を離れて再拝し、額を地につけて言いました。「私が君にものを申しておいて、それを忘れるでしょうか。礼のない実際の姿をお見せしたのです。君がもし礼のないことをお望みなら、これがそうです。」公は言いました。「そういうことなら、私の過ちだ。先生、席に戻ってください。教えを承りました。」杯が三巡して、酒宴は終わりました。思うにこの後、法を整え礼を修めて国政を治め、民は引き締まったのです。
解説
この章句が説くこと
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