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養生訓 / 巻第一・総論上

一身をたもち生を養ふに、一字の至れる要訣あり。是を行へば、生命を長くたもちて病なし。おやに孝あり、君に忠あり、家をたもち、身を保つ。行ふとしてよろしからざる事なし。其の一字なんぞや、畏の字是なり。畏るゝとは身を守る心法なり。事ごとに心を小にして氣にまかせず、過なからん事を求め、つねに天道をおそれて愼みしたがひ、人慾を畏れてつゝしみ忍ぶにあり。是畏るゝは愼みにおもむく初なり。畏るればつゝしみ生ず。畏れざればつゝしみなし。故に、朱子晩年に敬の字をときて曰く、敬は畏の字これに近し。

新字:一身をたもち生を養ふに、一字の至れる要訣あり。是を行へば、生命を長くたもちて病なし。おやに孝あり、君に忠あり、家をたもち、身を保つ。行ふとしてよろしからざる事なし。其の一字なんぞや、畏の字是なり。畏るゝとは身を守る心法なり。事ごとに心を小にして気にまかせず、過なからん事を求め、つねに天道をおそれて慎みしたがひ、人慾を畏れてつゝしみ忍ぶにあり。是畏るゝは慎みにおもむく初なり。畏るればつゝしみ生ず。畏れざればつゝしみなし。故に、朱子晩年に敬の字をときて曰く、敬は畏の字これに近し。

書き下し

一身をたもち生を養ふに、一字の至れる要訣あり。是を行へば、生命を長くたもちて病なし。おやに孝あり、君に忠あり、家をたもち、身を保つ。行ふとしてよろしからざる事なし。其の一字なんぞや、畏の字是なり。畏るるとは身を守る心法なり。事ごとに心を小にして気にまかせず、過なからん事を求め、つねに天道をおそれて慎みしたがひ、人慾を畏れてつつしみ忍ぶにあり。是畏るるは慎みにおもむく初なり。畏るればつつしみ生ず。畏れざればつつしみなし。故に、朱子晩年に敬の字をときて曰く、敬は畏の字これに近し。

現代語訳

身を保ち生を養うのに、一字の至極の秘訣があります。これを行えば、命を長く保って病もありません。親に孝行し、主君に忠実であり、家を保ち、身を保ちます。行ってよくないことはありません。その一字とは何か。「畏」の字がそれです。畏れるとは、身を守る心の法です。事ごとに心を細やかにして気ままにふるまわず、過ちのないようにと求め、常に天道を畏れて慎み従い、人欲を畏れて慎み忍ぶことにあります。この畏れることが、慎みに向かうはじめです。畏れれば慎みが生じます。畏れなければ慎みはありません。それゆえ朱子は晩年に敬の字を説いて、敬は畏の字がこれに近い、と言いました。

解説

益軒は養生の要を畏の一字にまとめます。畏れとは臆病ではなく、事を大切に扱い、慢心しない心構えです。朱子が敬を畏に近いと説いたことを引き、養生を朱子学の居敬の修養と結びつけています。健康だけでなく、孝行、忠勤、家の維持にまで通じる万能の心法だというのです。仕事でも慣れた頃に事故が起きるように、畏れを失ったときに人はつまずきます。体調にも仕事にも、小さく慎重に向き合う姿勢が長く続けるこつです。

この章句が説くこと

畏敬慎み朱子養生心法

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