養生訓 / 巻第四・飲茶烟草附
一茶は冷なり、酒は溫なり。酒は氣をのぼせ、茶は氣を下す。酒に醉へばねむり、茶をのめばねむりさむ。其性うらおもてなり。一あつものも湯茶も多く飮むべからず。多く飮めば脾胃に濕を生ず。脾胃は濕をきらふ。湯茶あつものを飮む事すくなければ、脾胃の陽氣さかんに生發して、面色光りうるはし。
新字:一茶は冷なり、酒は温なり。酒は気をのぼせ、茶は気を下す。酒に酔へばねむり、茶をのめばねむりさむ。其性うらおもてなり。一あつものも湯茶も多く飲むべからず。多く飲めば脾胃に湿を生ず。脾胃は湿をきらふ。湯茶あつものを飲む事すくなければ、脾胃の陽気さかんに生発して、面色光りうるはし。
書き下し
一茶は冷なり、酒は温なり。酒は気をのぼせ、茶は気を下す。酒に酔へばねむり、茶をのめばねむりさむ。其性うらおもてなり。一あつものも湯茶も多く飲むべからず。多く飲めば脾胃に湿を生ず。脾胃は湿をきらふ。湯茶あつものを飲む事すくなければ、脾胃の陽気さかんに生発して、面色光りうるはし。
現代語訳
茶は冷たく、酒は温かい性質です。酒は気をのぼらせ、茶は気を下します。酒に酔えば眠くなり、茶を飲めば眠気が覚めます。その性質は裏と表です。汁物も湯茶も多く飲んではいけません。多く飲めば脾胃に湿を生じます。脾胃は湿を嫌います。湯茶や汁物を飲むことが少なければ、脾胃の陽気が盛んに生き生きと働いて、顔色もつやつやと美しくなります。
解説
茶と酒の性質を対比し、さらに水分のとり過ぎを戒めた単位です。冷と温、気を下すとのぼらせる、眠気を覚ますと誘うという対比は、陰陽の考え方を身近な飲み物で示したものです。また汁物や湯茶を多く飲むと脾胃に湿がたまり、少なければ胃腸の働きが盛んになって顔色もよくなると説きます。当時の医学に基づく説で、脱水を防ぐ今の考え方とは異なる面もありますが、何事も過ぎれば害になるという節度の考え方は一貫しています。
この章句が説くこと
茶酒陰陽脾胃湿
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