養生訓 / 巻第五・五官
翌朝おきんとする時、又足をのべてあたゝむべし。又ふたの熱きを木棉袋に入れて、腹と腰をあたゝむ。葢二三こしらへ置き、とりかへて腹腰をあたゝむべし。取手なきふたを以ては、腰をあたゝむ。腰の下に敷くべし。溫石より速に熱くなりて自由なり。急用に備ふべし。腹中の食滯氣滯をめぐらして、消化しやすき事、溫石竝に藥石よりはやし。甚要用の物なり。此事知れる人すくなし。
新字:翌朝おきんとする時、又足をのべてあたゝむべし。又ふたの熱きを木棉袋に入れて、腹と腰をあたゝむ。葢二三こしらへ置き、とりかへて腹腰をあたゝむべし。取手なきふたを以ては、腰をあたゝむ。腰の下に敷くべし。温石より速に熱くなりて自由なり。急用に備ふべし。腹中の食滞気滞をめぐらして、消化しやすき事、温石並に薬石よりはやし。甚要用の物なり。此事知れる人すくなし。
書き下し
翌朝おきんとする時、又足をのべてあたたむべし。又ふたの熱きを木棉袋に入れて、腹と腰をあたたむ。葢二三こしらへ置き、とりかへて腹腰をあたたむべし。取手なきふたを以ては、腰をあたたむ。腰の下に敷くべし。温石より速に熱くなりて自由なり。急用に備ふべし。腹中の食滞気滞をめぐらして、消化しやすき事、温石並に薬石よりはやし。甚要用の物なり。此事知れる人すくなし。
現代語訳
翌朝起きようとするときにも、また足を伸ばして温めるべきです。また熱くなったふたを木綿の袋に入れて、腹と腰を温めます。ふたを二、三枚こしらえておき、取りかえて腹と腰を温めるのがよいです。取っ手のないふたでは腰を温めます。腰の下に敷くべきです。温石よりも早く熱くなって自由がききます。急な用に備えておくべきです。腹の中の食べ物や気のとどこおりをめぐらせて消化しやすくすることは、温石や薬よりも早いものです。たいへん大切な物です。このことを知っている人は少ないのです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『養生訓』巻第五・五官一瓦火桶と云ふ物京都に多し。桐火桶の製に似て大なり。瓦にて作る。高さ五寸四分、足は、此外なり。縦のわたり八寸三分、横のわたり七寸、縦横少し長短あるべし。或は形まるくして、縦横なきもよし。上の形まるき事桐火桶のごとし。めぐりにすかし窓ありて、火気をもらすべし。上に口あり、ふたあり、ふたの広さ、よこ三寸、たて三寸余なるべし。まるきもよし。葢に取手あり、ふた二三の内、一は取手なきがよし。やはらかなる灰を入れ置き、用ひんとする時、宵より小なる炭火を一二入れて、臥さんとする前より、早く衾の下に置き、臥して後、足をのべてあたたむべし、上気する人は早く遠ざくべし。足あたたまらば、火桶を足にてふみ退け、足を引きてかがめ臥すべし。
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『養生訓』巻第五・洗浴桶を出でんとする時、もし湯ぬるくして、身あたたまらずば、くりはめたる炉に、火を少し焚てよし。湯熱くならんとせば、早く火を去るべし。如此すれば害なし。一泄痢し、及び食滞腹痛に、温湯に浴し、身腹をあたたむれば、気めぐりて病いゆ。甚しるしあり。初発の病には、薬を服するにまされり。
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『養生訓』巻第五・五官一臥す時、童子に手を以て合せ擦らせ熱せしめて、わが腎堂を久しく摩でしめ、足心をひさしく摩でしむべし。みづから如此するもよし。又腎堂の下、臀の上をしづかにうたしむべし。一毎夜臥さんとするとき、櫛にて髪をしきりにけづり、湯にて足を洗ふべし。是よく気をめぐらす。又臥にのぞんで、煎茶に塩を加へ、口をすすぐべし。口中を清くし、牙歯を堅くす。下茶よし。
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『養生訓』巻第五・五官一入門に曰、年四十以上は、事なき時は、つねに目を瞑ぎて宜し。要事なくんば開くべからず。一衾炉は炉上に櫓をまうけ、衾をかけて、火を入れ、身をあたたむ。俗にこたつと云ふ。是にあたれば、身をあたため過し、気ゆるまり、身おこたり、気を上せ、目をうれふ。只中年以上の人は、火をぬるくしてあたり、寒をふせぐべし。足を出して箕踞すべからず。わかき人は用ふる事なかれ。わかき人は、厳寒の時、只炉火に対し、又たき火にあたるべし。身をあたため過すべからず。
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『養生訓』巻第五・五官一熱湯にて口をすすぐべからず、歯を損ず。一千金方曰、食し終るごとに、手を以て面をすり、腹をなで、津液を通流すべし。行歩する事数百歩すべし。飲食して即ち臥せば百病生ず。飲食して仰きに臥せば気痞となる。一医説曰、食して後、体倦むとも、即ち寝ぬる事なかれ。身を運動し、二三百歩しづかに歩行して後、帯をとき、衣をくつろげ、腰をのべて端坐し、両手にて心腹を按摩して、縦横に往来する事二十遍、又両手を以て、脇腰の間より、おさへ摩でて下る事数十遍ばかりにして、心腹の気ふさがらしめず、食滞手に随つて消化す。
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『養生訓』巻第五・洗浴一あつからざる温湯を、少し盥に入れて、別の温湯を肩背より少しづつそそぎ、早くやむれば、気よくめぐり、食を消す。寒月は身あたたまり、陽気を助く、汗を発せず。如此すれば、しばしば浴するも害なし。しばしば浴するには、肩背は湯をそそぎたるのみにて、垢を洗はず、只下部を洗ひて早くやむべし。久しく浴し、身を温め過すべからず。
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