養生訓 / 巻第五・二便
一常に大便祕結する人は、每日廁にのぼり、努力せずして、成るべきほどは、少しづつ通利すべし。如此すれば久しく祕結せず。一日月、星辰、北極、神廟に向ひて大小便すべからず。又日月のてらす地に小便すべからず。凡天神、地祇、人鬼おそるべし、あなどるべからず。
新字:一常に大便秘結する人は、毎日廁にのぼり、努力せずして、成るべきほどは、少しづつ通利すべし。如此すれば久しく秘結せず。一日月、星辰、北極、神廟に向ひて大小便すべからず。又日月のてらす地に小便すべからず。凡天神、地祇、人鬼おそるべし、あなどるべからず。
書き下し
一常に大便秘結する人は、毎日廁にのぼり、努力せずして、成るべきほどは、少しづつ通利すべし。如此すれば久しく秘結せず。一日月、星辰、北極、神廟に向ひて大小便すべからず。又日月のてらす地に小便すべからず。凡天神、地祇、人鬼おそるべし、あなどるべからず。
現代語訳
いつも便秘する人は、毎日厠に上がり、力まずに、出せる程度だけ少しずつ通じをつけるべきです。このようにすれば長く便秘しません。日・月・星・北極星・神社に向かって大小便をしてはいけません。また日や月の照らす地面に小便をしてはいけません。およそ天の神、地の神、人の霊は恐れるべきで、侮ってはいけません。
解説
便秘の人への日課と、用を足す場所の慎みを述べた単位です。毎日決まって厠に行き、力まずに出せるだけ出すという方法は、排便の習慣づけとして今も便秘対策の基本とされるものです。後半の、日月や神社に向かって用を足すなという戒めは、頭注によれば『達生録』の説で、天地や神々を敬う当時の心性を表しています。体の働きを整える実際的な工夫と、目に見えないものへの畏敬とが一つの条に並んでいるところに、益軒の養生観の広がりがうかがえます。
この章句が説くこと
便秘習慣畏敬二便養生
関連する章句
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『養生訓』巻第五・二便一うゑては坐して小便し、飽きては立ちて小便すべし。一二便は早く通じて去るべし。こらふるは害あり。もしは不意にいそがはしき事出来ては、二便を去るべきいとまなし。小便を久しく忍べば、たちまち小便ふさがりて通ぜざる病となる事あり。是を転脬と云ふ。又淋となる。大便をしばしば忍べば気痔となる。又大便をつとめて努力す可らず。気上り、目あしく、心さわぐ。害多し。自然に任すべし。只津液を生じ、身体をうるほし、腸胃の気をめぐらす薬をのむべし。麻仁、胡麻、杏仁、桃仁など食ふべし。秘結する食物、糕柿芥子など、禁じてくらふべからず。大便秘するは大なる害なし。小便久しく秘するは危し。
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『養生訓』巻第七・用薬一大便、瀉しやすきは大にあしく、少し秘するはよし。老人の秘結するは寿のしるしなり、尤よし。然れども、甚秘結するはあしし。凡そ人の脾胃つかへ食滞り、或は腹痛し不食し、気塞る病する人、世に多し。是多くは大便通じがたくして滞る故しかり。つかふるは大便つかふるなり。大便滞らざるやうに治すべし。麻仁、杏仁、胡麻など、つねに食すれば、腸胃うるほひて便結せず。
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『養生訓』巻第二・総論下一凡朝は早くおきて、手と面を洗ひ、髪をゆひ、事をつとめ、食後にはまづ腹を多くなで下し、食気をめぐらすべし。また京門のあたりを、手の食指のかたはらにて、すぢかひにしばしば撫づべし。腰をなで下して後、下にて静かにうつべし。あらくすべからず。もし食気滞らば、面を仰ぎて三四度食毒の気を吐くべし。朝夕の食後に、久しく安坐すべからず、必ずねぶり臥すべからず。久しく坐し、睡り臥せば、気ふさがりて病となり、久しきをつめば命みじかし。食後に毎度歩行する事、三百歩すべし。をりをり五六町歩行するは、尤よし。
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『養生訓』巻第五・五官一坐するには正坐すべし、かたよるべからず。燕居には安坐すべし、膝をかがむべからず。又よりより牀几にこしかけ居れば、気めぐりてよし。中夏の人は常にかくのごとくす。一常に居る室も、常に用ふる器も、かざりなく質朴にして、けがれなく潔かるべし。居室は風寒をふせぎ、身をおくに安からしむべし。器は用をかなへて、事欠けざれば事足りぬ。華美を好めばくせとなり、おごりむさぼりの心おこりて、心を苦しめ、事多くなる。養生の道に害あり。坐する処、臥す処、少しも透間あらば塞ぐべし。すき間の風と、吹き通す風は、人のはだへに通りやすくして病おこる。おそるべし。夜臥して、耳辺に風の来る穴あらば、ふさぐべし。
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『養生訓』巻第一・総論上一身体は日々少しづつ労動すべし。久しく安坐すべからず。毎日飯後に、必ず庭圃の内数百足しづかに歩行すべし。雨中には室屋の内を幾度も徐行すべし。此くの如く日々朝晩運動すれば、鍼灸を用ひずして、飲食気血の滞なくして病なし。鍼灸をして、熱痛甚しき身の苦をこらへんより、かくの如くせば病なくして安楽なるべし。
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『養生訓』巻第二・総論下一養生の道、多くいふ事を用ひず。只飲食をすくなくし、病をたすくる物を食はず、色慾をつつしみ、精気ををしみ、怒哀憂思を過さず、心を平らかにして気を和け、言をすくなくし、無用の事をはぶき、風寒暑湿の外邪をふせぎ、又時々身を動かし、歩行し、時ならずしてねぶり臥す事なく、食気をめぐらすべし。是養生の要なり。
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