養生訓 / 巻第四・飲食下
一菘は、京都のはたけ菜、水菜、ゐなかの京菜なり、蕪の類なり。世俗あやまりて、ほりいりなど訓ず。味よけれども性よからず。仲景曰、藥中に甘草ありて、菘を食へば病除かず。根は九、十月の比食へば、味淡くして可なり。うすく切りてくらふべし。あつく切りたるは氣をふさぐ。十一月以後、胃虚の人くらへば滯塞す。
新字:一菘は、京都のはたけ菜、水菜、ゐなかの京菜なり、蕪の類なり。世俗あやまりて、ほりいりなど訓ず。味よけれども性よからず。仲景曰、薬中に甘草ありて、菘を食へば病除かず。根は九、十月の比食へば、味淡くして可なり。うすく切りてくらふべし。あつく切りたるは気をふさぐ。十一月以後、胃虚の人くらへば滞塞す。
書き下し
一菘は、京都のはたけ菜、水菜、ゐなかの京菜なり、蕪の類なり。世俗あやまりて、ほりいりなど訓ず。味よけれども性よからず。仲景曰、薬中に甘草ありて、菘を食へば病除かず。根は九、十月の比食へば、味淡くして可なり。うすく切りてくらふべし。あつく切りたるは気をふさぐ。十一月以後、胃虚の人くらへば滞塞す。
現代語訳
菘は、京都の畑菜、水菜、田舎でいう京菜のことで、蕪の仲間です。世間ではまちがえて「ほりいり」などと読んでいます。味はよいけれども性質はよくありません。張仲景は「薬の中に甘草があるときに菘を食べると、病が除かれない」と言っています。根は九月・十月ごろに食べれば、味が淡くてよいでしょう。薄く切って食べるべきです。厚く切ったものは気をふさぎます。十一月以後は、胃の弱い人が食べると胃がつかえます。
解説
菘(京菜・水菜の類)について、名前の混乱を正しつつ、食べ方の注意を述べた条です。漢方の祖とされる後漢の張仲景の説を引き、甘草を含む薬を飲んでいるときの食べ合わせにも触れています。本草学者としての益軒は、和名と漢名の対応を正すことにも熱心でした。味のよさと体への合い方は別物だという指摘や、時季と切り方で負担を減らす工夫は、好きな食べ物を体調に合わせて楽しむ知恵として、今の食生活にも通じます。
この章句が説くこと
菘食べ合わせ本草脾胃季節
関連する章句
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