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養生訓 / 巻第八・灸治

一病者、氣よわくして、つねのひねりたる灸炷をこらへがたき人あり、切艾を用ふべし。紙を幅一寸八分ばかりに縱に切りて、もぐさをおもさ各三分に秤にかけて長くのべ、右の紙にて卷き、其はしを糊にてつけ日にほし、一炷ごとに長さ各三分に切りて、一方は直に、一方は片削にし、すぐなる方の下にあつき紙を切りてつけ、日にほして灸炷とし、灸する時、鹽糊を其下に附けて灸すれば、熱痛甚しからずしてこらへやすし。灸炷の下にのりを附くるに、艾の下には附けず、まはりの紙の切口に附くる。もぐさの下に糊をつくれば、火下まで燃えず。此きりもぐさは、俄に熱痛甚しからずして、ひねりもぐさよりこらへやすし。然れども、ひねり艾より熱する事久しく、消ゆる事おそし。底に徹すべし。

新字:一病者、気よわくして、つねのひねりたる灸炷をこらへがたき人あり、切艾を用ふべし。紙を幅一寸八分ばかりに縦に切りて、もぐさをおもさ各三分に秤にかけて長くのべ、右の紙にて巻き、其はしを糊にてつけ日にほし、一炷ごとに長さ各三分に切りて、一方は直に、一方は片削にし、すぐなる方の下にあつき紙を切りてつけ、日にほして灸炷とし、灸する時、塩糊を其下に附けて灸すれば、熱痛甚しからずしてこらへやすし。灸炷の下にのりを附くるに、艾の下には附けず、まはりの紙の切口に附くる。もぐさの下に糊をつくれば、火下まで燃えず。此きりもぐさは、俄に熱痛甚しからずして、ひねりもぐさよりこらへやすし。然れども、ひねり艾より熱する事久しく、消ゆる事おそし。底に徹すべし。

書き下し

一病者、気よわくして、つねのひねりたる灸炷をこらへがたき人あり、切艾を用ふべし。紙を幅一寸八分ばかりに縦に切りて、もぐさをおもさ各三分に秤にかけて長くのべ、右の紙にて巻き、其はしを糊にてつけ日にほし、一炷ごとに長さ各三分に切りて、一方は直に、一方は片削にし、すぐなる方の下にあつき紙を切りてつけ、日にほして灸炷とし、灸する時、塩糊を其下に附けて灸すれば、熱痛甚しからずしてこらへやすし。灸炷の下にのりを附くるに、艾の下には附けず、まはりの紙の切口に附くる。もぐさの下に糊をつくれば、火下まで燃えず。此きりもぐさは、俄に熱痛甚しからずして、ひねりもぐさよりこらへやすし。然れども、ひねり艾より熱する事久しく、消ゆる事おそし。底に徹すべし。

現代語訳

病人で、気が弱くて、ふつうのひねった艾炷を我慢しにくい人がいます。切り艾を用いるべきです。紙を幅一寸八分ほどに縦に切り、もぐさを重さそれぞれ三分ずつ秤で量って長く延ばし、右の紙で巻き、その端を糊でつけて日に干し、一粒ごとに長さそれぞれ三分に切って、一方はまっすぐに、一方は斜めに削り、まっすぐな方の下に厚い紙を切ってつけ、日に干して艾炷とします。灸をするとき、塩糊をその下につけて灸をすれば、熱さや痛みがひどくなくて我慢しやすいのです。艾炷の下に糊をつけるには、もぐさの下にはつけず、まわりの紙の切り口につけます。もぐさの下に糊をつけると、火が下まで燃えません。この切りもぐさは、急に熱さや痛みがひどくならず、ひねりもぐさより我慢しやすいものです。けれども、ひねり艾より熱い時間が長く、消えるのが遅いのです。底まで熱が通るでしょう。

解説

熱さに弱い人のための「切り艾」の作り方と使い方を、寸法まで詳しく記した単位です。もぐさを紙で巻いて筒状にし、一定の長さに切りそろえ、下に厚紙と塩糊をつけることで、急な熱さを和らげながらじっくり熱を通すという工夫です。糊をもぐさの下ではなく紙の切り口につけよという細かな注意は、実際に作って試した人でなければ書けないものでしょう。今の台座付きのお灸にも通じる発想であり、使う人の身になって道具を工夫する益軒の姿勢がよく表れています。

この章句が説くこと

灸切り艾工夫道具配慮

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