養生訓 / 巻第一・総論上
忍の字を禁じて、外邪をこらへて久しくあたるべからず。古語に、風を防ぐ事箭を防ぐが如くすといへり。四氣の内風寒尤おそるべし。久しく風寒にあたるべからず。凡是外敵をふせぐ兵法なり。内敵にかつには、けなげにして强くかつべし。外敵をふせぐは、おそれて早くしりぞくべし。けなげなるは惡しし。
新字:忍の字を禁じて、外邪をこらへて久しくあたるべからず。古語に、風を防ぐ事箭を防ぐが如くすといへり。四気の内風寒尤おそるべし。久しく風寒にあたるべからず。凡是外敵をふせぐ兵法なり。内敵にかつには、けなげにして強くかつべし。外敵をふせぐは、おそれて早くしりぞくべし。けなげなるは悪しし。
書き下し
忍の字を禁じて、外邪をこらへて久しくあたるべからず。古語に、風を防ぐ事箭を防ぐが如くすといへり。四気の内風寒尤おそるべし。久しく風寒にあたるべからず。凡是外敵をふせぐ兵法なり。内敵にかつには、けなげにして強くかつべし。外敵をふせぐは、おそれて早くしりぞくべし。けなげなるは悪しし。
現代語訳
外敵には忍の字を禁じて、外邪をこらえて長く当たってはなりません。昔の言葉に、風を防ぐことは矢を防ぐようにせよと言います。四気のうちでは風と寒がもっとも恐るべきです。長く風や寒さに当たってはなりません。およそこれが外敵を防ぐ兵法です。内敵に勝つには、けなげに強く勝つべきです。外敵を防ぐには、恐れて早く退くべきです。けなげなのは悪いのです。
解説
内敵には忍が大切ですが、外敵に対しては忍んではならない、と益軒は念を押します。寒さや風を我慢して浴び続けるのは勇気ではなく愚かさだというのです。風を防ぐこと矢を防ぐが如くという古語は、中国の医書にも見える教えです。寒さを我慢して薄着で出かける、雨に濡れたまま過ごすといった無理は、今でも体調を崩す原因になります。我慢すべきことと、我慢してはいけないことを見分けるのが、賢い養生だといえます。
この章句が説くこと
外邪風寒忍畏養生
関連する章句
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『養生訓』巻第一・総論上敵にかたざれば、必ずせめ亡されて身を失ふ。内外の敵にかちて身をたもつも、其の術を知りて能くふせぐによれり。生れつきたる気つよけれど、術を知らざれば身を守りがたし。たとへば武将の、勇あれども知なくして兵の道をしらざれば、敵にかちがたきが如し。内敵にかつには、心つよくして忍の字を用ふべし。忍はこらふるなり。飲食好色などの欲は、心つよくこらへて、恣にすべからず。心よわくしては内欲にかちがたし。内欲にかつ事は猛将の敵をとりひしぐが如くすべし。是内敵にかつ兵法なり。外敵にかつには、畏の字を用ひて早くふせぐべし。たとへば城中にこもり、四面に敵をうけて、ゆだんなく敵をふせぎ、城をかたく保つが如くなるべし。風寒暑湿にあはば、恐れて早くふせぎ退くべし。
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『養生訓』巻第一・総論上一およそ人の身は、弱くもろくしてあだなる事、風前の灯のきえやすきが如し。あやふきかな。つねに慎みて身をたもつべし。況んや内外より身をせむる敵多きをや。先飲食の欲、好色の欲、睡臥の欲、或は怒悲憂を以て身をせむ。是等は皆我が身の内よりおこりて、身をせむる欲なれば内敵なり。中について、飲食好色は内欲より外敵を引き入る。尤恐るべし。風寒暑湿は身の外より入りて我を攻むる物なれば、外敵なり。人の身は金石に非ず、やぶれやすし。況や内外に大敵をうくる事かくの如くにして、内の慎外の防なくしては、多くの敵にかちがたし。至りてあやふきかな。此の故に人々長命をたもちがたし。用心きびしくして、常に内外の敵をふせぐ計策なくんばあるべからず。
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『養生訓』巻第一・総論上一風寒暑湿は外邪なり。是にあたりて病となり、死ぬるは天命なり。聖賢といへども免れがたし。されども、内気実してよくつつしみ防がば、外邪のおかす事も亦まれなるべし。飲食色慾によりて病生ずるは、全く我身より出づる過なり。是天命にあらず、わが身のとがなり。万の事、天より出づるは力に及ばず、わが身に出づる事は力を用ひて為しやすし。風寒暑湿の外邪をふせがざるは怠なり。飲食好色の内慾を忍ばざるは過なり。怠と過とは、皆慎まざるよりおこる。
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『養生訓』巻第一・総論上一養生の術は、先わが身をそこなふ物を去るべし。身をそこなふ物は、内慾と外邪となり。内慾とは、飲食の慾、好色の慾、睡の慾、言語をほしいままにするの慾と、喜怒憂思悲恐驚の七情の慾を云ふ。外邪とは天の四気なり、風寒暑湿を云ふ。内慾をこらへて少くし、外邪をおそれてふせぐ。是を以て元気をそこなはず、病なくして天年を永くたもつべし。
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『養生訓』巻第一・総論上慾をおさへ、心を平にし、気を和かにして暴くせず、静かにして騒がしからず、心はつねに和楽なるべし。憂ひ苦むべからず。是皆内慾をこらへて、元気を養ふ道なり。又風寒暑湿の外邪を防ぎてやぶられず。此の内外の数の慎は、養生の大なる条目なり。是をよく慎み守るべし。
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『養生訓』巻第一・総論上又風寒暑湿の外邪をおそれふせぎ、起居動静を節にし慎み、食後には歩行して身を動かし、時々導引して腰腹を撫ですり、手足をうごかし労動して血気をめぐらし、飲食を消化せしむべし。一所に久しく安坐すべからず。是皆養生の要なり。養生の道は病なき時つつしむにあり。病発りて後、薬を用ひ、針灸を以て病をせむるは養生の末なり。本をつとむべし。
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