養生訓 / 巻第八・養老
一人の子となりては、其おやを養ふ道を知らずんばあるべからず。其心を樂ましめ、其心にそむかず、いからしめず、うれへしめず、其時の寒暑にしたがひ、其居室と其寢所をやすくし、其飮食を味よくして、まことを以て養ふべし。
新字:一人の子となりては、其おやを養ふ道を知らずんばあるべからず。其心を楽ましめ、其心にそむかず、いからしめず、うれへしめず、其時の寒暑にしたがひ、其居室と其寝所をやすくし、其飲食を味よくして、まことを以て養ふべし。
書き下し
一人の子となりては、其おやを養ふ道を知らずんばあるべからず。其心を楽ましめ、其心にそむかず、いからしめず、うれへしめず、其時の寒暑にしたがひ、其居室と其寝所をやすくし、其飲食を味よくして、まことを以て養ふべし。
現代語訳
人の子となっては、その親を養う道を知らなければなりません。その心を楽しませ、その心にそむかず、怒らせず、憂えさせず、その時の寒さ暑さに従い、その居間と寝所を安らかにし、その飲食を味よくして、真心をもって養うべきです。
解説
巻第八「養老」の冒頭で、子が老いた親を養う道の基本を簡潔に示した条です。心を楽しませ、そむかず、怒らせず、憂えさせず、住まいと食事を整えるという項目は、体の世話と心の世話を一体として捉える儒学の孝の考えに基づいています。何より「まことを以て」養えという結びが要で、形だけの世話では足りないという戒めです。介護の負担が大きな課題となっている今、親の心に寄り添うことの大切さを、改めて思い出させてくれる一条です。
この章句が説くこと
孝親養老真心家族
関連する章句
-
葉隠・聞書第一忠臣は孝子の門に尋ねよとあり。随分(ずいぶん)心を尽くして孝行すべき事なり。奉公に精を出す人は自然にはあれども、孝行に精出す人は稀なり。よき者には他人も懇(ねんご)ろに、亡き後にて残り多く、孝行に精出す人は稀なり。無理なる人、無理なる親にてなくば知れまじきなり。
-
論語・為政篇孟武伯孝を問う。子曰く、「父母は唯其の疾(やまい)を之憂う。」
-
『慎思録』巻之六凡そ子弟たる者は、須らく尊長の事に勤労すべし。自ら尊長の態を為して、安逸を為すこと勿かれ。凡そ人の子たるの礼は、須らく朝夕父母を定省すべし。或は居を同じくせざる者も、亦其の遠近に随ひて、毎日一たび省み、或は数日に一たび省みて、疏濶なること勿かれ。文王の世子たるや、王季に朝すること日に三たび、雞初めて鳴きて至り、日中に及びて又至り、莫に及びて又至る。世子すら猶ほ此くの如し。況んや賤しき者に於いてをや。
-
史記 五帝本紀堯乃ち舜に絺衣と琴とを賜ひ、為に倉廩を築き、牛羊を予ふ。瞽叟尚ほ復た之を殺さんと欲し、舜をして上りて廩を塗らしめ、瞽叟下より火を縦ちて廩を焚く。舜乃ち両笠を以て自ら扞ぎて下り、去りて、死せざるを得たり。後に瞽叟又舜をして井を穿たしむ。舜井を穿ちて匿空を為り旁らに出づ。舜既に入りて深きに、瞽叟・象共に土を下して井を実む。舜匿空より出でて、去る。瞽叟・象喜び、舜を以て已に死せりと為す。
-
『慎思録』巻之六家に居て孝ならず、君に事へて忠ならざるは、厥の罪惟れ鈞し。不忠の人は、君得て之を斥く。不孝の人は、父忍びて之を容る。惟だ幸ひにして免るるのみ。人の子たる者、父の忍び容るる所と為るは、此れ不孝の甚だしきなり。父の譴責を被らずと雖も、豈に恥づる心あらざるべけんや。
-
『和俗童子訓』巻之二・総論下一論語の、子曰く弟子入りては、則ち孝するの一章は、人の子となり弟となる者の法を、聖人の教へ給へるなり。我が家に在ては、まづ親に孝をなすべし。孝とは善く父母に事ふるをいふ。能く事ふるとは、孝の道を知りて力を尽すをいふ。力を尽すとは、我が身の力を尽してよく父母に事へ、財の力を尽して能く養ふをいふ。父母に事ふるには、力を惜むべからず。次に親の前を退き出でては、弟を行ふべし。弟は善く兄長に事ふるをいふ。兄は子のかみにて、親に近ければ、敬ひ従ふべし。もし兄より弟を愛せずとも、弟は弟の道を失ふべからず。兄の不友を似せて、不弟なるべからず。其外親戚傍輩の内にて、年老いたる長者をば、敬ひて侮る事なかれ。是弟の道なり。凡孝弟の二は、人の子弟の行の根本なり。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る