養生訓 / 巻第七・用薬
一棗は、大なるをえらび用ひて、核を去り、一服に半分入れ用ふべし。つかへやすき症には去るべし。利湯には、棗を用ふべからず。中夏の書には、利湯にも、方によりて棗を用ふ。日本の人には泥みやすし、加ふべからず。加ふれば藥力ぬるくなる。中滿食滯の症、及藥のつかへやすき人には、棗を加ふべからず。龍眼肉も、つかへやすき症には去るべし。
新字:一棗は、大なるをえらび用ひて、核を去り、一服に半分入れ用ふべし。つかへやすき症には去るべし。利湯には、棗を用ふべからず。中夏の書には、利湯にも、方によりて棗を用ふ。日本の人には泥みやすし、加ふべからず。加ふれば薬力ぬるくなる。中満食滞の症、及薬のつかへやすき人には、棗を加ふべからず。竜眼肉も、つかへやすき症には去るべし。
書き下し
一棗は、大なるをえらび用ひて、核を去り、一服に半分入れ用ふべし。つかへやすき症には去るべし。利湯には、棗を用ふべからず。中夏の書には、利湯にも、方によりて棗を用ふ。日本の人には泥みやすし、加ふべからず。加ふれば薬力ぬるくなる。中満食滞の症、及薬のつかへやすき人には、棗を加ふべからず。竜眼肉も、つかへやすき症には去るべし。
現代語訳
棗は大きいものを選んで用い、種を除いて、一服に半分入れて用いるべきです。つかえやすい症には除くべきです。利湯には棗を用いてはいけません。中国の書物では、利湯にも処方によって棗を用います。日本の人にはなずみやすいので、加えてはいけません。加えれば薬の力がぬるくなります。腹が張って食べ物がとどこおる症や、薬がつかえやすい人には、棗を加えてはいけません。竜眼肉も、つかえやすい症には除くべきです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『養生訓』巻第七・用薬一棗は、樹頭に在りてよく熟し、色の青きが白くなり、少し紅まじる時とるべし。青きはいまだ熟せず、皆紅なるは熟し過ぎて肉燗れてあしし。色少しあかくなり熟し過ぎざる時とり、日に久しくほし、よくかわきたる時蒸てほすべし。生にて蒸すべからず。生干もあしし。薬舖及市廛に売るは、未熟なるを干して売る故に性あしし、用ふべからず。或は樹上にて熟し過ぎたるも、ただれてあしし、用ふべからず。棗樹は、わが宅に必ず植うべし。熟してよき比の時とるべし。
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『養生訓』巻第七・用薬一補薬は、滞塞しやすし。滞塞すれば害あり、益なし、利薬を服するより、心を用ふべし。もし、大剤にして気塞がらば、小剤にすべし。或は、棗を去り、生姜を增すべし。補中益気湯などの、つかへて用ひがたきには、乾姜肉桂を加ふべき由、薛立斎が医案にいへり。又、症により、附子肉桂を少し加へ、升麻柴胡を用ふるに、二薬ともに火を忌めども、酒にて炒り用ふ。これ正伝或問の説なり。又升麻柴胡を去りて、桂姜を加ふる事あり。李時珍も、補薬に少し附子を加ふれば、其功鋭なりといへり。虚人の熱なき症に、薬力をめぐらさん為ならば、一服に五厘か一匁加ふべし。然れども、病症によるべし。壮人には忌むべし。
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『養生訓』巻第七・用薬一日本人は、中夏の人の健にして腸胃のつよきに及ばずして、薬を小服にするが宜しくとも、其形体大小相似たれば、其強弱の分量、などか中夏の人の半に及ぶべからざらんや。然らば、薬剤を今少し大にするが宜しかるべし。たとひ、昔よりあやまり来りて小服なりとも、過つては則改むるに憚る事なかれ。今の時医の薬剤を見るに、一服如此小にしては、補湯といへども、摂養の力なかるべし。況や利湯を用ふる病は、外、風寒肌膚をやぶり、大熱を生じ、内、飲食腸胃に塞がり、積滞の重き、欝結の甚しき、内外の邪気甚だ強き病をや。小なる薬力を以て、大なる病邪に勝がたき事、たとへば、一盃の水を以て、一車薪の火を救ふが如し。又、小兵を以て、大敵に勝ちがたきが如し。
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『養生訓』巻第七・用薬一薬剤一服、大小の分量、中夏の古法を考へ、本邦の土宜にかなひて、過不及なかるべし。近古、仲井家には、日本の土地民俗の風気に宜しとて、薬の重き八分を一服とす。医家によりて、一匁を一服とす。今の世医の薬剤は、一服の重さ六七分より一匁に至る。一匁より多きは、稀なり。中夏の薬剤は、医書を考ふるに、一服三匁より十匁に至る。東垣は、三匁を用ひて一服とせし事あり。中夏の人、煎湯の水を用ふる事は少く、薬一服は大なれば、煎汁甚濃くして、薬力つよく、病を治する事早しと云ふ。然るに、日本の薬如此小服なるは何ぞや。曰、日本の医の薬剤小服なる故三あり。
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『養生訓』巻第七・用薬一身体短小にして、腸胃小なる人、虚弱なる人は、薬を服するに、小服に宜し。されど一匁より少かるべからず。身体長大にて、腸胃ひろき人、つよき人は、薬大服に宜し。一小児の薬に、水をはかる盞は、一服の大小によりて、是も水五十匁より、五十五匁入るほどなる盞を用ふ。是亦、盞の重さを除きて、水の重さなり。利湯は、一服に水一盞入れ、七分に煎じ、二三度に用ふ。滓は、捨つべし。補湯には、水一盞半を用ひて、七分に煎じ、度々に熱服す。是亦滓は捨つべし。或は、滓にも水一盞入れ、半盞に煎じつめて用ふべし。
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『養生訓』巻第七・用薬一薬一服の大小軽重は、病症により人の大小強弱によりて增減すべし。補湯は、小剤にして少しづつ服し、おそく効をとるべし。多く用ひ過せば滞りふさがる。発散瀉下疎通の利湯は、大剤にしてつよきに宜し、早く効をとるべし。
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