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初学訓 / 巻之五

一養生の道も、亦よく謹みて、慾を堪ふるにあり。養生の要は、飮食色慾をこらへて過さず、心を和け氣を平らかにし、かなしみ、いかり、うれへ、思ひを過さず、又風寒暑濕の外邪を防ぐべし。飮食色慾は內慾なり。風寒暑濕は外邪なり。つよき人も、內慾を過し、外邪に傷らるれば、病に冒されて、長生を得がたし。又、生れつきよわけれど、よく保養すれば、天年をたもちて長壽なり。わかき時より、早く養生をつとむべし。わかく血氣さかんなれば、飮食色慾恣なり。いましむべし。飮食色慾を恣にすれば、元氣つきて短命なり。中年以後は、色慾より、飮食の慾尤こらへ難し。内慾にやぶられて元氣減れば、外邪も侵しやすく、病起りやすし。人の天年を保たずして、早く死ぬるは、多くは、飮食色慾の二に傷らるればなり。

新字:一養生の道も、亦よく謹みて、慾を堪ふるにあり。養生の要は、飲食色慾をこらへて過さず、心を和け気を平らかにし、かなしみ、いかり、うれへ、思ひを過さず、又風寒暑湿の外邪を防ぐべし。飲食色慾は内慾なり。風寒暑湿は外邪なり。つよき人も、内慾を過し、外邪に傷らるれば、病に冒されて、長生を得がたし。又、生れつきよわけれど、よく保養すれば、天年をたもちて長寿なり。わかき時より、早く養生をつとむべし。わかく血気さかんなれば、飲食色慾恣なり。いましむべし。飲食色慾を恣にすれば、元気つきて短命なり。中年以後は、色慾より、飲食の慾尤こらへ難し。内慾にやぶられて元気減れば、外邪も侵しやすく、病起りやすし。人の天年を保たずして、早く死ぬるは、多くは、飲食色慾の二に傷らるればなり。

書き下し

一養生の道も、亦よく謹みて、慾を堪ふるにあり。養生の要は、飲食色慾をこらへて過さず、心を和け気を平らかにし、かなしみ、いかり、うれへ、思ひを過さず、又風寒暑湿の外邪を防ぐべし。飲食色慾は内慾なり。風寒暑湿は外邪なり。つよき人も、内慾を過し、外邪に傷らるれば、病に冒されて、長生を得がたし。又、生れつきよわけれど、よく保養すれば、天年をたもちて長寿なり。わかき時より、早く養生をつとむべし。わかく血気さかんなれば、飲食色慾恣なり。いましむべし。飲食色慾を恣にすれば、元気つきて短命なり。中年以後は、色慾より、飲食の慾尤こらへ難し。内慾にやぶられて元気減れば、外邪も侵しやすく、病起りやすし。人の天年を保たずして、早く死ぬるは、多くは、飲食色慾の二に傷らるればなり。

現代語訳

養生の道もまた、よく慎んで欲をこらえることにあります。養生の要は、飲食や色欲をこらえて過ごさず、心を和らげ気を平らかにし、悲しみ・怒り・憂い・思いを過ごさず、また風・寒さ・暑さ・湿気の外邪を防ぐことです。飲食と色欲は内の欲です。風寒暑湿は外の邪です。強い人でも、内の欲を過ごし外邪に損なわれれば、病に冒されて長生きは難しい。また生まれつき弱くても、よく保養すれば天寿を保って長生きします。若いときから早く養生に努めるべきです。若く血気盛んなときは、飲食や色欲がほしいままになります。戒めるべきです。飲食や色欲をほしいままにすれば、元気が尽きて短命になります。中年以後は、色欲より飲食の欲のほうが最もこらえにくい。内の欲に破られて元気が減れば、外邪も侵しやすく、病が起こりやすい。人が天寿を保たずに早く死ぬのは、多くは飲食と色欲の二つに損なわれるからです。

解説

のちの『養生訓』の骨組みがそのまま示された条です。内なる欲と外からの邪気という二つの病因を立て、欲をこらえ邪気を防ぐことを養生の要とします。生まれつき弱い人でも保養すれば長生きでき、強い人でも不摂生すれば短命になるという指摘は、生まれつきより日々の心がけを重んじる益軒の考えを表しています。中年以降は食欲が最もこらえにくいという観察も鋭いものです。生活習慣病が問題となる今、そのまま健康指導の言葉として通用します。

この章句が説くこと

養生内欲外邪飲食健康

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