養生訓 / 巻第八・養老
一衰老の人は脾胃よわし。夏月は尤愼みて保養すべし。暑熱によりて、生冷の物をくらへば泄瀉しやすし。瘧痢もおそるべし。一たび病すれば大にやぶれて、元氣へる。殘暑の時、殊におそるべし。又寒月は、老人は陽氣すくなくして、寒邪にやぶられやすし。心を用ひてふせぐべし。
新字:一衰老の人は脾胃よわし。夏月は尤慎みて保養すべし。暑熱によりて、生冷の物をくらへば泄瀉しやすし。瘧痢もおそるべし。一たび病すれば大にやぶれて、元気へる。残暑の時、殊におそるべし。又寒月は、老人は陽気すくなくして、寒邪にやぶられやすし。心を用ひてふせぐべし。
書き下し
一衰老の人は脾胃よわし。夏月は尤慎みて保養すべし。暑熱によりて、生冷の物をくらへば泄瀉しやすし。瘧痢もおそるべし。一たび病すれば大にやぶれて、元気へる。残暑の時、殊におそるべし。又寒月は、老人は陽気すくなくして、寒邪にやぶられやすし。心を用ひてふせぐべし。
現代語訳
衰えた老人は脾胃が弱いものです。夏はとくに慎んで保養すべきです。暑さのために生もの・冷たい物を食べると下痢をしやすいのです。瘧や痢病も恐るべきです。一度病むと大いにこわれて元気が減ります。残暑のときはとくに恐るべきです。また寒い時期は、老人は陽気が少ないので、寒さの邪にこわされやすいのです。心を用いて防ぐべきです。
解説
老人の季節ごとの注意を述べた短い条です。夏は暑さに任せて冷たい物をとると下痢をしやすく、一度病むと元気が大きく減るので、とくに残暑の時期に気をつけよと述べています。冬は陽気が少ないので寒さにやられやすいと注意しています。高齢者は体温の調節や胃腸の働きが弱まり、夏の食あたりや脱水、冬の冷えや感染症にかかりやすいことは、今もよく知られています。季節の変わり目に高齢の家族の食事や室温に気を配ることは、身近な養老の実践です。
この章句が説くこと
老人季節夏冬脾胃
関連する章句
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『養生訓』巻第八・養老一老人は、大風雨大寒暑大陰霧の時、外に出づべからず。かかる時は、内に居て、外邪をさけて静養すべし。一老いては、脾胃の気衰へよわくなる。食すくなきに宜し、多食するは危し。老人の頓死するは、十に九は皆食傷なり。わかくして脾胃つよき時に、ならひて食過ぐれば、消化しがたく、元気ふさがり病おこりて死す。つつしみて食を過すべからず。ねばき飯こはき飯、もち、だんご、麪類、糯の飯、獣の肉、凡消化しがたき物を多くくらふべからず。
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『養生訓』巻第六・慎病一夏は発生の気いよいよさかんにして、汗もれ、人の肌膚大に開く故、外邪入りやすし。涼風に久しくあたるべからず、沐浴の後風に当るべからず。且夏は伏陰とて陰気かくれて腹中にある故、食物の消化する事おそし。多く飲食すべからず。温なる物を食ひて、脾胃をあたたむべし。冷水を飲むべからず。すべて生、冷の物を忌む。冷麺多く食ふべからず。虚人は尤泄瀉のうれひおそるべし。冷水に浴すべからず。暑甚しき時も、冷水を以て面目を洗へば眼を損ず、冷水にて手足洗ふべからず、睡中に扇にて人にあふがしむべからず、風にあたり臥すべからず、夜外に臥すべからず、夜外に久しく坐して、露気にあたるべからず、極暑の時も極めて涼しくすべからず、日に久しく曝せる熱物の上に坐すべからず。
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『養生訓』巻第三・飲食上一四時、老幼ともに、あたたかなる物くらふべし。殊に夏月は伏陰内にあり。わかく盛なる人も、あたたかなる物くらふべし。生冷を食すべからず。滞りやすく、泄瀉しやすし。冷水多く飲むべからず。一夏月瓜菓生菜多く食ひ、冷麺をしばしば食し、冷水を多く飲めば、秋必ず瘧痢を病む。凡病は故なくしておこらず。かねてつつしむべし。
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『養生訓』巻第八・養老一老人は、体気おとろへ腸胃よわし、つねに小児を養ふごとく心を用ふべし。飲食のこのみきらひをたづね、其寒温の宜きをこころみ、居室をいさぎよくし、風雨をふせぎ、冬暖かに夏涼くし、風寒暑湿の邪気をよく防ぎて犯さしめず、常に心を安楽ならしむべし。盗賊水火の不意なる変災あらば、先両親を驚かしめず、早く介保し出すべし。変にあひて病起らざるやうに心遣あるべし。老人は、驚けば病おこる。おそるべし。一老の身は、余命久しからざる事を思ひ、心を用ふる事わかき時にかはるべし。心しづかに事すくなくて、人に交る事も稀ならんこそ、あひにあひて宜しかるべけれ。是も亦老人の気を養ふ道なり。
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『養生訓』巻第四・飲食下一老人虚人の食ふべからざる物一切。生冷の物、堅硬の物、稠黏の物、油膩の物、冷麺、冷えてこはき餻餌、粽冷饅頭、幷に、糯飯、生味噌、醴の製法好からざると、冷なると。○海鰌海鰮、鮪梭魚、諸生菓、皆脾胃の発生の気をそこなふ。
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『養生訓』巻第三・飲食上一飯はよく熟して、中心まで和かなるべし。こはく粘きを忌む。煖なるに宜し。羹は熱きに宜し。酒は夏月も温なるべし。冷飲は脾胃をやぶる。冬月も熱飲すべからず。気を上せ血液をへらす。一飯を炊ぐに法多し。たきぼしは壮実なる人に宜し。饙は、積聚気滞ある人に宜し。湯取飯は、脾胃虚弱の人に宜し。粘りて糊の如くなるは滞塞す。硬きは消化し難し、新穀の飯は性つよくして虚人はあしし。殊に早稲は気を動かす、病人に忌む。晩稲は性かろくしてよし。
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