養生訓 / 巻第二・総論下
一津液は一身のうるほひなり。化して精血となる、草木に精液なければ枯る。大せつの物なり。津液は臟腑より口中に出づ。をしみて吐くべからず。殊に遠くつばき吐くべからず。氣へる。一津液をばのむべし、吐くべからず。痰をば吐くべし、のむべからず。痰あらば、紙にて取るべし、遠く吐くべからず。水飮津液すでに滯りて、痰となりて內にありては、再び津液とはならず。痰内にあれば、氣をふさぎてかへつて害あり。此の理を知らざる人、痰を吐かずしてのむは、ひが事なり。痰を吐く時、氣をもらすべからず。酒多く飮めば痰を生じ、氣を上せ津液をへらす。
新字:一津液は一身のうるほひなり。化して精血となる、草木に精液なければ枯る。大せつの物なり。津液は臓腑より口中に出づ。をしみて吐くべからず。殊に遠くつばき吐くべからず。気へる。一津液をばのむべし、吐くべからず。痰をば吐くべし、のむべからず。痰あらば、紙にて取るべし、遠く吐くべからず。水飲津液すでに滞りて、痰となりて内にありては、再び津液とはならず。痰内にあれば、気をふさぎてかへつて害あり。此の理を知らざる人、痰を吐かずしてのむは、ひが事なり。痰を吐く時、気をもらすべからず。酒多く飲めば痰を生じ、気を上せ津液をへらす。
書き下し
一津液は一身のうるほひなり。化して精血となる、草木に精液なければ枯る。大せつの物なり。津液は臓腑より口中に出づ。をしみて吐くべからず。殊に遠くつばき吐くべからず。気へる。一津液をばのむべし、吐くべからず。痰をば吐くべし、のむべからず。痰あらば、紙にて取るべし、遠く吐くべからず。水飲津液すでに滞りて、痰となりて内にありては、再び津液とはならず。痰内にあれば、気をふさぎてかへつて害あり。此の理を知らざる人、痰を吐かずしてのむは、ひが事なり。痰を吐く時、気をもらすべからず。酒多く飲めば痰を生じ、気を上せ津液をへらす。
現代語訳
津液(つば)は全身のうるおいです。変化して精や血となります。草木も精液がなければ枯れます。大切なものです。津液は臓腑から口の中に出てきます。惜しんで吐いてはいけません。とりわけ遠くにつばを吐いてはいけません。気が減ります。津液は飲み込むべきで、吐いてはいけません。痰は吐くべきで、飲み込んではいけません。痰があれば紙で取りなさい。遠くへ吐いてはいけません。水分や津液がすでに滞って痰となり体内にあるものは、再び津液には戻りません。痰が体内にあれば、気をふさいでかえって害があります。この道理を知らない人が痰を吐かずに飲み込むのは間違いです。痰を吐くときは気を漏らしてはいけません。酒を多く飲めば痰を生じ、気をのぼせ、津液を減らします。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『養生訓』巻第二・総論下およそ人の身、慾をすくなくし、時々身をうごかし、手足をはたらかし歩行して、久しく一所に安坐せざれば、血気めぐりて滞らず。養生の要務なり。日々かくのごとくすべし。呂氏春秋に曰く、流水は腐らず、戸枢は螻まず、動けばなり、形気も亦然り。いふ意は、流水は腐らず、たまり水はくさる。から戸のぢくの下のくるるは虫くはず。此二のものは、つねに動く故わざはひなし。人の身も亦かくの如し。一所に久しく安坐してうごかざれば、飲食とどこほり、血気めぐらずして病を生ず。食後に臥すと、昼臥すと、尤禁ずべし。夜も飲食の消化せざる内に早く臥せば、気をふさぎ病を生ず。是養生の道において尤いむべし。
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『養生訓』巻第一・総論上一養生の術は、先心気を養ふべし。心を和かにし、気を平かにし、いかりと慾とをおさへ、うれひ思ひをすくなくし、心をくるしめず、気をそこなはず、是心気を養ふ要道なり。又臥す事を好むべからず。久しく睡り臥せば気滞りてめぐらず。飲食いまだ消化せざるに早く臥し睡れば、食気ふさがりて甚元気をそこなふ。いましむべし。酒は微酔に飲み、半酣をかぎりとすべし。食は半飽に食ひて、十分に満つべからず。酒食ともに限を定めて、節にこゆべからず。又わかき時より、色慾をつつしみ、精気を惜むべし。精気を多くつひやせば、下部の気よわくなり、元気の根本たえて、必ず命短し。もし飲食色慾の慎なくば、日々補薬を服し、朝夕食補をなすとも、益なかるべし。
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『養生訓』巻第五・五官ねぶりて後、よだれ出てあしし。あふのきて臥すべからず、おそはれやすし。手の両の大指をかがめ、残る四の指にてにぎりて臥せば、手、胸の上をふさがずして、おそはれず。後には習となりて、ねぶりの内にもひらかず。此法、病源候論と云ふ医書に見えたり。夜臥す時にのどに痰あらば、必ず吐くべし。痰あれば、ねぶりて後おそはれ苦む。老人は夜臥す時痰を去る薬をのむべし、と医書にいへるも、此ゆゑなるべし。晩食夜食に、気をふさぎ痰をあつむる物食ふべからず。おそはれん事をおそれてなり。
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『養生訓』巻第二・総論下一養生の道、多くいふ事を用ひず。只飲食をすくなくし、病をたすくる物を食はず、色慾をつつしみ、精気ををしみ、怒哀憂思を過さず、心を平らかにして気を和け、言をすくなくし、無用の事をはぶき、風寒暑湿の外邪をふせぎ、又時々身を動かし、歩行し、時ならずしてねぶり臥す事なく、食気をめぐらすべし。是養生の要なり。
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『養生訓』巻第二・総論下一養生の道は、たのむを戒む。わが身のつよきをたのみ、若きをたのみ、病の少しいゆるをたのむ、是皆わざはひの本なり。刃の鋭きをたのんで、かたき物を切れば刃折る。気のつよきをたのんで、みだりに気をつかへば気へる。脾腎のつよきをたのんで、飲食色慾を過せば病となる。
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『養生訓』巻第一・総論上一凡養生の道は、内慾をこらふるを以て本とす。本をつとむれば、元気つよくして外邪おかさず。内慾を慎まずして、元気よわければ、外邪にやぶられ易くして、大病となりて命をたもたず。内慾をこらふるに、其の大なる条目は、飲食をよきほどにして過さず、脾胃をやぶり病を発する物をくらはず。色慾をつつしみて精気を惜み、時ならずして臥さず。久しく睡る事をいましめ、久しく安坐せず。時々身をうごかして、気をめぐらすべし。殊に食後には、必ず数百歩歩行すべし。若久しく安坐し、又食後に穏坐し、ひる寝ね、食気いまだ消化せざるに早く臥しねぶれば、滞りて病を生じ、久しきをつめば、元気発生せずしてよわくなる。常に元気をへらす事を惜みて、言語をすくなくし、七情をよきほどにし、七情の内にて、取わき、いかり、かなしみ、うれひ、思ひをすくなくすべし。
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