養生訓 / 巻第八・養老
一老人は、大風雨大寒暑大陰霧の時、外に出づべからず。かゝる時は、内に居て、外邪をさけて靜養すべし。一老いては、脾胃の氣衰へよわくなる。食すくなきに宜し、多食するは危し。老人の頓死するは、十に九は皆食傷なり。わかくして脾胃つよき時に、ならひて食過ぐれば、消化しがたく、元氣ふさがり病おこりて死す。つゝしみて食を過すべからず。ねばき飯こはき飯、もち、だんご、麪類、糯の飯、獸の肉、凡消化しがたき物を多くくらふべからず。
新字:一老人は、大風雨大寒暑大陰霧の時、外に出づべからず。かゝる時は、内に居て、外邪をさけて静養すべし。一老いては、脾胃の気衰へよわくなる。食すくなきに宜し、多食するは危し。老人の頓死するは、十に九は皆食傷なり。わかくして脾胃つよき時に、ならひて食過ぐれば、消化しがたく、元気ふさがり病おこりて死す。つゝしみて食を過すべからず。ねばき飯こはき飯、もち、だんご、麪類、糯の飯、獣の肉、凡消化しがたき物を多くくらふべからず。
書き下し
一老人は、大風雨大寒暑大陰霧の時、外に出づべからず。かかる時は、内に居て、外邪をさけて静養すべし。一老いては、脾胃の気衰へよわくなる。食すくなきに宜し、多食するは危し。老人の頓死するは、十に九は皆食傷なり。わかくして脾胃つよき時に、ならひて食過ぐれば、消化しがたく、元気ふさがり病おこりて死す。つつしみて食を過すべからず。ねばき飯こはき飯、もち、だんご、麪類、糯の飯、獣の肉、凡消化しがたき物を多くくらふべからず。
現代語訳
老人は、大風雨、厳寒、猛暑、ひどい霧のときには外に出てはいけません。このようなときは家の中にいて、外の邪気を避けて静養すべきです。老いては、脾胃の気が衰えて弱くなります。食は少ないのがよく、多く食べるのは危険です。老人の急死は、十のうち九まではみな食あたりです。若くて脾胃が強かったときの習慣で食べすぎれば、消化しにくく、元気がふさがって病がおこり死にます。慎んで食べすぎてはいけません。ねばる飯や硬い飯、餅、団子、麺類、糯米の飯、獣の肉など、およそ消化しにくい物を多く食べてはいけません。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『養生訓』巻第八・養老一衰老の人は脾胃よわし。夏月は尤慎みて保養すべし。暑熱によりて、生冷の物をくらへば泄瀉しやすし。瘧痢もおそるべし。一たび病すれば大にやぶれて、元気へる。残暑の時、殊におそるべし。又寒月は、老人は陽気すくなくして、寒邪にやぶられやすし。心を用ひてふせぐべし。
-
『養生訓』巻第八・養老一老人は、体気おとろへ腸胃よわし、つねに小児を養ふごとく心を用ふべし。飲食のこのみきらひをたづね、其寒温の宜きをこころみ、居室をいさぎよくし、風雨をふせぎ、冬暖かに夏涼くし、風寒暑湿の邪気をよく防ぎて犯さしめず、常に心を安楽ならしむべし。盗賊水火の不意なる変災あらば、先両親を驚かしめず、早く介保し出すべし。変にあひて病起らざるやうに心遣あるべし。老人は、驚けば病おこる。おそるべし。一老の身は、余命久しからざる事を思ひ、心を用ふる事わかき時にかはるべし。心しづかに事すくなくて、人に交る事も稀ならんこそ、あひにあひて宜しかるべけれ。是も亦老人の気を養ふ道なり。
-
『養生訓』巻第四・飲食下一老人虚人の食ふべからざる物一切。生冷の物、堅硬の物、稠黏の物、油膩の物、冷麺、冷えてこはき餻餌、粽冷饅頭、幷に、糯飯、生味噌、醴の製法好からざると、冷なると。○海鰌海鰮、鮪梭魚、諸生菓、皆脾胃の発生の気をそこなふ。
-
『養生訓』巻第八・養老一老いては気すくなし。気をへらす事を忌むべし。第一、いかるべからず。うれひ、かなしみ、泣き、なげくべからず。喪葬の事にあづからしむべからず。死を弔ふべからず。思ひを過すべからず。尤多言を忌む。口早く物云ふべからず、高く物いひ、高くわらひ、高くうたふべからず。道を遠く行くべからず、道をはやく行くべからず、重き物をあぐべからず。是皆気をへらさずして、気ををしむなり。
-
『養生訓』巻第八・養老一朝夕の飯、常の如く食して、其上に又餻餌麪類など、わかき時の如く多くくらふべからず、やぶられやすし。只朝夕二時の食、味よくして進むべし。昼間夜中不時の食このむべからず、やぶられやすし。殊に薬をのむ時、不時に食すべからず。
-
『養生訓』巻第八・養老一衰老の人、あらき物多くくらふべからず。精しき物を少しくらふべし、と元の許衡いへり。脾胃よわき故なり。老人の食如此あるべし。一老人病あらば、先食治すべし。食治応ぜずして後薬治を用ふべし。是古人の説なり。人参黄耆は上薬なり、虚損の病ある時は用ふべし。病なき時は、穀肉の養の益ある事参耆の補に甚まされり。故に、老人には、つねに味美く性よき食物を少しづつ用ひて補養すべし。病なきに、偏なる薬を用ふべからず、かへつて害あり。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る