養生訓 / 巻第三・飲食上
一諸獸の肉は、日本の人腸胃薄弱なる故に宜しからず。多く食ふべからず。烏賊、章魚など多く食ふべからず。消化しがたし。雞子、鴨子、丸ながら煮たるは氣をふさぐ。はふはと俗の稱するはよし。肉も菜も大に切りたる物、又丸ながら煑たるは、皆氣をふさぎて、つかへやすし。
新字:一諸獣の肉は、日本の人腸胃薄弱なる故に宜しからず。多く食ふべからず。烏賊、章魚など多く食ふべからず。消化しがたし。鶏子、鴨子、丸ながら煮たるは気をふさぐ。はふはと俗の称するはよし。肉も菜も大に切りたる物、又丸ながら煑たるは、皆気をふさぎて、つかへやすし。
書き下し
一諸獣の肉は、日本の人腸胃薄弱なる故に宜しからず。多く食ふべからず。烏賊、章魚など多く食ふべからず。消化しがたし。鶏子、鴨子、丸ながら煮たるは気をふさぐ。はふはと俗の称するはよし。肉も菜も大に切りたる物、又丸ながら煑たるは、皆気をふさぎて、つかへやすし。
現代語訳
諸々の獣の肉は、日本の人は腸胃が弱いのでよくありません。多く食べてはいけません。いかやたこなども多く食べてはいけません。消化しにくいのです。鶏卵や鴨の卵を丸ごと煮たものは気をふさぎます。俗に「ふわふわ」と呼ぶものはよいのです。肉も野菜も大きく切ったもの、また丸ごと煮たものは、みな気をふさいで胃につかえやすいのです。
解説
日本人の胃腸は弱いので獣の肉は多く食べるべきではないと説く条です。肉食が一般的でなかった江戸時代の食生活を反映した見方で、今の栄養学から見ればそのまま当てはまるわけではありません。ただ、消化しにくい物を大きなまま食べるなという注意は今も有効です。卵を丸ごと固く煮るより、溶いてふんわり仕上げた「ふわふわ」がよいというのは、江戸時代に好まれた卵料理を指しています。消化のよい調理法を選ぶ工夫は、病人食や離乳食にも通じます。
この章句が説くこと
肉消化卵調理養生
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