養生訓 / 巻第一・総論上
又風寒暑濕の外邪をおそれふせぎ、起居動靜を節にし愼み、食後には歩行して身を動かし、時々導引して腰腹を撫ですり、手足をうごかし勞動して血氣をめぐらし、飮食を消化せしむべし。一所に久しく安坐すべからず。是皆養生の要なり。養生の道は病なき時つゝしむにあり。病發りて後、藥を用ひ、針灸を以て病をせむるは養生の末なり。本をつとむべし。
新字:又風寒暑湿の外邪をおそれふせぎ、起居動静を節にし慎み、食後には歩行して身を動かし、時々導引して腰腹を撫ですり、手足をうごかし労動して血気をめぐらし、飲食を消化せしむべし。一所に久しく安坐すべからず。是皆養生の要なり。養生の道は病なき時つゝしむにあり。病発りて後、薬を用ひ、針灸を以て病をせむるは養生の末なり。本をつとむべし。
書き下し
又風寒暑湿の外邪をおそれふせぎ、起居動静を節にし慎み、食後には歩行して身を動かし、時々導引して腰腹を撫ですり、手足をうごかし労動して血気をめぐらし、飲食を消化せしむべし。一所に久しく安坐すべからず。是皆養生の要なり。養生の道は病なき時つつしむにあり。病発りて後、薬を用ひ、針灸を以て病をせむるは養生の末なり。本をつとむべし。
現代語訳
また風・寒・暑・湿の外邪を恐れて防ぎ、起居や動静を節度あるものにして慎み、食後には歩いて体を動かし、時々導引をして腰や腹をなでさすり、手足を動かし体を働かせて血気をめぐらせ、飲食を消化させるべきです。一か所に長く座り込んではなりません。これらはみな養生の要です。養生の道は、病のない時に慎むことにあります。病が起こってから薬を用い、鍼や灸で病を攻めるのは養生の末です。根本に努めるべきです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『養生訓』巻第一・総論上一身体は日々少しづつ労動すべし。久しく安坐すべからず。毎日飯後に、必ず庭圃の内数百足しづかに歩行すべし。雨中には室屋の内を幾度も徐行すべし。此くの如く日々朝晩運動すれば、鍼灸を用ひずして、飲食気血の滞なくして病なし。鍼灸をして、熱痛甚しき身の苦をこらへんより、かくの如くせば病なくして安楽なるべし。
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『養生訓』巻第二・総論下一養生の道、多くいふ事を用ひず。只飲食をすくなくし、病をたすくる物を食はず、色慾をつつしみ、精気ををしみ、怒哀憂思を過さず、心を平らかにして気を和け、言をすくなくし、無用の事をはぶき、風寒暑湿の外邪をふせぎ、又時々身を動かし、歩行し、時ならずしてねぶり臥す事なく、食気をめぐらすべし。是養生の要なり。
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『養生訓』巻第一・総論上一養生の術は、つとむべき事をよくつとめて、身をうごかし、気をめぐらすをよしとす。つとむべき事をつとめずして、臥す事を好み、身をやすめおこたりて動かさざるは、甚養生に害あり。久しく安坐し、身を動さざれば、元気めぐらず、食気とどこほりて病おこる。殊に臥す事を好み、ねぶり多きを忌む。食後には必ず数百歩歩行して、気をめぐらし、食を消すべし。ねぶり臥すべからず。父母につかへて力をつくし、君につかへてまめやかにつとめ、朝は早くおき、夕はおそく寝ね、四民ともに我が家事をよくつとめておこたらず。士となれる人は、いとけなき時より、書をよみ、手を習ひ、礼楽をまなび、弓を射、馬にのり、武芸をならひて、身をうごかすべし。
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『養生訓』巻第一・総論上一凡薬と鍼灸を用ふるは、やむ事を得ざる下策なり。飲食色慾を慎み、起臥を時にして、養生をよくすれば病なし。腹中痞満して、食気つかふる人も、朝夕歩行し、身を労動して、久坐久臥を禁ぜば、薬と鍼灸とを用ひずして、痞塞のうれひなかるべし。是上策とす。薬は皆気の偏なり。参芪朮甘の上薬といへども、其の病に応せざれば害あり。況や中下の薬は、元気を損じ、他病を生ず。鍼は瀉ありて補なし。病に応ぜざれば元気をへらす。灸もその病に応ぜざるに、妄に灸すれば、元気をへらし、気を上す。薬と鍼灸と、損益ある事かくのごとし。やむ事を得ざるに非ずんば、鍼灸薬を用ふべからず、只保生の術を頼むべし。
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『養生訓』巻第二・総論下およそ人の身、慾をすくなくし、時々身をうごかし、手足をはたらかし歩行して、久しく一所に安坐せざれば、血気めぐりて滞らず。養生の要務なり。日々かくのごとくすべし。呂氏春秋に曰く、流水は腐らず、戸枢は螻まず、動けばなり、形気も亦然り。いふ意は、流水は腐らず、たまり水はくさる。から戸のぢくの下のくるるは虫くはず。此二のものは、つねに動く故わざはひなし。人の身も亦かくの如し。一所に久しく安坐してうごかざれば、飲食とどこほり、血気めぐらずして病を生ず。食後に臥すと、昼臥すと、尤禁ずべし。夜も飲食の消化せざる内に早く臥せば、気をふさぎ病を生ず。是養生の道において尤いむべし。
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『養生訓』巻第一・総論上一凡養生の道は、内慾をこらふるを以て本とす。本をつとむれば、元気つよくして外邪おかさず。内慾を慎まずして、元気よわければ、外邪にやぶられ易くして、大病となりて命をたもたず。内慾をこらふるに、其の大なる条目は、飲食をよきほどにして過さず、脾胃をやぶり病を発する物をくらはず。色慾をつつしみて精気を惜み、時ならずして臥さず。久しく睡る事をいましめ、久しく安坐せず。時々身をうごかして、気をめぐらすべし。殊に食後には、必ず数百歩歩行すべし。若久しく安坐し、又食後に穏坐し、ひる寝ね、食気いまだ消化せざるに早く臥しねぶれば、滞りて病を生じ、久しきをつめば、元気発生せずしてよわくなる。常に元気をへらす事を惜みて、言語をすくなくし、七情をよきほどにし、七情の内にて、取わき、いかり、かなしみ、うれひ、思ひをすくなくすべし。
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